バック・イン・ブラック #3

日本語版公式ファンサイト「ネオサイタマ電脳IRC空間」 http://d.hatena.ne.jp/NinjaHeads/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ネオサイタマだ!」ゲンドーソーは命じた。邪悪なアトモスフィアはまさに、かの貪婪の都から発せられている!「イヤーッ!」ユカノは手綱を掴み、打ち振った。「ロウオオオーン!」バッファローは白砂に蹄鉄を打ちつけたのち、走り出した!「アイエエエ!」進行方向のニュービーが転がり避ける!22

2014-08-08 22:31:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

たちまちのうち、牛車は参道めいた坂道を恐るべき速度で走り下りる。敷地外へ出てしまえば、ドージョーはこの広大な山林の中に幾つも打ち棄てられたジンジャ・シュライン廃墟群のひとつにしか見えない。「ロウオオオオーン!」「ゆけ!遅きに失する前に!」ゲンドーソーはその目を爛々と輝かす! 23

2014-08-08 22:38:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

平安時代の昔、ニンジャ貴族たちは牛車を駆り、敵陣の姫を強奪した。巨大なバッファローは行く手のモータル兵や槍衾、馬上のニンジャを吹き飛ばし、城門を破る、力への意志の具現であったのだ。現代日本、バッファローのサイズはかなり小さくなった。それでも、いまだこのような巨大種は存在する!24

2014-08-08 22:44:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……」ソウカイヤのニンジャ、コーシャスは、落ち葉の中に身を屈め、ニンジャの足跡を発見した。「これは」彼は注意深くその角度を確かめ、次の足跡を発見した。この方向にドージョーあり!「ついに!」発見!キンボシだ!彼は快哉しようとした。その時、「ロウオオーン!」「何、アバーッ!?」25

2014-08-08 22:50:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

コーシャスの爆発四散を尻目に、牛車は更に速度を上げてゆく!目的地はネオサイタマ……その地で彼らは何を為そうというのか……? 26

2014-08-08 22:54:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

稲妻が閃き、強化ガラス張りの畳空間をモノトーンに切り取った。一瞬の閃光に浮かび上がったのは、積み上げられたタタミ玉座上の威圧的な影と、しなだれかかるオイラン達、そして、跪く二人のニンジャであった。 28

2014-08-08 23:04:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……どうもムズ痒い」玉座上の男は閉じた扇子でオイランをピシャリと無意味に打ち据えたのち、首筋を掻いた。白い髪と凶悪かつ豪壮なメンポ、ダブルのスーツの帝王は、そう呟いて、ニンジャ二人をギロリと見下ろした。「抗争直後のドサクサに、ふざけた動きをしている虫がおるな」 29

2014-08-08 23:13:13
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「僭越ながら」口を挟んだのは、跪くニンジャの一方であった。「これ以上その虫を捨て置けば……」「捨て置けば、何だ」帝王はギロリと睨んだ。睨まれたニンジャは言葉を切ったが、目を逸らしはしなかった。その横で、オブシディアン色のニンジャは奥ゆかしく沈黙を続けている。30

2014-08-08 23:22:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

帝王の名はラオモト・カン。このトコロザワ・ピラー天守閣からネオサイタマを睥睨するソウカイ・シンジケートの大首領その人だ。その眼力は並のニンジャをして失禁せしめる威圧力をもつ。だが、ここに侍る二人のニンジャは動じない……それ程までのカラテを持つニンジャ戦士なのだ! 31

2014-08-08 23:32:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ソウカイ・シンジケートはラオモト=サンの絶対の力を以て、ネオサイタマを支配する」黒玉色の提言者は怖じずに言った。「その絶対の力を試す者が存在を許されている。その事実が既に、この私には耐え難い事です」ラオモトは鼻で笑った。「なかなか言うな。ドミナント=サン。誰の受け売りだ」32

2014-08-08 23:36:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ご存知でしょう」ドミナントは答えた。「帝王の煩わしさを先回って潰し、些末事にとらわれること無きよう計らうのが、私とソウカイ・シックスゲイツの重大な役目」ドミナントは横目で隣のオブシディアン色のニンジャを見た。その眼差しには牽制のニュアンスがあった。 33

2014-08-08 23:45:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「つまらぬ虫を相手に初陣を望むか」「虫であるからこそ、気楽に望めます」ドミナントは頷いた。「シックスゲイツを動かし、それが仮に敗れる事あらば……あり得ませぬが……それこそ格好がつきますまい?その点、私ならば、所詮は初陣。惜しみなく使い捨ててよい立場です」「口の達者な男よ」34

2014-08-08 23:54:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ラオモトはこの会話を楽しんでいるようだった。「ゲイトキーパー=サンからその口達者も仕込まれたか」「然り。カラテのみならず」「……ダークニンジャ=サン!」ラオモトは不意に、その隣のオブシディアン色のニンジャに扇子を向けた。「この件、オヌシに意見はあるか」 35

2014-08-08 23:58:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私から特に申し上げる事はありません」ダークニンジャは無感情に答えた。ニンジャヘルムに覆われ、その表情は眼差しすらも窺い知れない。「付け加えるならば。ドミナント=サンは確かなカラテの持ち主」奥ゆかしく言った。「……」ドミナントはダークニンジャを一瞥した。ラオモトは目を細めた。36

2014-08-09 00:03:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「よかろう。ならば余興を見せろ!」「仰せの通りに」彼は立ち上がり、オジギをした。踵を返し退出するまでのドミナントの全ての挙動は完璧だった。「ドミナント=サンに興味はあるか。ダークニンジャ=サン」ラオモトは再度問うた。「……敵となれば」「ムッハハハハ!お前はそういう男だ!」 37

2014-08-09 00:13:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」連続で繰り出されるシャープトゥースの致命的チョップ突きを、ニンジャスレイヤーは連続バック転で回避する。ビル屋上の一方の端からもう一方の端へ、両者は3秒で移動した。39

2014-08-09 00:24:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」シャープトゥースの追撃!手首から飛び出したサイバネ牙がニンジャスレイヤーの心臓を貫かんとす!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは横から手を差し込み、刺突軌道を逸らすと、シャープトゥースの顎に掌打を繰り出した。「イヤーッ!」シャープトゥースは身を反らしこれを回避。 40

2014-08-09 00:28:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」そのまま身体を回転させ、後ろ足で蹴る!これは形を変えてカポエイラにも伝承されるニンジャの蹴り技、メイアルーア・ジ・コンパッソである。「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは回避を敢えてせず、身を沈めながら、むしろ懐へ飛び込む!「イヤーッ!」 41

2014-08-09 00:32:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「これは」シャープトゥースが目を見張った。ニンジャスレイヤーの両手は彼の首元にかかっていた。シャープトゥースは眼前のニンジャスレイヤーから急速に人間性が消失し、センコ花火めいた眼光が灯るその瞬間を目撃していた。「グググ……グハハハハ!」「これは!」「イヤーッ!」天地逆転! 42

2014-08-09 00:33:52
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはシャープトゥースを掴んだまま後方へ倒れ込んだ。倒れ込んだのちも、決して襟元の手を離さぬ!「イヤーッ!」「グワーッ!?」二者はストライプキャンディーじみた二色の球体じみて、ビルの淵へと転がってゆく!「イヤーッ!」「グワーッ!」ナムサン!そして共に落下!43

2014-08-09 00:35:47
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

グルグルと回転しながら、彼らは真下へ……オフィス街の只中に築かれた緑の公園へ落下してゆく!既に夜は明けかかり、朝の空が彼ら戦闘者を逆光の影に染めた。「イイイヤアーッ!」KRAAAASH!「サヨナラ!」回転と落下を掛けあわせた衝撃を全身に注ぎ込まれ、シャープトゥースは爆発四散!44

2014-08-09 00:39:40
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエ!」通勤の為に公園を整列して通過していたサラリマン達が、突如天から降ってきたジゴク存在に衝撃を受け、てんでに悲鳴を上げて、バラバラの方向へ逃げ惑う。彼らは示し合わせずとも整然と列を作って移動する性質を持っているが、こうした想定外の事態に際しては、やはり人の子だ。45

2014-08-09 00:43:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ザッケンナコラー!」「スッゾオラー!」この落下にまるで呼応するかのように、公園内の茂みや池の中から次々にクローンヤクザが飛び出し、ニンジャスレイヤーにチャカ・ガンを向けた。シャープトゥースはただでは死ななかったのだ。「終わりだな。狩人気取りの兎め」樹上の新手ニンジャが嘲る。46

2014-08-09 00:49:19