#完全ノープラン艦これ与太話 【ディープ・ナイト・レクイエム】 #3～#4

春魔解丼 @vespiking

『ヨー！人々！元気してたか？そうかァ！世の中クソかァ！いいぜ！世界は万物に平等だ！平等に好き勝手やりやがる！テメェらもわかッてンな！死にたくなけりゃカラテを鍛えな！ヨー！人々！だがな！あンまり調子に乗ってっと、割とイタイ目に遭うぜ！なァ早霜！』 #KZNPLN

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不夜城マイヅルの寂れたIRC端末が、一斉に攻撃的な毒電波レディオを撒き散らす。『フフフ、そうねぇ……あんまり、おイタしちゃダメよ……？私、ずっと見てるんだから……』「イェフー！やったぜ！早霜様の声だ！」倒産企業の廃ビルで、深海棲艦が手を叩き囃し立てる。 #KZNPLN

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『今日は、悪いなクソ共！ゲストはいねェ！それより、もっとロックなレディオが待ってるぜ！』『……マイヅルで今、とってもタフな鬼ごっこが始まったのよ……。ウフフ、カラテとカラテのぶつかり合い……果たして、どっちが生き残るのかしら？私、興奮してきちゃうわ』 #KZNPLN

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「ヒーッ！早霜様が！ヒーッ！」レディオを聞いていた雷巡は早霜の官能的な声を聞き、同じく興奮して達した。「オマエ、ほんと早霜様に入れこんでるな」隣に座る戦艦が雷巡をからかう。「ウルサイ！ちゃんと録音してるか！？」「してねえ」「何ィーッ！殺す！」雷巡が戦艦に飛び掛る！ #KZNPLN

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「イヤーッ！」「アバーッ！」カラテ一閃！戦艦タ級の放った迎撃の拳が雷巡の仮面を叩き割り、そのまま空中二回転半して床に突き刺さった。それを見ていた重巡がゲラゲラと笑う。サツバツ！なんたる日常的暴力光景か！だがこれも、不夜城マイヅルではチャメシ・インシデントなのだ。 #KZNPLN

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『まァだが待て早霜。これは鬼ごっこだぜ？鬼の様子を実況したら、つまンねぇだろ』『ウフフ、それもそうね。じゃあ……ネエ長波。何か曲でもかけましょうよ。もう少し楽しみましょう？』『グッドアイデアだ！』毒電波レディオはけたたましく続く。 #KZNPLN

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(((ファック！なんだこのやかましいレディオは！)))町中から響く長波の声を四方八方から聞かされ、アフターマンは半ば恐慌状態にあった。(((鬼ごっこだと？何を……)))「レェーレェーレェー！近いンだろォー！出てこいよサンシタァ！」暗い廃ビルにジゴクめいた声が響く。 #KZNPLN

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『よし、お前らタナカ・アドミラルは知ってるな？最高のDJだ！いいかお前ら！タナカ・アドミラルはアタシらに、このクソみてェな掃き溜めで生き残るメソッドを教えてくれた。カラテってのは、ケンカの強さか？ノー！違うな！最初のナンバーはコイツだ！』攻撃的なロックが溢れ出る。 #KZNPLN

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激しいミュージックにかき消され、2隻のニンジャは互いの位置情報を少しばかり見失う。だが、嗅覚は音で誤魔化せない。互いのニンジャ嗅覚は、じわじわと断片的な位置情報を共有させた。狩人と獲物は、既に同じ檻の中だ。 #KZNPLN

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アフターマンはニンジャ感覚を研ぎ澄ます。敵は恐らく階下のホール。ここはUNIXサーバが立ち並ぶ、迷宮めいたフロアだ。彼はフロアの中心付近のサーバルームへ向かった。階下のホールはだだ広く、階上への階段は外周部分にある。中央付近で、この迷宮構造を利用するのだ。 #KZNPLN

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ボコン！極めて不吉な破壊音が、レディオのナンバーを一瞬途切れさせた。アフターマンは反射的に身をかがめ、UNIXデスクの下に潜り込んだ。それが正解だった。ナムサン……外れた窓枠と廊下ひとつを隔てた隣室に、龍めいた怪物の頭部が首をもたげている。レクイエムの尻尾だ。 #KZNPLN

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床を突き破って生え出した邪龍は、ギョロギョロと周囲を見渡す。アフターマンはちょうど、窓枠とデスクの死角に入っている。ズルズルと龍の首が伸びる摩擦音を聞く度、アフターマンの寿命が1年ずつ縮んでいく。「アレェー？おかしーな。中央にいると思ったンだが」 #KZNPLN

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当然アフターマンからも、邪龍は見え……否！ナムサン！見えた！(((あれは……ブッダファック！鏡！)))反対側のデスクに置かれた小さな鏡が、確かに邪龍の一部を映している……。こちらの姿も映っているだろう。動くべきか？否……今動けば確実に気配を察知され、死ぬ。 #KZNPLN

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邪龍の首が旋回する。龍の背を映していた鏡が、首筋を、横顔を映し、そして……消えた。360度全方位を一望した邪龍は、ゆっくりと階下へ沈みこんだ。束の間の安息がアフターマンを包み込んだ。「レエエエエエエーーーッ！」ボコン！鏡の真下から、巨大な邪龍の頭が突き出した！ #KZNPLN

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邪龍は困惑する。「……オヤ。確かにこのあたりに」邪龍の首がぐるりと旋回する。その首の真下、すぐ隣、デスク下の書類棚を隔てて、アフターマンが息を殺す。彼はニンジャ第六感で危険を察知、対岸のデスクへ転がり込んでいたのだ。書類棚の左側へ。右へ転がっていれば、死んでいた。 #KZNPLN

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（ #完全ノープラン艦これ与太話 【ディープ・ナイト・レクイエム】#4後半） #KZNPLN

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レクイエムの殺気が、チリチリとニューロンを焦がす。デスクを突き破り、首をもたげる邪龍の視界に、アフターマンはまだ入っていない。どうやら戦艦レ級の尾には嗅覚はないらしく、グルグルと唸りながら視野を回転させているのがわかる。聴覚は、まだ無いと判断するのは危険だ。 #KZNPLN

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アフターマンは最早、己がニンジャである事など忘れ、かつて食物連鎖の最下層にいた頃の思考に戻っていた。屈辱感はない。生命維持の欲求が、あらゆる感情を食い潰していた。彼はひたすら背景に溶け込むよう努めた。生態系弱者のミーミーに刻まれた知恵だ。 #KZNPLN

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アフターマンの真横を、白く野太い龍の腹が横切った。心拍が停止するほどの緊張感のなか、腹はずるずると蠢き、パラパラと瓦礫の欠片を床に落とす。アフターマンは意を決し、そのひとつを足で丁寧に掴み、破片の落下音より小さな音で、空中で何にも触れぬよう、対岸へ投げた。 #KZNPLN

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破片は対岸のデスク上にあるペン差しにぶつかり、破片の落下音よりもやや大きな音を立てた。邪龍は意に介さず、逆方向へと胴を伸ばしている。レディオの曲がかき消したのだ。アフターマンは確信した。そして、賭けに出た。(((今だ！イヤーッ！))) #KZNPLN

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『ヨー、聞け！不夜城のカス共！いいか、カラテを鍛えろ！天使の軍勢は、お前らの全てを奪いに来るぞ！弱い奴は全てを差し出せ！強い奴はカラテで抗え！ケンカと口だけ強い天使が、白いキモノで殺しに来るぞ！ヨー、お前はどっちに回る！？』アフターマンは身をかがめ、駆け出した！ #KZNPLN

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レディオとノイズの飛び交う中で、アフターマンはニンジャ隠密性をフル活用し、ペン差しの落ちる音より小さな足音で駆ける。デスク島の曲がり角まで、ほんの僅かな距離が、数百海里にすら感じられた。『ヨー！慎ましやかに生きるクソ共よ！見定めろ！天使の正体を！それがカラテだ！』 #KZNPLN

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コロコロと転がるペンが、コトリと落ちた。邪龍の白い背に。振り向かずともわかる程の殺気を漏らし、邪龍がぐるりと振り向いた！コンマ1秒前、アフターマンはデスク島の陰にすべり込み、死角！だがアフターマンは安堵せず、電撃的速度で側転、島を挟んだ反対側へ転がり込む！ #KZNPLN