新聞とネットを巡る連続ツイート

「新聞vsネット」という構図を描く人が少なくないが、本来この2つは対立項ではない。新聞社にとって、紙もネット(ウェブ)も文字コンテンツを掲載する媒体。新聞のネット戦略を僕の理解の範囲でつぶやく。
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不惑記者 @o40kisha

「速報はネット、新聞は分析・解説に特化し、相互補完を」という言説に、僕は首をかしげる。速報は「本記」。分析・解説は「受け」の部分。新聞の有料購入読者に「まず、ネットの本記(ニュースの筋)を読んでから、新聞をお読み下さい」はあり得るのか? 僕はそんな商売は成り立たないと思う。

2010-11-08 08:40:40
不惑記者 @o40kisha

(承前)速報と本記は違う、という人もいるだろうが、僕は結局同じだと思う。事実部分があってこその「受け」。事件が動いていれば、各版に向けて刻々と新しい情報を更新していく。それによって「受け」の内容も変わる。そうでなければピント外れの分析・解説となろう。

2010-11-08 08:42:46
不惑記者 @o40kisha

(承前)ファストメディア(速い媒体)としての新聞の位置は低下している。でもそれはネットの普及がきっかけではない。ラジオが誕生しニュースを伝え始めた段階で始まっている。1945年8月15日に、日本国民が「終戦」を知ったのはラジオの「玉音放送」によってだ。

2010-11-08 08:50:11
不惑記者 @o40kisha

(承前)しかし、人々がそのニュースに初めて触れるファーストメディア(最初の媒体)としての新聞は、ラジオやテレビの出現では大きく揺らがなかった。掲載(or放送)できる情報量に大きな差があったからだ。ネットにより揺らいでいるのは、こちらの役割だろう。

2010-11-08 08:53:37
不惑記者 @o40kisha

(中休み)ちなみに、ファストメディアもファーストメディアも僕の造語です。でも、著作権は主張しないので、どんどん使ってください(笑)

2010-11-08 08:55:16
不惑記者 @o40kisha

(閑話休題)ファーストメディアの地位が揺らいだ、と言っても新聞を1面から繰ってみて欲しい。どれだけのニュースを事前に知っていたか。1面や社会面にすら知らないニュースが載ってはいまいか。まだまだファーストメディアとしての新聞は捨てたものではない。

2010-11-08 09:08:07
不惑記者 @o40kisha

(承前)関心事は人によって違う。尖閣ビデオの件でさえ、新聞で初めて知った、という人も少なからずいるだろう。その人たちを「情弱(情報弱者)」としてレッテルを貼るのは各々の勝手だが、新聞業に携わるものが、そう言って、その人たちを切り捨てるのは、許される行動ではない。

2010-11-08 09:10:12
不惑記者 @o40kisha

(本記再開)さて、新聞はファーストメディアとしての地位が脅かされつつあるが、では誰に脅かされつつあるのか。ネット? その答えは半分正しく、半分間違っている。

2010-11-09 00:05:58
不惑記者 @o40kisha

(承前)新聞、テレビ、ネットを対立項としてとらえる人が少なくない。新聞vsテレビは対立項として成り立つ。その場合のテレビは報道機関としてであり、ニュース番組としてであろう。テレビvsネットも成立する。その場合のテレビはインフラもしくは映像表現媒体としての比較になる。

2010-11-09 00:11:00
不惑記者 @o40kisha

(本記)では、新聞vsネットはどんな属性で比べているのか? 文字表現の際の印刷媒体とデジタル媒体の違いとしてなら可能だろうが、もちろんその場合、新聞側には雑誌・本なども入る。ニュースメディアとしての比較だろうか? しかし、現状では新聞社に匹敵するネット報道機関はない。

2010-11-10 08:28:16
不惑記者 @o40kisha

(承前)新聞vsネットの対立軸は曖昧なのに、新聞vsテレビvsネットと、比較対象によって属性が変わるテレビを間に置くことでなんとなく成り立っているようにみえてしまう。そのため新聞vsネットも成立しているように思い、それを前提に議論が進んでいる場合が多い。

2010-11-10 08:32:41
不惑記者 @o40kisha

(承前)では、新聞はネットの何によりファーストメディアとしての地位が脅かされているかといえば、新聞社など既存メディアがネットに掲載している記事(ポータルサイトへの提供も含む)によってなのだ。それは他者による「侵略」ではなく、タコが自分の足を食べてしまう「自食行為」に近い。

2010-11-10 08:54:43
不惑記者 @o40kisha

(承前)現状で新聞社はネットへの情報提供を止めても、収益的には痛くも痒くもない。一斉に止めればたぶん、短期的には収益があがる。それでも止めないのは今後はデジタルメディアで収益が上げられるのではないか、と思っているから。「自食行為」は「自殺行為」にならない範囲で行われている。

2010-11-10 09:43:10
不惑記者 @o40kisha

(承前)新聞の情報力の根源は力強い取材体であること。それを維持するには多くの優秀な記者をかかえ、取材行為という金食い虫に投資する必要があり、当然莫大な経費もかかる。現在この取材体を支えているのは紙への印刷→宅配/販売という100年以上続くエコシステムだ。

2010-11-10 09:59:19
不惑記者 @o40kisha

(本記再開)力強い取材体による情報コンテンツ制作→紙への印刷→宅配/販売に代わる、ネットインフラを利用したエコシステムは現在存在しない。ネットから得られる収益は既存エコシステムからの収益の1%にも満たない。

2010-11-14 08:11:04
不惑記者 @o40kisha

(承前)これが、新聞社がネットに軸足を移さない最大の理由だ。移さないというより、移せないと言った方が正確かもしれない。新聞社という取材体が積極的にネットを忌避する理由は本来ないのだ。

2010-11-14 09:18:55
不惑記者 @o40kisha

(承前)ネット専業ニュースメディアの試みも大成功した例を聞かない。「市民記者」による無償、もしくはペイ・パー・アーティクル(記事量払い)によるCGM(コンシューマー・ジェネレイテッド・メディア)的な情報コンテンツ作成も、行き詰まった例がほとんどだ。

2010-11-14 09:22:35
不惑記者 @o40kisha

(承前)ただし、新エコシステムへの模索を断念したわけではない。逆にかつてないほどに熱心に行われている。日経電子版、デイリースポーツ電子版、産経新聞HD、朝日新聞/テレビ朝日の「EZニュースEX」etc。これらの新聞社内で現在議論されているのは有料/無料コンテンツの整合性だ。

2010-11-14 09:55:51
不惑記者 @o40kisha

(承前)一部ではもう無料コンテンツの縮小が始まっている。無料会員を募集は将来の有料化を見据えた動きとイコールと思って良い。今は新聞記事/ニュースコンテンツがネット上に溢れているが、現在がMAXの状態と思って間違いない。

2010-11-14 10:18:39
不惑記者 @o40kisha

(承前)現在、「空気のようにニュースは無料」と感じている人も少なくないだろうが、これが水道水のような存在になる。つまりどこで蛇口をひねっても出てくるが、誰かがその料金を払っている、という状態だ。

2010-11-14 10:22:35
不惑記者 @o40kisha

(承前)その誰かは自分である可能性が今後は高くなる。各社がiPhoneなどのスマートフォン、iPadのようなスマートパッド向けのコンテンツに大きな関心を示すのは、課金が容易で、一定のコピー制御も可能だからだ。

2010-11-14 10:37:03
不惑記者 @o40kisha

(本記再開)新聞社がなぜネット=デジタルの分野に興味を抱くのか。抱くだけでなく、実際に開発費を投入し続けるのか。それは長期的な部数減・広告減傾向に歯止めがかからないからだ。

2010-11-16 09:04:38
不惑記者 @o40kisha

(承前)ただそれは巷間言われているような紙媒体からネット媒体への移行ではない。紙媒体の減少をネット媒体の増加で補えないかという試みだ。紙を巡るエコシステムはまだ十分に機能しており、自ら放擲することはない。その意味がないからだ。逆に1日でも長く延命させようとしている。

2010-11-16 09:10:11
不惑記者 @o40kisha

(承前)「紙媒体の減少をネット媒体の増加で補えないか」という期待を「甘い」と断じる人も多いだろう。もちろん、紙部数の減少をそのまま補うことは夢物語だ。しかし、収入ベースで考えると、決して夢物語ではなくなってくる。

2010-11-16 09:23:53
不惑記者 @o40kisha

(承前)紙を巡るエコシステムは強固ではあるが、非常にコストがかかる。紙代、印刷代、印刷機器のメンテ・更新、発送代、販売にまつわる諸経費……細かい数字は出せないが支出のかなり部分を占める。これらを以下「レガシーコスト」と呼ぶことにする。

2010-11-16 09:29:12