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午後10時26分からの2分間

竹村京さん(@kyou_takemura)の書いてくださった、落ちぬいまとめ8内に記載のあった人類vs深海棲艦のお話のようです。 お楽しみ下さい。
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竹村京 @kyou_takemura

「ESSM発射急げ!」 「ESSM発射!」 「ESSM発射!」 ほとんど即座に近接防御用の対空ミサイルが発射される。 しかしESSMがHSのもとに到達する前に敵艦載機を示す無数の光点がそれを囲む。 『くそっ! 蠅がたかってきやが……』

2014-07-17 18:33:58
竹村京 @kyou_takemura

唐突に通信が切れ、2機のSH-60Kの光点が消えた。その三秒後にESSMは数機の敵艦載機の撃墜に成功。 「HS、2機とも撃墜されました…!」 「わかっとる! 悼む前に撃てバカモン!」 既に「こんごう」のSPY-1Dは自力で敵艦隊を捕捉し、「あきづき」とも共有している。

2014-07-17 18:37:23
竹村京 @kyou_takemura

しかしヲ級の艦載機からの防御のためイルミネーターをESSMの誘導に振り向けざるを得ず、戦艦ル級に対するスタンダードミサイルの攻撃が手薄になっていることに夏目艦長は危機感を抱いていた。

2014-07-17 18:42:01
竹村京 @kyou_takemura

ミサイルの炸薬量は全体のサイズからすればかなり少なく、実のところ破壊力はさほど大きくはない。しかし既に10発近く命中しているはず、これだけ当てればさしものル級といえど撃沈は近いはず…… 「戦艦ル級、当方へ高速接近しつつあり!」 「なに!?」

2014-07-17 18:43:52
竹村京 @kyou_takemura

スタンダードミサイルのシンボルの雨を物ともせず、ル級の光点2つがそれぞれ「こんごう」と「あきづき」に向けて進んでいる。 なんだこれは。威力と戦艦ル級の装甲を考えればとっくに行動不能に陥っているだけの数が命中しているはずだ。

2014-07-17 18:47:44
竹村京 @kyou_takemura

「スタンダード射撃やめ! 魚雷発射、主砲用意! 回避行動!」 「魚雷発射! とーりかーじ!」 「魚雷発射!」 「とーりかーじ!」

2014-07-17 18:51:29
竹村京 @kyou_takemura

ぽん、ぽん、ぽん、と続け様に発射された短魚雷6発は「こんごう」に迫る戦艦ル級に吸い込まれていく。「あきづき」も僅かに遅れて魚雷を発射した。 しかし、だ。 戦艦ル級はわずかに蛇行して2本を外しただけで、残る4本をそのまま受けて、その水柱を突き破って突き進んでいる。

2014-07-17 18:53:59
竹村京 @kyou_takemura

なんだ、なんなんだこれは。 あまりにも今まで戦った戦艦ル級と違いすぎる。ル級とてこんなに堅いはずはない。ないはずなのだ! 物量で勝る空母ヲ級の艦載機は既にESSMを潜り抜けて「こんごう」「あきづき」に接近している。艦の前後に装備された高性能20mm機関砲が忙しなく火を噴いていた。

2014-07-17 18:57:20
竹村京 @kyou_takemura

このままでは押し負ける。 「主砲、撃て!」 「うちーかたはじめ!」 「うちーかたはじめ!」

2014-07-17 19:00:12
竹村京 @kyou_takemura

127mm単装速射砲が盛大に火を噴く。どん、どん、どん。一分間に45発という発射速度と命中精度は現代の戦闘艦が深海棲艦を上回る数少ない長所だ。しかし、所詮は大戦期の砲に比べれば豆鉄砲でしかない。命中はするが、装甲に弾かれて被害を与えるには至らない。

2014-07-17 19:02:27
竹村京 @kyou_takemura

備砲の射程を考えればこれほど接近する必要はない。護衛艦の砲の射程外から砲撃すれば雷撃も砲撃も受けずに一方的に攻撃できたはずだ。 戦艦ル級が砲を持ち上げる。

2014-07-17 19:05:01
竹村京 @kyou_takemura

この時、艦橋で双眼鏡を覗いていた科員だけが見た。 黄色い靄を纏った戦艦ル級が、にや、と笑ったのを。 閃光。 数時間にも思える一瞬の後、轟音と巨大な衝撃が「こんごう」を揺さぶった。

2014-07-17 19:08:27
竹村京 @kyou_takemura

「ダメージコントロール! 損害知らせ!」 「機関室被害甚大、死者多数! スクリューシャフトが吹っ飛びました!」 「後部に砲弾貫通、浸水! 大穴があいて隔壁が役に立ちません!」 「後部VLS被弾、使用不能!」 聞いている間にも艦が後ろに傾斜しているのがわかった。

2014-07-17 19:10:43
竹村京 @kyou_takemura

「総員退艦! 全員逃げろ!」 退艦命令に迷いはなかった。もうこの艦は戦えない。なら、相棒である艦を棺桶にしてしまう前に一人でも脱出するべきだ。

2014-07-17 19:12:55
竹村京 @kyou_takemura

嫌らしいことに戦艦ル級をはじめ、深海棲艦たちは沈みゆく艦にそれ以上の攻撃を加えようとはしなかった。もっと確実な方法を執ったのだ。 即ち、脱出した乗員がすがりつく救命筏を攻撃したのだ。

2014-07-17 19:16:17
竹村京 @kyou_takemura

「こんごう」が沈み、「あきづき」も沈んだ。 乗員はあるいは脱出し、あるいは船とともに沈んでいった。 脱出できた者も深海棲艦に掃討されて殺された。 夏目艦隊532名のうち、生き残ったのは僅か9名。 会敵から「こんごう」「あきづき」の沈没まで、わずか2分間の悲劇だった。

2014-07-17 19:19:01
竹村京 @kyou_takemura

最後までCICに残っていた夏目司令が生き残ったのは皮肉と言うしかない。他の者たちは眼を失い、手足を失って、掃討された死体と間違われたおかげで生き残れたのだろう。

2014-07-17 19:20:57
竹村京 @kyou_takemura

夜が明けてから出動したUS-2に救助された9名は平均して5か月ほどの療養を必要としたが、全員が海軍に復帰した。彼らは深海棲艦と戦って生還したという稀有な経験を買われ、様々な方面の指揮を任されるようになった。

2014-07-17 19:23:17
竹村京 @kyou_takemura

「艦娘」という存在が現れると眼を失った男がその指揮官に。深海棲艦に対抗できる潜水艦ができると腕を失った男がその艦長に。海軍兵学校や術科学校の教官、技術研究本部の開発者になった者もいる。

2014-07-17 19:23:37
竹村京 @kyou_takemura

夏目司令はと言えばその後数年間を第1護衛隊群司令官として過ごしたが、負傷から来る体力の低下が著しく、地位に比べて早めの退官を迎えることになった。

2014-07-17 19:26:42
竹村京 @kyou_takemura

艦娘の指揮官となって数年、着実に戦果を上げ続ける片目の男のもとに一人の艦娘が着任した。 名は不知火。70年近く前に戦没した駆逐艦の魂を宿した少女だった。 彼女は煙草の匂いが染みついた司令官室に僅かに眉根をひそめる。

2014-07-17 19:29:13
竹村京 @kyou_takemura

「不知火です。ご指導、ご鞭撻、よろしくです」

2014-07-17 19:31:17
竹村京 @kyou_takemura

終わったっ!艦娘のほのぼのとかエロエロとか駆け引きとかは筆力不足で書けないけど、殺し合いくらいならなんとか書けるかも……と思って書き始めたらなんだこれ

2014-07-17 19:37:11
竹村京 @kyou_takemura

つっても圧倒的筆力不足は否めないわけでして。しかしながらそんな俺にまた書かせてくれたyamotoさんと #不知火に落ち度はない に圧倒的感謝

2014-07-17 19:39:12