米国上院における新START条約批准を巡る問題

4/8に米ロ間で調印された新START条約は11/2の中間選挙で共和党が躍進したことにより批准が極めて困難に。オバマ政権は年内のレームダックセッションでの批准を求めるも、見通しは暗い。
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fj197099 @fj197099

今年4/8に米ロ間で調印させた戦略核の数を1550発まで減少させることを定めた新START条約。その条約批准が中間選挙で民主党が敗北したため大変困難になってきている。批准に必要な票は67以上だが民主党は現在53議席しか持たない。共和党から14以上の賛同を得ないと批准は実現しない。

2010-11-23 14:40:09
fj197099 @fj197099

選挙前は民主党が59議席を持っており共和党から8人の賛同を得れば良かったがこれも党派的対立が顕著な今の政治状況では大変困難な話ではある。米国議会は日本と違い、新議員に交替するのは来年1月。それまではレームダックセッションといって選挙前の議員が落選しても引き続き議席に留まり続ける。

2010-11-23 14:42:44
fj197099 @fj197099

そこでオバマ大統領ほか、民主党の主要人物は批准へのハードルが比較的低いこのレームダックセッションの間に何とか新START批准を実現させようと大変な努力をしている。大統領、副大統領、国務長官、上院外交委員会の委員長などが次々に早期批准を訴える演説を実施。急がないとまずいという訳だ。

2010-11-23 14:45:19
fj197099 @fj197099

何しろ新START条約はオバマ政権の「核なき世界」構想の中核。これが実現しないと核全廃どころの話でなくなってしまう。またこれはロシアとの関係「リセット」面でも重要。せっかくNATOリスボン首脳会議でロシアとの協調姿勢を演出できたのに、その機運がたちまち萎んでしまうという訳だ。

2010-11-23 14:47:08
fj197099 @fj197099

中間選挙での敗北の後にさらに外交で失策を重ねることはオバマ大統領の再選に係る事態になりかねない。だから民主党は早期批准を強く求めている。だがそれだけに共和党はむしろ積極的に協力する理由を見出しにくい。9月の上院外交委員会でも多くの共和党議員は本会議にかけることに反対していた。

2010-11-23 14:48:48
fj197099 @fj197099

こうした状況で早期批准が可能か否かの鍵を握るのが共和党のカイル上院議員。カイル議員は新START批准の条件として既存核兵器の「近代化」に十分な予算をつけることを求めた。核兵器を減らすのならば、その性能や安全性を十分に維持する必要があるという訳だ。オバマ政権はその要求を受け入れた。

2010-11-23 14:51:28
fj197099 @fj197099

オバマ政権はこれまで800億ドルを近代化のために提示しており、さらに41億ドルを求めに応じて拠出することを決めたが、しかしカイル議員には十分ではなかったようだ。議員は11/16に他にも案件がありレームダックセッションでの新START批准ができるとは思えないとのコメントを発表した。

2010-11-23 14:53:42
fj197099 @fj197099

批准が来年に先送りされれば先ほど述べたように議席数が変わるから批准のハードルは上がる。殆ど実現不可能になるとも言える。共和党の実力者カイル議員は事実上、新START条約の(少なくとも早期)批准に止めを刺した可能性が高い。オバマ政権の「核なき世界」構想は大きく躓いたと言えるだろう。

2010-11-23 14:55:55
fj197099 @fj197099

しかし共和党議員はなぜ新START条約の批准に反対するのか?何でもオバマ政権に反対という党派心以外の理由はどのようなものか?一つはミサイル防衛との関連である。共和党議員の間ではこの条約が(明記されてはいないが)米国のミサイル防衛計画を不当に制約するものではないかとの懸念が強い。

2010-11-23 14:58:30
fj197099 @fj197099

現在の米国のミサイル防衛計画はロシアを対象としたものではなくイランや北朝鮮などからの限定攻撃を念頭に置いたものだが、ロシアは厳しく反発している。そして新START条約でも米国のミサイル防衛計画に制約をかけようとしたが、それに失敗すると、ロシアは次のような留保を一方的に宣言した。

2010-11-23 15:00:18
fj197099 @fj197099

つまり米国のミサイル防衛計画がロシアの核戦力にとって重大な障害となると感じた時にはロシアは条約から一方的に離脱すると宣言したのである。共和党議員はこの種の類の「密約」がオバマ政権とロシアの間で存在するのではないかと懸念している。それが米国の安保に脅威となることを恐れているのだ。

2010-11-23 15:03:19
fj197099 @fj197099

配備可能な運搬手段を700に制限するという規定も批判されている。これはICBM, SLBM, 爆撃機を総合した数字だが、実はミサイルの場合には必ずしも核弾頭を搭載していなくても規制対象となる。米国が最近力を入れている通常型の弾道ミサイルも規制対象となり、問題が大きいという訳だ。

2010-11-23 15:05:26
fj197099 @fj197099

しかしカイル議員自身が重視するのは核兵器の「近代化」の問題である。米国の核兵器は老朽化が進み、一定の検査で信頼性を維持する必要がある。オバマ政権はLEPというプログラムでこれを実施してきたが、LEPでは限界があるとも言われる。そこでブッシュ政権期にRRWというやり方が提唱された。

2010-11-23 15:07:36
fj197099 @fj197099

これは核弾頭そのものを再設計することで信頼性を維持する方法なのだが、オバマ政権はRRWは新型核弾頭の開発を意味するとしてこれまで実行を拒否してきた。だが、LEPでの信頼性維持に問題があれば早晩、核兵器の老朽化は重大な問題となる。故に核兵器の「近代化」が大きな問題となるのだ。

2010-11-23 15:09:43
fj197099 @fj197099

カイル議員は明言しないが、どうやらオバマ政権がRRWを受け入れる事を新START批准の条件とするつもりらしい(http://on.wsj.com/gB04xX)。つまり核兵器を減らすなら新型核弾頭の設計を容認せよという訳だ。新START批准はこの辺りが落とし所になるのではないか。

2010-11-23 15:15:23
fj197099 @fj197099

実は新START条約の内容そのものは米国の核戦力にとっては限定的な削減に過ぎず、条約の本質において反対している議員は少ないとも言う。しかしミサイル防衛やら近代化の問題やらの付随する領域で反発が大きい訳で、批准はオバマ政権がこれら批判にどれだけ答えられるかに掛かっていると言えよう。

2010-11-23 15:17:18
fj197099 @fj197099

見通しを言えば、年内というレームダックセッションの間に批准を行うことはおそらく時間的に困難だろう。年明けの新議会で再度議題になると思われるが、批准のハードルは繰り返し言うように上がる。オバマ政権は「近代化」問題を含む多くの面で共和党議員に妥協しなければ条約批准は覚束ないだろう。

2010-11-23 15:18:58