【邪悪の樹】決闘フェイズ――贄の樹

『愚鈍』エーイーリー @nowalu

「禍罪、発動」 能力を発動。瞬間、目の前を赤が包む。ごうごうと燃え滾る炎は『貪欲』から繰り出され、『愚鈍な』の巨躯を隅から隅まで焦がしている。幸い、禍罪のおかげで痛みはない。 ぱちりぱちりと、不気味な音が鳴る。身体中の脂肪や筋肉が音を立てて燃えているのか。 「がん、ばって……」

『愚鈍』エーイーリー @nowalu

熱により身体から水が失われ喉から上手く声が出ない。結果、いつもよりも更に鈍間な声が出てしまった。 「あ、あ……」 やっと、この愚かで鈍間な身体から解放される、と空を見上げる。きっとそこには愛する者が二人、いるはずだ。 「あ………！お、れ……も、てん、ご、く……いけ、る……かな？」

『愚鈍』エーイーリー @nowalu

それが、最後の言葉になった。 最後の呟きは炎に焼かれ、彼の命の炎は飲み込まれた。

『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

『愚鈍』の身体が炎に飲まれて消えて行く。その姿に、『貪欲』の心が激しく泣いた。けれど、その炎を止めることはせず。 やがて『愚鈍』は灰になる。炎は消え、『貪欲』は己の身体が力に満たされたのを感じた。

『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

「……流石に、デケェだけあるな」 身体の奥底で燃え滾る炎に、悲しげに目を細め、ポツリと零す。それでも『貪欲』はそっと微笑んで、空を見上げた。

『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

「……行けるさ、『愚鈍』。お前の願いは、きっと届く。悪夢はいつか、晴れるものさ」

『不安定』インスタビリテート @ToEvil_yuina

『貪欲』は踵を返し、歩き出す。扉へ向かう足取りは迷いなく、扉を開ける手は躊躇うこともない。そして振り返ることもなく、『貪欲』は戦場を後にした。