53。一日、二日、四日、一週間。ずるずると延びていく滞在期間。元から読書の類が好きだったおかげで実に有意義な時間だった。このままこの街に居を据えるのもやぶさかではない、そんな考えまで浮上してきた時、宿から図書館までの道を行くオレの耳に懐かしい声が届いた。#空想紀行
2014-08-31 16:55:3854。一人と一匹の首の周りで揺れる黄昏色の染物。数週間ぶりに再会した親友は嬉しそうに手をぶんぶんと振っていた。前に見た時より一回り大きくなった飛竜が翼をはためかせ、オレの首元に擦り寄ってくる。何でこんなところにいるのか。アヤノ、呼びかければ彼女はふにゃりと綻ばせた。#空想紀行
2014-09-01 22:24:3255。感動の再開も束の間、オレと挨拶を交わすやいなや眦を吊り上げた彼女はオレが何も言わずに家を出たことに大層ご立腹の様子だった。問答無用で近くのカフェに連れ込まれ、テラス席で頭を付き合わせる。呑気に牛肉を頬張る飛竜が恨めしくて仕方なかった。#空想紀行
2014-09-02 22:04:3256。旅の経緯を話すうちにアヤノがキドカノセトと知り合いだという衝撃の事実が明らかになった。王都にいた頃には同じ家に住んでいたらしい。どうやらアヤノはオレを探してここまでやってきたらしく、一緒に戻ろうと誘われる。オレを追ってこんなとこまで来るなんてこいつも暇人だな。#空想紀行
2014-09-03 16:31:1457。思い返せば随分と遠くまできたものだ。旅を切り上げるには丁度いいかと考えてオレはフッと肩から力を抜く。我が家に帰ろう。その道すがら、世話になったあいつらの元に顔を出すのもいいかもしれない。アヤノに紹介したい奴も何人かいるしな。食事を終えた飛竜が元気良く一声鳴いた。#空想紀行
2014-09-04 22:33:2758。行きは一人で歩んだ道を友人一人と一匹で進む。長かった旅の折り返し、歩きながら互いの旅の思い出を話して聞かせる時間は穏やかで温かいものだった。アヤノはオレがいないと知って衝動的に飛び出してきてしまったそうだ。戻ったら一緒に竜騎士の訓練長に頭を下げねば。#空想紀行
2014-09-05 19:35:0658,5。帰ったらこの旅で手に入れた色と色彩感覚を試してみよう。それが顧客に受け入れられれば上々、仕事も捗る。定期的にこういった旅に赴くのも悪くない、だが今度は予めアヤノにも言っておかねば。 見上げた空は旅の初めと変わらず青かった。 【終】#空想紀行
2014-09-05 19:35:10構図かぶりすぎててもはや打ち合わせしたのかってレベルだね!!!さすが相棒!!おつかれ!!#空想紀行 pic.twitter.com/rde88fSrbg
2014-09-05 19:38:41