2014年7月16日

古鷹青葉を見守る衣笠さんbot #27

更新二十七回目のまとめです。 訓練に明け暮れる第六戦隊。そしてそれに接する艦たちの思い。
3
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「ううん……ん……?」 気が付いた時、私は青葉との二人部屋でベッドに上半身だけ突っ込んで眠っていた自分を見出した。朝日が目に痛い。全身の筋肉が悲鳴を上げている。見れば艤装もつけっぱなしだ。痛む頭をどうにか巡らせて部屋を見ると、床では同じく艤装をつけたままの青葉が寝落ちしていた。

2014-07-15 22:48:27
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

昨晩の夜戦訓練の後、二人して身体を引きずるように部屋に戻った途端に力尽きて眠っていたらしい。ミシミシという音が聞こえそうな身体に鞭打って自分の身をベッドから引きはがす。 「青葉……起きなさいよぉ……」 力なく青葉に声をかけるものの、青葉は相変わらず規則正しい寝息を立てるばかりだ。

2014-07-15 22:53:44
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

神通さんたちによる訓練は当然今日もある。遅刻でもしようものなら想像するだに恐ろしい目に遭うことは分かり切っているので、私は意を決して青葉を揺り起こそうと歩み寄った。青葉の顔を覗き込む。と、そこで私は何だか珍しいものを見たような心地がした。青葉の寝顔の眉間に、しわがない。

2014-07-15 22:59:24
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

青葉は、なんだか子供のような安らかな寝顔で眠っていた。私は青葉のすぐ横に膝を突き、それをしげしげと覗き込む。青葉のこんな顔、どれだけ見ていなかっただろう。艦娘になって以来、青葉は私には滅多に寝ているところを見せなかったし、見せてもそれはいつも眉間にしわを寄せた難しい顔だった。

2014-07-15 23:05:34
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

たぶん、今のひたすら訓練に没頭する日々が青葉にとってかえって良かったのだろうと思う。基礎的な体力作りから航行時の姿勢制御や体重移動のやり方、砲撃時・雷撃時のポジション取り、弾薬の装填に敵艦までの測距の要領、風の読み方に海流の読み方。訓練で改めて叩き込まれていることは膨大にある。

2014-07-15 23:11:02
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

目の回るような忙しさと鉛のような身体の疲労でとても大変だけれど、おかげで青葉にもうじうじと悩んでいる時間なんてない。私は青葉の眉間に人差し指を当て、軽くぐりぐりと押した。 「んん……」 青葉がちょっと顔をしかめる。けれどその表情は以前とは比べものにならないほど穏やかだった。

2014-07-15 23:16:27
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

さて、いつまでも青葉の寝顔を眺めているわけにもいかない。私は青葉の肩を揺さぶり、青葉が目を開けたのを確認して先にシャワーを浴びた。足早に食堂に向かい、食欲はないけれど無理矢理朝食をかきこむ。今鎮守府は私たちの練度向上に全力を振り向けている。私たちが動けなくなるわけにはいかない。

2014-07-15 23:22:11
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「青葉、歩きながら寝ないでよ?」 「寝ませんよ……衣笠こそ、訓練中に居眠りして神通さんにどやされないでくださいね」 鎮守府正面の海に出るため、青葉と共に鎮守府の廊下を歩く。正直なところ、こうして話しながら歩いていないと二人とも眠ってしまいそうなのだ。 パァン! 「痛あっ!?」

2014-07-15 23:27:32
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

突然私の背後で青葉が素っ頓狂な声を上げた。何事かと青葉の方を振り向くと、青葉の背中に平手打ちを食らわせた艦娘がいた。天龍だ。夕張ねーさんと鬼怒もいる。 「なにするんですかぁ!全身筋肉痛で辛いんですからやめてくださいよ!」 「いや、お前らが神通の下で訓練頑張ってるって聞いてさ!」

2014-07-15 23:33:10
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

青葉は、心底嬉しそうにはしゃぎながらそう言う天龍を睨みつけるが、残念ながら天龍に通じた様子はなかった。 「ね、パナイよね!だってあの神通さんの訓練だもん!」 「だよなー!」 天龍と鬼怒が顔を見合わせて楽しそうにしているけれど、こちらとしては何が楽しいものか。

2014-07-15 23:39:47
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「装備、調子悪いところない!?何かあったら言ってね、すぐ直すから!」 夕張ねーさんがこれまたテンション高めに私に声をかけてくる。私たちを気遣って言ってくれているのだと思うけれど、その目がキラキラ輝いているのは兵装実験マニアとしての血が騒いでいるからではないかと勘繰りたくなる。

2014-07-15 23:45:24
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「もおお~、何なんですか、皆さん揃って!訓練に遅刻しちゃいます!」 青葉が三人に向かって声を張り上げると、天龍がへらっと笑って言った。 「いやさあ、嬉しいじゃねえかよ。あの青葉がこんな元気になってよ!」 へ、と青葉が口を開ける。見れば、鬼怒と夕張ねーさんもうんうんと頷いている。

2014-07-15 23:50:49
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

確かに最近の青葉は訓練に明け暮れる日々で悩む暇がなくなった分、暗い表情をしなくなったし練度も向上している。私にはそれほど劇的に変わったとは感じられないけれど、離れたところから見た印象は違うのかもしれない。 バシッ! 「痛いですってば!」 再び天龍に背中を叩かれ青葉が悲鳴を上げる。

2014-07-15 23:56:20
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

けれど、天龍は青葉の抗議を意にも介さずにっと笑った。そして歩き去りながら言う。 「応援してっからよ、頑張れよ!」 「ファイトだよ!青葉!」 言いたいことを言うだけ言って立ち去る天龍と鬼怒の背中を、青葉が呆然と眺めている。その青葉の頭を、夕張ねーさんの手がポンポンと撫でる。

2014-07-16 00:03:54
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

夕張ねーさんもそのまま歩き去り、後には青葉と私だけが残された。 「なんなんですか一体……」 困惑しきりでひとりごちる青葉に、私はくっくっと笑いながら声をかけた。 「愛されてるわねえ、青葉?」 振り向いた青葉の顔が、かすかに嬉しそうだったのを私は見逃さなかった。

2014-07-16 00:09:20
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

訓練海域に到着すると、今まさに吹雪型の三人が川内に魚雷発射時の姿勢について指導されているところだった。私たちと共にサブ島沖海域に出撃するのは吹雪と叢雲だけれど、不測の事態に備えて初雪も一緒に訓練を受けている。もっとも、本人はこの上なく嫌々ながらだったけれど。

2014-07-16 00:14:55
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

その奥の海域に目をやると、加古が神通さんに砲撃の照準を指導されていた。意外なことに、川内型による訓練を受けている私たちの中で一番熱心なのが加古だった。朝は誰よりも早く起きて訓練に参加し、疑問はどんな細かいことも質問し、夜戦訓練では誰よりも好成績を叩き出している。

2014-07-16 00:21:35
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

今古鷹ねーさんは遠征に出ていて鎮守府にいない。古鷹ねーさんと私たちの練度の差を詰めるのが目的の訓練だということもあるけれど、最大の理由は古鷹ねーさんがいると古鷹ねーさんばかりが身体を張ってしまって私たちの訓練にならないからだ。なのに毎朝ちゃんと起きてくる加古が不思議で仕方ない。

2014-07-16 00:27:26
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

一度加古にそのことを問いただしてみたことがある。けれど、加古は「妹のため、かな」などと訳の分からない答えしか返さなかった。妹は加古の方でしょうが。 「いいよー!」 加古の態度について考え込んでいると、那珂の声が耳に飛び込んできた。吹雪たちの雷撃訓練のための標的を曳航している。

2014-07-16 00:33:40
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「んじゃ、行こうか。雷撃戦、開始!」 「はいっ!」 「……当たれ」 バシュ!バシュ!バシュ! 川内の号令と共に吹雪たちが魚雷を発射する。弾頭を外した酸素魚雷がかすかな雷跡を残して標的に殺到する。それを見ていると、私は異常に気付いた。そのうちの一本だけが那珂自身に向かっている!

2014-07-16 00:39:27
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

けれど、私は心の底からは危ないとは思っていなかった。本物の魚雷とは言え弾頭は外しているし、川内や神通さんと共に毎夜鎮守府の夜の守りを担当している那珂ならあの程度易々と避けられると思ったからだ。ところが、那珂の反応は鈍かった。まずい、と思う間もなく魚雷が命中する!

2014-07-16 00:45:03
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「きゃー!」 舵機に魚雷を受けた那珂が、衝撃でバランスを崩して転倒し頭から海水をかぶる。大丈夫だろうかと慌てて海面を走って助けに行こうとすると、「こんなになっても、那珂ちゃんは絶対、路線変更しないんだからー」と思わず気の抜けるような声が聞こえた。心配して損した。

2014-07-16 00:50:56
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「えへへっ、那珂ちゃんやっちゃった!」 その場の全員が集まって助け起こすと、那珂は海水でずぶ濡れのまま自分の拳で頭をこつんとやる仕草をしながら元気に言い放った。見る限りケガらしいケガもしていないので一安心だけれど、ふとその顔色が気になった。見るからに、疲労の色が濃い。

2014-07-16 00:57:08
残りを読む(12)

コメント

コメントがまだありません。感想を最初に伝えてみませんか?