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翠寿
@suizyu329
22。この鉱山で採れる宝石は多様だが、やはり特に素晴らしいのは水晶らしい。エネに案内されて足を踏み入れた水晶窟は一面に大小様々な水晶が生え揃っていていっそ恐ろしくもあった。エネが持ち込んだ雨の音が水晶の中で反響し空間に振動していく。コノハが音に目を回していた。#空想紀行
2014-07-31 14:21:43
翠寿
@suizyu329
23。終始人を小馬鹿にしていたエネと別れ、南西へと足を進める。道中に野党や野犬に襲われることもあったがコノハのおかげで難を逃れることが出来た。見るも鮮やかな四肢捌きだった。こいつがいなければ今頃オレは身包みを剥がされて野垂れ死んでいたかもしれない。#空想紀行
2014-08-01 12:40:47
翠寿
@suizyu329
24。街道を抜ければこの大陸一の王都が見えてきた。人のごった返す賑やかさには思わず苦笑してしまう。露店を眺めながら大通りを進み、コノハの物欲しそうな目に負けて串焼きを購入させられたりした。各地から集まる名産品が並ぶ露店には目移りしてしまうのも仕方ない。#空想紀行
2014-08-02 22:24:57
翠寿
@suizyu329
25。気が付いたら隣を歩いていたはずの少年の姿はなかった。目だつ白頭も人混みのせいで発見することが出来ずオレはため息をつく。悩むオレに突如激しくぶつかってくる男。謝りもせずに走っていくその背を睨めば違和感に気付く。財布がない。オレは男を追って路地に駆け込んだ。#空想紀行
2014-08-03 21:08:03
翠寿
@suizyu329
26。スリを追って暗い路地を走り抜ける。入り組んだ道で土地勘のない自分が男に追いつくのは難しい。距離を離されもう駄目かと諦めかけた時、男の前に立ち塞がる二つの人影。横を抜けようとする男の腕を掴み、一瞬で地に引き倒したそいつはオレの財布を取り返してにこやかに笑った。#空想紀行
2014-08-04 21:41:57
翠寿
@suizyu329
27。猫目の男と緑髪の女の2人組は捕らえたスリをそのままに、最近都ではこういった事件が多発しているのだと語った。何かお礼がしたいと申し出れば猫目がオレの荷を指差して「なら君のお仕事を見てみたい」などと笑う。スリを自警団に引き渡し、オレは二人と共に噴水広場へと向かった。#空想紀行
2014-08-05 22:07:40
翠寿
@suizyu329
設定6。 カノ→王都に店を構える聞き耳屋の少年。都の至る所に盗聴器の役割を持つ『耳』を仕掛け、情報を収集し仕入れたネタを人に売る。裏の人間に顔が利く。キド、セトとは同郷の仲で皆で王都に出てきた。自由気ままな旅に憧れている。#空想紀行
2014-08-05 22:08:10
翠寿
@suizyu329
設定7。 キド→王都で奪還屋を営む少女。人から物を奪い返すのを生業としており、もっぱらスリの確保や詐欺被害の商品奪還などを行っている。男性と勘違いされがちなのを実は気にしている。自警団と協力して仕事をすることが多い。カノは奪還業の手伝いとしてよく連れ回している。#空想紀行
2014-08-05 22:08:25
翠寿
@suizyu329
28。店同士の張り合いから少し離れた涼やかな広場。穏やかな時の流れのそこでオレは噴水に腰掛け、仕事道具と無地の布を取り出す。何色に染めるべきか。背後の水の流れを見、先日の雨上がりの森を思い出す。ちゃっかり採取しておいた雨の森の緑の色を筆にセットして布地に走らせた。#空想紀行
2014-08-06 15:39:10
翠寿
@suizyu329
29。猫目の男、カノが凄いねと手を叩く音に顔を上げる。染め上がった布をしげしげと眺めるキドという少女の瞳の奥が輝いていた。純粋な賞賛の言葉に照れ臭くて頬をかく。元々お礼のつもりだったので物欲しそうな目をしていたキドに布を譲れば彼女は気に入ってくれたようだった。#空想紀行
2014-08-07 11:46:14
翠寿
@suizyu329
30。泊まるところはまだ決まっていないのだと話せばカノが自分の店を寝床に提供してくれた。はぐれたままのコノハが少し心残りだが元より成り行きで行動を共にしていた相手。いつかまた出会うだろうと割り切ってオレは一晩カノの店兼自宅にお世話になることにした。#空想紀行
2014-08-08 20:15:34
翠寿
@suizyu329
31。実に騒がしい夜だった。早朝、喋り通しで疲れた頭をスッキリさせるべく外の井戸で水を被る。建物の隙間から覗く朝日が目に眩しい。夕食後家に帰って睡眠をとってきたキドと少しだけ話した。朝飯は一緒にとろうということでキドが寝坊助のカノを起こしに行く。また賑やかになりそうだ。#空想紀行
2014-08-09 15:12:51
翠寿
@suizyu329
32。セトが言っていた森はここから半日もしないところにあるらしい。森までの道順と旅の荷物を整えるのにちょうど良い店を教えてもらい、オレは恩人二人に手を振った。都を離れ、山に入れば生きた自然の声が耳を癒す。心が洗われるようだ。久方ぶりの一人の時間は少しだけ物寂しかった。#空想紀行
2014-08-10 22:38:34