茂木健一郎(@kenichiromogi)さんの連続ツイート第1300回「一神教と宗教的寛容」

脳科学者・茂木健一郎さんの8月9日の連続ツイート。 本日は、最近のニュースに思うこと。
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茂木健一郎 @kenichiromogi

連続ツイート1300回をお届けします。文章は、その場で即興で書いています。本日は、最近のニュースに思うこと。

2014-08-09 07:45:45
茂木健一郎 @kenichiromogi

アイザック・ニュートンは、りんごが落ちるのを見て万有引力の法則を発見した(と伝えられる)。この際に起こった「革命」は、空に浮かぶ月と、地上のりんごが、同一の自然法則の下にある(はずだ)という認識に基づいていた。別の世界に見えるが、実は統一された自然法則の一部であると。

2014-08-09 07:47:00
茂木健一郎 @kenichiromogi

このような自然観を準備したのは、「理神論」である。神は宇宙を創造したかもしれないが、そのあとは介入しない。介入するとしても、自然法則として。自然法則が宇宙のすべてを統べているという科学的世界観は、一神論的な世界観と相性が良い。人格神が理神論に進化すればいいのである。

2014-08-09 07:48:30
茂木健一郎 @kenichiromogi

日本の八百万の神の豊穣の下では、理神論的な世界観は発達しない。それはそれでいいのかなと思う。一神論から理神論への進展は一つの達成だが、その副産物もたくさんあるように思う。一番の劇症は、異なる意見を持つ者への不寛容であろう。

2014-08-09 07:50:13
茂木健一郎 @kenichiromogi

イラクとシリアにまたがって出現したISIS(イスラム国)が、彼らが「異教徒」と見なす人たちに対して、改宗するかさもなくは死を、という迫害を行っていると伝えられる。それに対して、アメリカは、限定的な爆撃をすると発表、すでに実行した。石油の利権も絡んでいるのだろう。

2014-08-09 07:52:07
茂木健一郎 @kenichiromogi

このような宗教的非寛容に対して、英国のリチャード・ドーキンスなどは、Brights Movementに参加し、無神論を唱える。欧米の知識人を中心に勢いを増す無神論だが、その宗教に対する攻撃の姿勢は、「ミーム」的に言えば、一神論、理神論の一つの変異であるようにも思われる。

2014-08-09 07:53:47
茂木健一郎 @kenichiromogi

しばしば言われるように、日本人は元旦には神社に初詣をし、結婚式はキリスト教の教会で「誓います」とやり、お葬式は仏式でやる、というように、厳格な宗教的立場から言えばむちゃくちゃ、無節操である。しかし、それにはその良さがあるのだと、ISISのようなニュースに接すると思う。

2014-08-09 07:55:28
茂木健一郎 @kenichiromogi

宗教の狭量も、その裏返しとしての「無神論」の運動も、世界を一つの原理で統一的に理解しようという衝動の顕れであることには変わりがない。だからこそ科学は発達したのだが、その一方で、不寛容という副作用もあるのだとすれば、必ずしも唯一絶対のミームだということにはならないだろう。

2014-08-09 07:56:33
茂木健一郎 @kenichiromogi

日本に科学的思考法や、プリンシプルに基づいて諸事を考える態度が浸透しないのは事実だが、だからこそ八百万の表象の豊かさがある。だとすればどっちがどっちとも言いにくい。世界に対する異なる態度の良い点、悪い点を冷静に比較し、共存できるのが真のグローバリズムかもしれぬ。

2014-08-09 07:58:41
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、連続ツイート1300回「一神教と宗教的寛容」をテーマに、8つのツイートをお届けしました。

2014-08-09 07:59:24