rsbs日誌#28

﨟長けた鉄血のかはたれどきの魔女🦋 @r_s_b_s

#rsbs日誌　ゴールラインが彼方に見えた。そして黒い風に追い付き…追い抜いた。ゆっくりと縮まる世界の中、視界の端に重巡リ級の驚きを隠せない顔が映る。そして世界は再び動き出す。眼前には何も無い。追い抜くべきライバルは居ない。栄光のチェッカーフラッグへと手を伸ばすだけだ。

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#rsbs日誌　ガチャガチャと艤装が終焉が目前だと告げる。ボイラーが爆ぜる。タービンがはち切れ、タービンブレードがバラバラに砕け散る。行き場を無くした水蒸気が吹き出し、小さな爆発を起こす。竜骨が歪み、ひしゃげ、悲鳴を上げる。最早業火を吐き出していた煙突が吹き飛んだ。

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#rsbs日誌　地獄の竜巻の様に海水をかき混ぜていた二重反転スクリューが膨大なパワーに耐え切れずに分解する。軸受けのベアリングが燃え上がりバラバラに砕け散り用を成さない。そして…燃料が引火した拡張艤装が爆発し、推力を失う。バランスを崩した島風は１５０ノットの世界の中で転がった。

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#rsbs日誌　水切り石の様に島風はもんどり打ち、衝撃で壊れた艤装の部品をばら撒き、海面をゴロゴロと転がっていく。そしてゴールラインを切った。ライバルよりも速く、そして恐らく…レース史上最も悲惨な、ゴールラインの切り方をしながら。彼女はバラバラに砕け散った。四肢さえも。

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#rsbs日誌　『っ…ゴールラインを、切りました！島風、一着です！しかし…あれでは…！救命班！急いで下さい！』由良の悲痛な願いよりも先に、一筋の黒い風が島風へと向かっていった。血と重油と石炭の粉塵で汚れた海面を掻き分けて、重巡リ級は島風が転がっていった場所へと。誰よりも速く。

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#rsbs日誌　『死ぬな！おい！』四肢を失い、ぐったりと海面に浮かぶ島風を重巡リ級は持ち上げる。ゴーグルのレンズは粉々に砕け散り、紅いスカーフもボロボロになっていた。全身が強い打撲を受けたような酷い痣が転々としている。「こっちへ！」ゴールライン近くに控えていた夕張が呼びかける。

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#rsbs日誌　「修復ドッグ起動！救急修復液投入！」担架と棺桶を掛け合わせたような箱の中に島風が横たえられ、青緑色に淡く発光する液体が注がれる。重巡リ級はその様子をただじっと見つめていた。「お前さん、大丈夫かや？」不意に老獪な声がリ級を呼んだ。振り向けば胡散臭い少女が立っていた。

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#rsbs日誌　「…アナタ、提督か」『左様。島風の果たし状の代筆をしてやったのもわしじゃよ』流暢な深海棲艦語で提督は語りかける。『お前さんも出力を限界ギリギリまで高めたのであろう？タービンが異常加熱した音が響いておるぞ。冷却せんでよいのか』『此れ位は問題ない。直せばいいからね』

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#rsbs日誌　「でぇ…どくっ…」修復ドッグの中からくぐもった声が響く。唇の端から血を流しながら、島風が呟く。「ごべ…なざい…艤装…壊゛しぢゃっだ…艤装の゛…声…聞こえた…のに…私゛っ…どうじでも…勝゛ちたくで…！」「喋らないで！心肺装置にダメージが出てる！」夕張を提督は制した。

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#rsbs日誌　「…島風。お前はよくやったよ…おぬしにも聞こえたかや。エンジンの囁きが。声が」「う゛ん゛っ…！聞゛こえ゛だ…！だから…謝゛らないど…ひっぐ…」「もうよい。今は休め」そう語りかけた提督の横を重巡リ級が立つ。「シマカゼ。速かった。私、負ケダ」「…んぐ…リ゛級…」

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#rsbs日誌　「次、ワタシ、負けない。待つ。ズットダ」賞賛と宣戦布告の言葉を島風へと投げつけると、重巡リ級は敬礼をした。その様子を一同は静かに見守った。『また会おう。貴女の艦娘と艤装はとても凄かった。だが次は負けない』『ああ、待っておるよ』提督は微笑み頷いた。

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#rsbs日誌　「リ級゛！」修復ドッグの中から、声が上がる。『待゛っでるがら…！！』修復され、まだ骨だけの右腕が上げられ、サムズアップを掲げる。「アア、待ってて！シマカゼ！」バフン…バフンと不整脈がちに煙突が煙を上げて重巡リ級はその場を去っていった。そして…静かに拍手が沸き立つ。

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#rsbs日誌　拍手は静かに感染していった。その場に居た者。そして島で事を見守っていた居た者たちに。『…っ…勝者、島風！そして、気高き競争相手、重巡リ級！拍手を…二人に拍手を…！』島中を埋め尽くす、大量の拍手。賞賛。そして嗚咽が満ちた。こうして泡沫の夏の大騒ぎは終わりを迎える。

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#rsbs日誌　あの日の出来事は伝説となった。あの日、あの時を共有しあった者は言うだろう。「あれほど心沸き立ち、悲しくもあり、そして誰もが燃え上がったレースは無い」と…栄光の第一回海上レースのトロフィーは、今でもレズボス鎮守府のロビーに飾られている。ボロボロのピストンと共に。

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#rsbs日誌　あれ以来…〇〇諸島の西の孤島では年に２回、レースが開かれていた。二人が四人に、四人が八人と言う風に…増えていった。島風型だけではない。スピードに見せられた者たちが、嘗てレズボス鎮守府の島風と一人の重巡リ級が駆け抜けたコースを突っ走っている。何度も走り続けている。

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#rsbs日誌　そして…島風と重巡リ級の腐れ縁は続いていた。何度も何度も、抜いた抜き返したと繰り返し、笑っている。重巡リ級は思う。自分は何故、恨み辛みも無いのに深海棲艦になったのか。そして思った。私はただ、存分に走りたかっただけではないのかと。海を走り足りなかったのではないか。と

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#rsbs日誌　だが、満たされれば更なる高みを目指したくなる。そう…今はシマカゼと走りあう事が、彼女の望み。年に二度のスピードカーニバルを、彼女は何よりも愛していた。毎年、毎回増える仲間達に囲まれ、笑いあう。エンジンをぶっ壊しては呆れられる。それが只々幸せだった。

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#rsbs日誌　少女に栄光アレ…。スピードに慈悲アレ…。島風が艤装をばら撒いてしまったゴール地点には誰とも知れず、石碑が沈められていた。『offerings to the god of speed』…スピードの神に捧ぐと…そして清められたエンジンパーツが、寄り添う様に沈んでいた…

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#rsbs日誌　血生臭い世界の片隅で、少女達はただ純粋に、スピードに酔いしれていた。世界の行く末は判らないが…少女達が微笑み続ける限りは、平和であろう。

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#rsbs日誌　オハリ。

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

rsbs鎮守府の今回のエンディングテーマはこれだな！R4より「Ridge Racer -One More Win-」 youtu.be/lWec0qq1Ng8

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RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

訳詞はここ。 rr-ken.net/R4/onemorewin.…

RyoRi （VRVape屋さん） @ryorinovels

「リッジレーサーが戻ってくる この道は私を連れて行くためだけのもの その先は一人きりの道 そして走り続ける」 島風とリ級が互いに鼓舞し憧れ合っているような感覚を覚えた。