【ニンジャスレイヤー二次創作】 デスロード・死国 #1
バイオセミがかしましくなく夏がすぎ、かさかさとおだやかな音をさせるおちばの季節も終わればやがて冷酷なふゆがくる。 ふゆがくれば人びとはとびらを固くしめ、あぶらをもしたりしてとじこもるだろう。だが、かたい地面をよるねむるベッドにえらんだものはどうするのだろう? 1
2014-06-14 07:49:18さむい季節には地面をねぐらにするものたちはよりあつまる。もてるだけのぼろ切れだの毛布だのをもちよってキャンプをつくるのだ。身をよせあえば少しはあっためる足しにはなるし、おしゃべりをすれば気がまぎれるというものだ。 2
2014-06-14 08:03:41けれど、そういう仲間にめぐまれる事はいつもではないし、ひとりきりで生きることに慣れるとせけんと付き合うことのあれやこれやがいやになるのだ。そうして他人とかかずりあうのは二度とごめんだ、と思うようになってひとりで夜を過ごすことをえらんだりもするのだ 3
2014-06-14 08:17:04そうやって冷たいコンクリートのうえにねそべって、まず最初にきみが気づくのは、じめんというものがえらく冷たいということだ。ぼろきれや新聞紙をしいたところじゃどうにもならない。がたがたふるえて、ねむれない夜になることだろう。 4
2014-06-18 01:45:41だからみんな思いおもいの酒瓶をかかえて、酔っぱらいになろうと、こころみてみるのだ。アルコールはからだをかっかさせるし、飲みつづければ気をうしなうことだってできる。そのまま、おてんとうさまがあんたの顔をてらしておこすまで、ねむることができるのだ。 5
2014-06-19 00:15:32うまくすれば、永遠におきなくて済むようになるかもしれない。かたくてつめたいじめんが、あんたのたましいの熱をさいごの1ケルビンまでうばいさってしまったら、きみはもう、あしたのこともきのうのことも心配しなくてすむのだ。 6
2014-06-19 00:23:48その日もおれはそんなふうにして、しにがみのおじひにあずかろうと、ケモビールを大瓶で3本のみほし、プラスチックのびんにいれられた酒屋でいちばんやすいサケをかった。ひどい味がしたが、アルコールにはちがいなかった。 7
2014-06-21 00:02:37びんから直にあおり、10口もいったところでやっと、重金属スモッグにおおわれたネオサイタマのよぞらがぐるぐるとまわりはじめた。そのままふらふらと歩き回り、どこだかしらない店のシャッターをかべにして、こんやのねぐらはここだときめた。 8
2014-06-21 12:41:40びんのサケをやっつけて、うとうとしだしたおれをゆさぶるやつがいた。うすくめをひらくと、まだ夜のまんまだった。 「おれをおこすんならカネかサケをくんなよ、そうでなきゃ、あんたのあごから歯をぜんぶたたき出してやるぞ」 9
2014-06-21 12:58:08「そいつはかんべんだからカネとサケをやるよ、インターラプター=サン」 それをきいておれはしゃんとした。いまのおれを、インターラプターと呼ばわるやつなぞかたての指のかずよりすくないくらいだ。 「なんでまたニンジャ装束をきているんだい、シーホース=サン?」 10
2014-06-21 13:02:08「うん、そいつをはなしてやりたいが、ここじゃあこごえちまう。車ではなそう」 たしかにシーホースのうしろにはぴかぴかにみがかれたヤクザリムジンがとまっていた。おれもソウカイヤにいたころはあんなのをのりまわしてたもんだ。 11
2014-06-21 13:47:43はて?ソウカイヤとデッガー、どっちを先にやってたか?おれのすかすかな脳みそはちょっとむかしのことも思いだせなくなっている。 12
2014-06-21 22:20:05ヤクザリムジンにのりこむと、さっそくオイランがしなだれかかり上等のワインがだされた。ああ、あのなつかしきわが人生の絶頂期にかんぱいというわけだ。 「どうだい、おれ、かわったろう」 「そうだな、カチグミにみえる、りっぱなザイバツニンジャにみえるぜ」 13
2014-06-24 00:14:09シーホースはじょうきげんにわらった。 「そうさ、おれはザイバツシャドーギルドのネオサイタマ駐留ニンジャなんだ」 シーホースはしんそこ、うれしそうだ。 「そいつはおめでとうだな、いったいどうやらそんなうまいことになるんだい?」 14
2014-06-25 00:03:12「そこんとこがわからんがね」シーホースの目にちらりと不安がみえた「おれがネオサイタマの、かねもめいよもない、アルコールとくすりとだけでできてるとこにくわしいってのがお気にめしたらしい」 15
2014-06-25 00:27:25いずれやつはなにかの企みにつかわれ、いま、得たものをすべてうしなうだろう。悪くすればいのちだってなくしちまうにちがいない。だからといってZBRをうち、酒をのみ、まいばん道路のうえできをうしなう生活をしたっていずれいのちをうしなうのに違いはない。 17
2014-06-25 22:26:28なめらかにはしるヤクザリムジンからのながめは良かった。ネオサイタマのよるはネオンや看板がすきかってないろでひかる。はしる車からはそれがたばになってながれていくようにみえるのだ。 18
2014-06-28 01:42:21光のたばからちょっと目をしたにむければ、マケグミサラリマンが重金属酸性雨にうたれ、うなだれてあるあていることだろう。いせい良く、あちこち動きまわっては、やたらにひとに話しかけるのはオイランショーかなにかの呼びこみで、げんきがいいのはそんなふうなのだけだ。 19
2014-06-28 14:05:51もっとめを凝らしゃあ、そこらになげだされてるゴミのいくつかは、ZBRかなにかでふらふらになったわかものだし、ぴくりとも動かなきゃあ、それはおれみたいないえも、かねもないのがいきつくさきの、肉体というものがほんとうにゴミになったぬけがらなのだ。 20
2014-06-28 14:12:18だからネオサイタマのカチグミはみな、リムジンかなにか、速くて揺れないのりものでよなかにだけどこかにいくのだ。サッキョラインの列車のあかりだの、カスミガセキの高層ビルのからのびるサーチライトでもみていれば、あしもとに広がるちょっとした悲劇のつめあわせをみなくてすむというものだ。21
2014-06-28 14:26:22だいいち、マケグミがどうなろうときにしてなどいられるものか。いちいちあしもとの雑草やアリをふまないよう、気をつけて散歩するものがあるかっていうんだ。かつてはおれもそうして何かをふみつけ、それを気にもせずにあるいていたのだ。 22
2014-06-28 14:47:56おれは踏みつけられるみぶんになったが、それを咎めるきぶんにはなれないのだ。かねがすてるほどあっても、どれだけサラリマンをこきつかっていても、ちょいとブッダがその気をなくせばあしたには、なくせるものは命だけということになるのだ。 23
2014-06-28 14:53:10けっきょく、リムジンはカネモチ・ディストリクトのなんとかという店まではしってとまった。カンバンがでていて、それを見たようなきがしたが、リムジンのなかでワインを一本あけたおれは、なんと書いてあったすっかりわすれてしまっていた。 25
2014-06-30 23:59:00