筍提督と僻地の泊地 (6) 2014夏

海軍大将でありイージス艦である提督兼艦雄・筍の、平成のミッドウェーに挑む、ちょっとだけ日常を飛び出した日記。
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※こちらは「筍提督と僻地の泊地」の(1)から(5)の続編です。そちらを先に読むことをオススメします。


増強

筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

私は艤装を背負って、弾薬もミサイルも満載で艦隊行動を取っていました。旗艦の鳳翔さんを中心とした輪形陣で、私も輪の中にいました。僚艦はみな新時代艦。DDもDDHもSSも揃っています。 また、あの夢です。もう三度目になるでしょうか。 #僻地の泊地日記

2014-08-19 20:51:15
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揃っていると言っても、陣形の位置の関係で、私から見える僚艦は二人。<ふぶき>と<あやなみ>です。水平線を睨むオート・メラーラ127mm砲、後部甲板から発つ海鷹、マストに犇めくレーダー。修理したてなのか、<あやなみ>のFCS-3は新品同様の輝きを放っていました。 #僻地の泊地日記

2014-08-19 20:54:15
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

某フラタ提督がリンガを崩壊せしめて帰った日の夜に見た夢と、何ら変わりありません。遠巻きながらも目が合った僚艦は、手を振って笑ったり、「おーい」と呼びかけたりしてくれました。私も笑いながら、マイクを通して偉そうに『集中しろよ』などと吹き込みました。 #僻地の泊地日記

2014-08-19 20:55:54
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

空が光ったのはその時でした。太陽のある方角とは違いましたから、ちょっとモニターの眼鏡を上げて確かめてみました。 飛んでくるのは、光ではありません。あの烏賊を模した飛翔体です。それは真っ直ぐ、陣形の外側の僚艦――<あやなみ>に当たって大爆発を起こしました。 #僻地の泊地日記

2014-08-19 20:58:39
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

エマージェンシー・コールがけたたましく脳裏を叩き、観測妖精さんたちが右往左往し始めます。全艦へ状況確認を急がせている間に飛翔体の直撃を受けた僚艦は沈み始め、背後からの轟音と鳳翔の叫び声に反応して振り返ると、最後尾の艦も炎上していました。 #僻地の泊地日記

2014-08-19 21:03:50
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不思議なことに、今回はここで目が覚めました。 どう考えても不愉快な夢。最後まで見る義務なんてものはありませんが、途中で覚めたとなると、何処となく気持ちが悪い。 私が起き上がった音に、傍らの鳳翔の睡眠も途切れてしまったようです。彼女は私の全身の汗を気にしました。 #僻地の泊地日記

2014-08-19 21:08:18
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私は、昨日、二式飛行艇で帰ってきた後のことを思い出しました。そして、咄嗟に脳を叩き起こすと、肩で呼吸しながら言いました。 『那智を呼んでくれ』 「どちらの那智でしょう?」 『後から来た方だ』 「何をお話になるのです?」 『昨日のアレだ』 #僻地の泊地日記

2014-08-19 21:11:12
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「……提督。まさか」 『二人目のイージスが必要かもしれん』 誰にどれだけ笑われても構いません。シチュエーションこそ変わっていますが、あの夢を三度も見た者として、決断しました。 予知夢だとは思っていませんが、夢が現実となる前に、私はこの新時代艦隊を増強します。 #僻地の泊地日記

2014-08-19 21:13:50
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

朝食が待つ食堂には目もくれず、工廠へ直行しました。待っていたわけでもない<ゆうばり>を捕まえて『頼みがある』と囁きました。 『イージスを一人増やしたい』 私はてっきり却下されるものと思っていましたが、答えは意外にも笑顔で返ってきました。 「やっとですか!」 #僻地の泊地日記

2014-08-19 22:35:39
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『え?』 「提督がいつそう仰るかを考えていたんですよ。ヘリ空母やDD、DDHと造ってきて、次こそイージスかと何度考えたか分かりません」 『……お前、まさか、期待してた?』 「<ゆら>もですよ。でも、そうか、次がMIだからですね?」 『それも知ってるのか……』 #僻地の泊地日記

2014-08-19 22:39:32
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何はともあれイージス艦追加はあっさり通りました。工廠技官の血が騒いだ、というのが実際のところでしたが。 「それで、対象は誰です?」 『那智だ。最近来た方の』 「なるほどぉ。排水量も近いですしね」 『それもあるな。で、いつになる?』 「急ぎますか?」 #僻地の泊地日記

2014-08-19 22:43:21
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私は、色提督に寄港の申請をし、認可されたことを伝えました。それに、MI発動まであまり時間がないことも。 『できれば明日か明後日にはここを発ちたい』 「そうですか……では、今日中にやりましょう」 『なにっ、できるのか?』 私は思わず喰い気味に訊ねました。 #僻地の泊地日記

2014-08-19 22:45:26
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

「提督のと全く同じのでいいんですよね」 『ああ、それでいい』 那智が欲しいと言ったのは私の能力ですから、そういうことです。 「でしたら簡単です。今が〇七四三だから……二一〇〇には上げます」 『そうか、ありがたい!』 まったく工廠にはいつもお世話になっています。 #僻地の泊地日記

2014-08-19 22:49:36
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執務室に戻ると、呼んだ那智がいました。味噌汁の香りが仄かにします。 「話は聞いた。イージスがもう一人必要だと?」 『MIでは何が起こるか分からん。考えたら俺も心配になってきた』 私の心境は適当に暈して、本題を突き付けます。 『那智。貴艦を改造する』 #僻地の泊地日記

2014-08-19 22:53:04
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「最初からそう言えばいいのだ」 それまでの口調で笑った那智は、瞬時に背筋を伸ばしました。 「謹んで受けよう」 私は彼女と視線を絡ませながら、この扱いづらかったはずの那智二号が自分の後継とは、と思考を巡らせていました。 彼女がどれだけ能力を活かせるかは未知数です。 #僻地の泊地日記

2014-08-19 23:06:28

選考

筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

私はその後、鳳翔と共に、単冠湾もといMI作戦に連れていく艦娘を選考せねばなりませんでした。 まずは「機動打撃群」と「護衛群」の二艦隊を設けることが決まりました。前者は航空戦隊と打撃中隊と護衛戦隊の集まりで、後者はそれらを更に支援・護衛する隊となります。 #僻地の泊地日記

2014-08-19 23:18:41
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

「航空戦隊にはやはり正規空母ですね?」 鳳翔の問いに私は肯きます。 『一人ずつ、全員だ』 「……え?」 『え?』 「翔鶴と瑞鶴もですか?」 『航空戦力は充実させたい』 「そうですか……」 #僻地の泊地日記

2014-08-19 23:22:31
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

『どうかした?』 「……いえ、何でもありません」 鳳翔が俯くので、小声で『一航戦と二航戦か?』と言うと、すぐに顔を上げました。 「あの……」 『言わなくていい。分かってるよ、彼女らにとっても大事な海戦だってことは』 #僻地の泊地日記

2014-08-19 23:25:54
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

『MIのことは伝えたんだな?』 「はい」 小さな返事に、私は手元のペン先を見つめていた顔を上げました。 『これがゲームか小説なら、彼女らに思い切り活躍させてあげたい。しかし、今は戦時なんだ。なるべく誰も傷つけたくない』 「……分かりました」 #僻地の泊地日記

2014-08-19 23:28:25
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

航空戦隊は、正規空母の六人。続いては打撃中隊。 『水雷戦は護衛戦隊に任せればいいから……戦艦二、重巡四といったところか』 私は真っ先に、金剛、榛名、那智隊長、足柄の名を上げました。 「異論はありません。後の二人は如何いたしますか?」 #僻地の泊地日記

2014-08-19 23:31:18
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

『練度と偵察機の運用を考えると、最上と三隈かな』 ここでまた鳳翔が固まりました。 『……そうだな、三隈はな』 「いいのですか? これはゲームでも小説でもないのですよね?」 『ああ。ただ前線に出してやりたいだけさ』 事実、鈴谷型に比べ、彼女らは出撃が少ないのです。 #僻地の泊地日記

2014-08-19 23:34:59
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

護衛戦隊は簡単です。神通と川内、夕立に時雨、そしてDDの二人を組んであげれば問題ありません。イージスはいなくていいのかと思うかもしれませんが、MIということで、さすがに艦戦による直掩隊を運用しますから、今までほどはミサイルの出番は多くないと思われます。 #僻地の泊地日記

2014-08-19 23:39:01
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