【邪悪の樹】決闘フェイズ――民の樹

『智の剣』陣営『不安定』(@Aiyatsbusy) 『理の盃』陣営『拒絶』(@ev_sher
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人間《ディアドラ》 @actSkbz

「これは、しあわせへと続く道。しあわせへと、続くこと。──不幸ごっこ、なんて」 言わないで欲しいかしら。 言葉は落ちる。嘆きを含んで。“きおく”が胸を焦がす。 「“とこしえの、ねむりを”」 見つめる。拒絶の片足を。茨のかすめた方を。じわりと、『招眠』は侵食せんと。

2014-08-29 21:25:41
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「……それに、振り向いてもらえないんじゃないわ」 「振り向かないでほしい、それだけかしら」 くてりと首を傾ぐ。避けるような動きに追い付かず、髪が障壁に挟み込まれそうだ。 「わたしが、追いかけたいから。──前を、向いていてほしい」 それだけかしら、どうかしら。

2014-08-29 21:25:55
人間《ディアドラ》 @actSkbz

崩れる安息は、嘗ての仲間が眼前に、敵として在るから。崩れる安定は、呼び起こされた“きおく”が胸を焦がすから。 「不安定が安定してしまったら、“不安定”でいれないかしら」 嘆きが落ちる。喪われれば喪われるほど、不安定さは増して、茨は増えより太く、絡め取らんと奔って。

2014-08-29 21:26:05
武殿仁将 @rp_20kw

「そォかよ」  唸るように呟いて廃墟群を駆け抜ける。背後から茨が無数に追い縋るのがわかる──片足の麻痺が強くなってきた。もうその足が、地面に着いていると信じて走るしかない。ややもすれば引き摺ることになるだろう、それまで捻挫しないことを祈るしかない。

2014-08-30 02:03:18
武殿仁将 @rp_20kw

 茨の一本が腕をかすめて、そこすらもうっすらと感覚を失い始める。握っていた短槍を持ち替えた。 「てめえの連れを追うのは好きにしろ、だが連れが今頃死んでたらどうすんだ!? 後追い自殺でもしようってのか」  ぶわり、と『障塞』を茨に飛ばす。防ぎきれるものではないが、気分だけでも楽だ。

2014-08-30 02:03:25
武殿仁将 @rp_20kw

「殺し合いだ、そいつだって死んでてもおかしくない──それにどうせ後ろから追うだけなら、振り向いてもらえなくてもいいのなら、死んで空からでも草葉の陰からでも見守ってろ! 魂だけで着いてくんなら死んでからでも遅くはねえぜ!」  それだけを吐き捨てて、廃墟の陰に飛び込んだ。

2014-08-30 02:03:36
武殿仁将 @rp_20kw

 不安定の目に晒されないよう、建物の陰を伝って移動する。一つの建物を選んで、そっと階段を上がった。二階に上がると割れ窓があり、そこから極力身を乗り出さないよう注意しながら不安定の姿を確認する。  ──見えてねーといーなぁ  そんな願望を抱きつつ。  

2014-08-30 02:03:46
武殿仁将 @rp_20kw

 つい、と指をさす。不安定の背後の地面に添うよう、彼女が気づかぬよう、そっと『障塞』を設置。  そして──今度は彼女の真正面にあからさまに『障塞』を出現、彼女に向かって突進させる!

2014-08-30 02:04:00
人間《ディアドラ》 @actSkbz

物陰に潜んだ拒絶を探すように。茨は蛇のように鎌首を擡げた。周囲の瓦礫を蹂躙するかのように、蒼い燐光を散らして青茨の紋様を残していく。 障壁にぶつかった茨は一瞬、動きを止めて身震いするように撓る。 「しん、で……?」 フラッシュバック。台座の上。黒。伸ばした手。煤けた指先。

2014-08-30 03:29:43
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「あ、ああ、っ、」 眼前に障壁が迫る。膝から崩れ落ちそうになったのを、茨が支えた。それでも力の抜けた身体を支えきる事は出来なかったのか、ぺたりと、地面に尻餅をついて。 「あ……──!」 根付く主を動かそうと、茨が不安定を引っ張ろうとも、びくりともしない。

2014-08-30 03:29:59
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「──いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」 耳を劈くような絶叫。頭を抱え、迫る障壁など目に入らないかのように蹲り、嘆きが呼応する。 茨は太さを増し、より青さをまして、いっそ禍々しい程に。

2014-08-30 03:30:18
人間《ディアドラ》 @actSkbz

──障壁が、不安定に衝突しかけるのと同時。より太さを増した茨が拒絶の潜む箇所ごと廃墟に蜷局を巻く。物質を物ともしないそれは、うねり、撓り、“不安定(かのじょ)”を害する者を、永久の眠りへ導かんと。

2014-08-30 03:33:45
武殿仁将 @rp_20kw

 視界が蒼く染まる──囲まれたのだと察するのに時間はかからなかった。  壁を透過して侵食してくるそれに舌打ちをする。先程放った『障塞』は効を奏したのだろうか、蒼の茨に阻まれてよく見えない。みるみるうちに蒼輪が到達し、身体をなぶって行く。『障塞』も使用するが進行を遅らせる程度だ。

2014-08-30 12:34:22
武殿仁将 @rp_20kw

 もうそろそろ全体的に身体が動かない。短槍を引き摺り、無理矢理片腕を窓のさんに乗せる。相変わらず視界は悪い──が、それでも見えるものがいくつか。  ──動け……、畜生。まだだ……!  ぎこちなく指を動かし、指す。対象は、不安定がいるだろう近辺の──廃墟。それなりに高さのある建物。

2014-08-30 12:34:45
武殿仁将 @rp_20kw

 ──間に……合え!  『障塞』。  爆破に晒され、建物が倒壊を始める。その先に不安定がいるのか、考える余裕も確認するだけの視界も、もうなかった。  最後の力を振り絞り、短槍の穂先に片手を貫通させる。  ──ッ!!  鋭い、痛み。  少しだけ、意識が明瞭になる──ただ少しだけだ。

2014-08-30 12:43:03
武殿仁将 @rp_20kw

 あとはもうチキンレースだ。彼女が最後まであそこに立っているか、自分が最後までこの痛みと共に在れるか。  流れる赤と渦巻く蒼が混じり合い、濁った紫を孕んでいく──。

2014-08-30 12:43:15
人間《ディアドラ》 @actSkbz

嘆きは尾を引き摺る。縋るように虚空へ伸ばされた片手が障壁に触れ、それは爆ぜた。 軽すぎる程に軽い身体はその爆風に煽られ、浮き上がる。浮いた身体を茨が引っ張る。今度は抵抗を示す事なく、その身体は遥か後方へ引っ張られていく。 たたらを踏むように地を踏んだ片足が、また別の障壁を踏んだ。

2014-08-30 18:11:53
人間《ディアドラ》 @actSkbz

片手も、片足も、燃えるように痛いのかもしれない。──これは罰だわ、と脳内で“わたし”が囁いた、ような気がする。思考は揺蕩う。波間に消える。脈打つような感覚を与える傷口を見る事もなく、ただ首を振る。 蒼さが増すばかりの茨は尚も、拒絶の潜む廃墟を締め上げる。

2014-08-30 18:11:58
人間《ディアドラ》 @actSkbz

──轟く爆音。重い音を立てて、廃墟が倒れ、壊れていく。運良く、なのかはたまた運悪く、なのか。直に押し潰される事は避けられど、巻き上げる砂塵と倒れた時の衝撃により、軽い身体は容易く吹き飛び、別の廃墟の壁に強く叩き付けられた。 「“……ねむれ、”」 囁きの声は強い嘆きを含んで。

2014-08-30 18:12:01
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「“とこしえに、ねむれ”」 繰り返す。咳き込む。口の中がざらざらとした。砂塵を吸い込んだのだろうか。片手の感覚も、片足の感覚も薄らとしたもので、痛みを感じる事すらなく。 「“とこしえに、ねむれ”」 繰り返す。また咳き込む。口元を押さえた手に、赤を見た。胸が、締め付けられる。

2014-08-30 18:12:04
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「“ねむれ、とこしえに、──ねむれ”」 青は増す。いっそおどろおどろしい程に。ただ一点、拒絶の在るそこの茨のみが、建物すら垣間見えない程に青く、蒼く。 「“ねむれ”」 嘆き。憂う。繰り返される“きおく”に、こめかみを押さえる。ただただ哀しく、ただただ苦しく、──つらい。

2014-08-30 20:56:58
人間《ディアドラ》 @actSkbz

砂塵で薄汚れた白いドレスと、自分を見て、薄く笑みを形作る。 「“とこしえの、ねむりを”」 「“ねむれ、とこしえに”」 ──アルシエンティー、と“わたし”が柔らかく囁いた。壁を背に、舞う砂塵の向こう。濃すぎる程の青を見詰める。 「“ねむれ、──とこしえに”」

2014-08-30 20:57:06
武殿仁将 @rp_20kw

 だらだらと血が流れる。吐き気がする。気が遠くなる。穂先を握りしめる。痛みを覚える。血が流れる。──この繰り返しを、何度しただろう。  ──あー、……そろそろヤバいかな……  頭の片隅で、ちらりとそう思った。他にやっとかないといけないことなかったっけか。……そういや、一つ。

2014-08-31 12:16:49
武殿仁将 @rp_20kw

 不安定を道連れに死ぬ、という気持ちはない──あくまでも自分が勝つ可能性を引き上げたいだけなのだ。それが0.01%から0.02%になるだけでも。  自分の言葉に酔うのが好きそうね、と不安定に言われたのを思い出す──そう、確かに自分の事は大好きだろう。

2014-08-31 12:19:08
武殿仁将 @rp_20kw

 だが、必ずしもかっこいい自分が好きか、と問われればそうでもない気もする──きっとダサくてしょうもなくてかっこ悪くて汚泥を這いずりながらも生きる自分が好きなのだ。可能性が限りなく低くても。  ──かっこいい死に方、できねえなあ──  心の中で笑う。頬は麻痺してもう動かない。

2014-08-31 12:20:23