新START条約批准でオバマ政権の「核なき世界」構想は絶頂点となる可能性が高いことについて

オバマ政権は共和党の求めるブッシュ減税延長丸呑みなどの大胆な中道路線への回帰によって、どうにか新START条約批准を中間選挙後のレームダック期間中に果たすことが出来たが、それで政治資源を使い果たしてしまった形で、今後の核軍縮交渉の進展の見通しは困難である。オバマ政権の「核なき世界」構想はこの新START条約批准をもって「絶頂点」となる可能性は高いであろう。
6
fj197099 @fj197099

米国の新START条約批准について日本メディアではオバマ政権の功績と捉える見方が主流。その見方には反論はない。だが中には「これで核軍縮交渉への弾みが付く」と言う見方も。それはちょっと違う。既にtogetterで論じているが、オバマ政権は条約批准のために大きな政治的犠牲を払った。

2010-12-24 10:51:00
fj197099 @fj197099

それが共和党の求めるブッシュ減税延長を丸呑みしたと言う行動である。これはオバマ政権にとって「公約違反」に相当する行為であり、今後、米国民主党内ではオバマ政権の「中道回帰」の姿勢を巡って党内軋轢が激しくなろう。既にオバマ大統領は一期限りの大統領だとの観測も有力になりつつある。

2010-12-24 10:53:44
fj197099 @fj197099

オバマ政権が新START条約批准という功績を成し遂げたことは積極的に評価していいが、これはオバマ政権の政治的基盤の根幹をかなりの程度に犠牲にしつつ達成された辛勝であった。オバマ政権の政治的求心力は今後急速に低下してゆくであろう。米国版「ねじれ国会」に直面することになるからである。

2010-12-24 10:55:52
fj197099 @fj197099

今回の新START条約批准は賛成71-反対26で一見すると大勝であるかに見える。だが条約批准は2/3以上=67議席以上の支持が必要。そしてこれは中間選挙後のレームダック期間中の決議。民主党議員は現在の59議席から来年には53議席に減る。批准では共和党13人の支持があったという。

2010-12-24 11:00:24
fj197099 @fj197099

今後、同種の問題で共和党13人が民主党を支持しても(そして民主党が完全に一枚岩であっても)獲得議席は66議席に留まり条約批准はできない訳だ。オバマ政権はブッシュ減税延長同意のような大胆な譲歩案を打ち出したが、それでも来年一月からはこの種の条約批准は殆ど不可能になるのである。

2010-12-24 11:02:11
fj197099 @fj197099

今後も核軍縮交渉で条約批准が問題になる機会は豊富にある。まずは署名はしたが批准はされていない包括的核実験停止条約(CTBT)の批准が問題となる。だがこれは超党派の宥和が成立する余地は殆どなく、批准は元より不可能に近いであろう。続いて新START条約の後継条約の話がある。

2010-12-24 11:04:46
fj197099 @fj197099

後継条約は戦術核を対象としたものとなることからそもそもロシアと合意に到達すること自体が困難であろうが、仮に合意されてもロシア側の譲歩を取り付けるために米側は通常戦力やミサイル防衛(MD)面での譲歩を迫られる可能性が高く、そのような条約に上院が批准を与える保証はまずないであろう。

2010-12-24 11:06:56
fj197099 @fj197099

MDについてはそれ自体で1972年のABM条約のような条約締結が行われる可能性もあるが、そもそもMDをロシアとの軍備管理条約で規制対象とすること自体について米国には相当根強い批判の姿勢がある。MDを規制することは敵の核ミサイルの攻撃に米国が脆弱になることを意味するからである。

2010-12-24 11:08:46
fj197099 @fj197099

諸々のことを考えると、オバマ政権の「核なき世界」方針の推進はこの新START条約批准をもって「絶頂期」にあるという見方の方が妥当だと思えるのである。これ以上の核軍縮はおそらく各種方面の反発を招き、政治の混乱を引き起こすであろう。そして米国上院は如何なる条約批准も拒否するであろう。

2010-12-24 11:10:37
fj197099 @fj197099

私自身は、新START条約自体は積極的に評価しても良い内容を含んでいると思うが、そもそも「核なき世界」構想自体が本当に追求すべき課題であるのかどうかについて懐疑的である。過去の「核なき世界」で二度の世界大戦が勃発した経緯を振り返ると、抑止には核兵器の要素がどうしても必要だと思う。

2010-12-24 11:12:21
fj197099 @fj197099

抑止論の世界では「抑止は核兵器と通常兵器の適切な混交によって実現される」という理解は余りにも常識的なものであって抑止を核兵器だけとか、通常兵器だけとかで達成しようとする考え方は異端の発想である。それは合理的に根拠を為さないのである。NATOの柔軟反応戦略を勉強すれば分かることだ。

2010-12-24 11:13:58
fj197099 @fj197099

故に、理想論として「核なき世界」を掲げるのは良いとしても、政策担当者は実際問題としては「核兵器の適切に管理された『核との共存』を図る世界」を追求すべきではないかと考える。核兵器は適切な数まで削減される必要はあるが、ある線を越えた削減は国際秩序にヨリ有害な作用を及ぼす。

2010-12-24 11:15:44
fj197099 @fj197099

この辺りの話はまた機会を改めて行いたいところだが、いずれにせよ新START条約はオバマ政権の「核なき世界」構想の絶頂点におそらく当たるのであり、今後の核軍縮交渉は停滞する可能性が高い、ということを指摘しておきたいのである。オバマ政権も第二期目を考えるならそれ所でなくなってゆこう。

2010-12-24 11:17:48