「フラワー、サン、アンド・レイン」#1　――『ニンジャスレイヤー』二次創作小説

うさぎ小天狗(実写版) @USAGI_koTENGU

まず仕掛けたのはソードモンガー。オフィスの床をすべるような動きで接近、腰だめに構えていた片手で無造作にカラテパンチを繰り出す！「イヤーッ！」油断なくカラテ警戒していたブラックヘイズはこれをダッキング回避……だがその時だ！「イヤーッ！」銀光が閃き、ブックヘイズの顔を薙いだ！　43

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流れ星めいて走った銀光がブラックヘイズのメンポ(訳注：面頬か)を刳り、火花を散らす！ニンジャ動体視力をお持ちの読者の驚きはいかばかりか、想像に難くない。タツジン的なダッキングがソードモンガーのパンチを躱したコンマ二秒の間に、そのパンチの中からくさび形の刃が出現したのである！　44

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これはプッシュダガー！丁字型の全体のうち、並行部分を握りこみ、垂直部分で斬りつける恐るべき隠し武器である！しかしブラックヘイズもプロフェッショナル、この奇襲を読んでいた。ダッキング後の無防備な目を狙った横薙ぎ斬撃を、瞬時に顔を後方に逸らすことでメンポに当てた！だが！　45

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「イヤーッ！」ソードモンガーのマントが翻り、隠れていた腕が新たな武器をブラックヘイズの懐に突き込む！「イヤーッ！」再び火花が散り、深緑の影がワイヤーアクションめいて後方にふっ飛ばされる！見よ、ソードモンガーの付き出した手には、まとめて握った三本の鉄棒がある！　46

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そして、「イヤーッ！」吹っ飛んだ敵を追って駆けるソードモンガーが、三本の棒をオフィスの中空に振るうと、それらはヘビめいた動きでしなり、次の瞬間に一本のヤリへと変じている！三本の鉄棒の二本分を柄に、一本分を刃先とする短槍が、パーティションめがけ飛ぶブラックヘイズを追う！　47

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THUNK！短槍の穂先がパーティションを貫く！と同時に！紙一重で身をかがめこの刺突を躱したブラックヘイズが、「イヤーッ！」伸ばした足でソードモンガーの軸足首を刈りにゆく！これを小ジャンプ回避したソードモンガー、そのみぞおちに叩き込まれる中段ポン・パンチ！「イヤーッ！」　48

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KRASH！三度火花が散り、今度はソードモンガーの直立影像めいたシルエットが宙に舞う！後方へ飛びすさる瞬間、ソードモンガーは敵のポン・パンチを迎撃した己のプッシュダガーが、三節棍短槍の打撃同様、ブレーサーに弾かれたのを知った。油断ならぬ敵、ブラックヘイズ！　49

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すかさず両手をマントに隠し、次の瞬間二丁のドス・ダガーを抜き放ったソードモンガーは見た！今だ空中にある自身の右手、オフィス中心のパーティション群れに姿を消す深緑のシルエット！オフィスの床に着地、順手と逆手にそれぞれ握ったドス・ダガーを油断なく構える彼の背後に社長ブース！　50

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だが、この好機をソードモンガーはあえて無視した。敵がガード対象を残し、己の視界から消えた事実。十中八九、罠だ。社長ブースにはなんらかの仕掛けがあるか、よしんばなかったとしても、注意がそちらへ逸れた瞬間に、敵は襲い掛かってくる。　51

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……アイサツからわずか数秒の攻防が小休止を迎えた。オフィスに静寂が戻る。しかしそれは不気味な静寂だ。敵はどこからくる。ソードモンガーは前周一八〇度を警戒し、顔を動かさず視界に収め……そこで気づいた。なにに？オフィス中空に今も浮かぶ、己のカタナと、投擲したクナイ・ダートに。　52

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それは奇妙な光景だった。手品じみて中空に浮くカタナ。その周辺に静止するクナイ・ダート……なぜそこにある？なんらかのネンリキ・ジツであろうか。ソードモンガーはニンジャ観察力を凝らし……拡大された彼の認識は高解像度カメラめいて浮遊カタナの周辺を拡大し……そして彼は気づいた！　53

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だが！「イヤーッ！」彼のものでないカラテシャウトが響き、次の瞬間！「グワーッ！」ソードモンガーは逆手持ちのドス・ダガーを床に突き立て、前方に落下する体を止めようとする！思わず目をやった己の両足、その足首に、巻き付いているのは……糸だ！透明な糸！　54

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そう、糸！チョウの幼虫の吐くそれに似た、透明な糸が彼を前方に引き寄せようとしている！これが先ほど、彼のカタナとクナイ・ダートを中空に引き寄せた！これが敵のジツかと気づいたが時すでに遅し！「イヤーッ！」ジツを放った深緑の影はパーティションを飛び越え襲いかかる！　55

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ドクン！ソードモンガーの脳内にニンジャアドレナリンが瞬間噴出！認識が拡大され、視界がスローモーションめいて鈍化！飛びかかる深緑のシルエット、その片手が体の前面をブレーサー防御し、もう片手が中空のカタナをつかむ。大きく振りかぶったカタナの刃がLED光にギラリと光る。　56

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ソードモンガーは逆手のドス・ダガーで踏ん張りながら、順手のドス・ダガーを頭越しに後方へ投擲した。回転する白刃が仰向けた視界から消え、引き戻した手には先程のプッシュダガーが現れている。その間にもパーティションを飛び越えたブラックヘイズが白刃を閃かせ彼めがけ落下してくる。　57

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キヨキ・オギトは見た！目の前で仰向けに倒れこんだ刺客ニンジャがドス・ダガーを彼めがけ投擲、回転する刃が迫る！同時にボディガードが中空に静止していたカタナを手に、刺客ニンジャに襲いかかり、その顔の横に白刃を突き立てた！そして！　58

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KRAAAAAAASH！彼の目の前で防弾ガラスが砕け、回転刃が社長ブースに飛び込んでくる！「ヒイッ！」彼は死を覚悟した。思い描いていたようなソーマト・リコールはなかった。ただ彼は硬直し、呆然としていた。目を閉じることすら出来なかった。死の瞬間とはこんなものかと思った……。　59

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だが、彼は生き延びた。その時は、まだ。　60

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ブラックヘイズは闇を見ていた。闇、それは眼前の敵、その瞳だ。ニンジャという虚無、生きながら死に、死にながら生きるものの内面。そして、それは己も同じと知っていた。だから、きっと俺も相手と同じ顔をしているのだ。今目の前にいるニンジャ同様、笑っている。笑って殺し、笑って死ぬ。　62

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「何がおかしい」闇が笑った。「貴様と同じよ」ブラックヘイズは答えた。「似たもの同士、というわけか」闇が、ソードモンガーが言った。「そういうことになる」二者は低く笑った。　63

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「なぜ止めた」ブラックヘイズは己の喉元にとどまるブッシュダガーのくさび形の刃を暗に示した。「貴様と同じよ」ソードモンガーは答えた。彼の喉元に、ブラックヘイズが床に突き立てた刃が横から迫っていた。「どちらが早いか比べようか」「どうだろうな」　64

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「何を考えている」「貴様と同じよ」「どうする」「どうしよう」「キヨキ＝サンは生きておるな」「もちろん」「それも糸か」「そうだ」「見えぬ糸とはな」「貴様の得物は尽きぬか」「お互い手の内は明かした」「そうかな」「ハッタリか」「貴様と」「同じか」……BEEP、BEEP。　65

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ソードモンガーの懐でIRC通信機が着信、BEEP音が鳴り響く。「出てもいいかね」とソードモンガー。「険呑だな」とブラックヘイズ。「貴様が取ってもいい」「俺がか」「その方が安心できるのではないか」「なにを企んでいる」「これ以上繰り返すか」「そうだな」……BEEP、BEEP。　66