2014年8月1日

電話

0
おなかペコペコ! @YMYK11110404ILY

電話をかけなければ。僕は、電話を探している。電話をかけなくてはいけないのだ。辺りは薄暗くて、歩くとコツーンコツーンと靴の音が響いた。コツーンコツーンコツーンコツーン。僕は電話を探している。

2014-08-01 03:06:03
おなかペコペコ! @YMYK11110404ILY

歩いているうちに僕は部屋を見つけた。部屋には電話があった。しかしひどく高い台の上にあって僕には届きそうにもなかった。椅子もあったけれどその上には人が座っていた。大きな人だ。

2014-08-01 03:30:35
おなかペコペコ! @YMYK11110404ILY

「ねえ貴方、そこの電話は使わないんですか?」僕がそう、声をかけると椅子に座っていた人はそれまで眠っていたかのように目を開いて2、3度瞬きしてから口を開いた。「電話?私は電話なんか使いやしないが……君は使うのか?」その人は顔をしかめて僕をじっと見た。

2014-08-01 04:00:36
おなかペコペコ! @YMYK11110404ILY

「そう、使いたいんです。それで、よければ僕を電話のとこまで持ち上げてくれるか、電話を僕の方まで降ろしてくれると助かるんですけど」僕がそういうとその人はどこか驚いたようなあきれたような風だった。「そうか、君はかけるべき場所を知ってるんだな、それならどうぞ好きに使うといい」

2014-08-01 04:34:32
おなかペコペコ! @YMYK11110404ILY

その人は僕を軽々抱き上げると電話の置いてある台の上に僕を乗せてくれた。電話は思っていたよりずっと大きくて受話器が僕の腕ほどあった。僕はそれを抱えて耳に当てるとダイヤルをまわした。

2014-09-15 20:07:10
おなかペコペコ! @YMYK11110404ILY

僕、僕はどこにいるのだろう、僕は。僕はどうしてこんなところに?ましろな壁、ましろな床、ましろな天井。ここはどこ?灯りは少ないのにあたりがうすらぼんやり光っているようで気味の悪いここは。僕は一番強い灯りを探してコツンコツンと歩き始めた。

2014-08-01 03:13:23
おなかペコペコ! @YMYK11110404ILY

どこかで音がしているような気がした。それは一番強い灯りの方から聞こえてきているようだった。それなら僕は、そっちに行かなくちゃあいけないだろうと思って、音のするほうに歩いていった。コツンコツンコツンコツン。

2014-09-15 20:08:19
おなかペコペコ! @YMYK11110404ILY

一番強い灯りは部屋の明かりだった。ましろな部屋には机と電話、椅子があって椅子には人が座っていた。ましろな人だ。音は電話から鳴っていた。電話が鳴っているのにその人は何も聞こえていないみたいにじっと座っていた。「あの、電話、出ないんですか」

2014-08-01 04:46:32
おなかペコペコ! @YMYK11110404ILY

「ええ、僕への電話ではありませんから」その人は当然のようにそういった。「そしたら、誰への電話なんですか?」僕がそう聞くとその人は少し考えるようなそぶりをした。「ここへは僕とあなたしかいませんから、僕へのでなければ、貴方へのでしょう」

2014-08-01 04:48:53
おなかペコペコ! @YMYK11110404ILY

当たり前のように、当たり前のように言うのだ。「でも僕、ここにきたの初めてで、それなら僕への電話は、ここには来ないと思うんです」電話が鳴っている。誰かのために。「誰かが貴方の事を思ってかけているんですよ、貴方宛でないはずがないでしょう」この人は、何でも知っているみたいに言う。

2014-08-01 04:54:10
おなかペコペコ! @YMYK11110404ILY

「そしたら、そしたら誰が、誰が僕にかけてきてるんです、電話を」電話が鳴っている、早く取らないと切れてしまうかもしれない。「出たらわかるでしょう、僕に聞く理由がありません」その人はじっと僕の目を見た、その人の目はすみれ色をしていた。僕は、僕は受話器を取って、そっと耳に当てた。

2014-09-15 20:09:33
おなかペコペコ! @YMYK11110404ILY

「もしもし、僕です」「はい、えっとどちら様でしょうか」「さあ、僕もわからない、でも電話をかけなきゃいけなかったんだ」「だけど、僕あてだって」「うん、君あてだ、きっとそうだ」「変なの、君も僕を知らないのでしょう?」「知らないよ、全然、でも僕は君にかけるために電話を探していたんだ」

2014-08-01 05:07:12
おなかペコペコ! @YMYK11110404ILY

「ねえ、君はいまどこにいるの?僕は今、迷子になっているようで自分の居場所がわからないから、僕が君の場所に行くのが一番いいと思うんだ。」「それなら君、受話器の中に入っていきなよ、つながってるんだからきっとここまでこれるよ」

2014-08-01 05:11:47
おなかペコペコ! @YMYK11110404ILY

「そうだね、電話を伝って君のところまで行くよ、それまで電話を切らないでね」「うん、待っている、待っているよ」僕は受話器を机の上において椅子に座っている人に言った。「そしたら、僕いってきます」「ええ、いってらっしゃい、貴方の運命が幸せで終わりますように」

2014-08-01 05:16:23
おなかペコペコ! @YMYK11110404ILY

受話器に手を置くとするりと飲み込まれてそのまま腕も肩も頭も胸も腹も足もすっかり飲み込まれてしまった。

2014-08-01 05:17:01

コメント

コメントがまだありません。感想を最初に伝えてみませんか?