【ただ一度の永遠・番外編】ヒーロー

弱虫ペダル二次創作 荒北逆行話・番外編 東堂VS宮本話 その2
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ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「僕、バイクがすごく好きでね。でもって、工業デザインやりたくてさ。それで、呉南選んだんだけど、入ったら、柄が悪いの何のって……チンピラ養成学校に来たかと思ったよ」 「それが何で自転車?」 「親がバイクだけは絶対ダメだって言ってね」

2014-08-17 00:42:09
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 悔しかったから、店中で一番高い自転車さして、これ買ってくれるならバイク諦めるって言ったら、ぽーんとかってくれちゃったのさ。 「よっぽどバイクは危険視されてたんっすね」 「そうだな。まあ、それがきっかけで僕は自転車乗りになったんだよ」

2014-08-17 00:46:34
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「IHとか出てたんですか?」 「三年の時に一回だけね。お前は三年連続出場?」 「まさか。ウチは一年生レギュラーは伝統的にいないっす。ただ走るのが早いだけじゃダメなんです。そいつがハコガクってチームを支えるのにふさわしいかってのも大事だから」

2014-08-17 00:53:04
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「そこまでわかってて、どうしておまえは今のおまえなのかな」 「はい?」 「……わかってんだろ、エース候補。いつになったらおまえは候補の二文字がとれるんだよ」 宮本の表情は途端に苦虫を潰したようなものになる。 最近、調子が良く、成績も良い。

2014-08-17 08:50:24
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon だが、それだけではなれないのがエースだ。 (成績が良い、くらいじゃダメだ) 圧倒的に……例えば、出れば必ず勝つというくらいの強さであれば、何をやってても文句は言われない。 どんな生意気な口をきいたとしても誰も何も言えない。 (でも……)

2014-08-17 08:52:31
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 今程度の成績ではダメなのだ。 (中途半端すぎる) 宮本は、自分の性格が年上受け悪いことがわかっている。 ごくまれに……川田のように寛大な心の持ち主であれば、おもしろがって構ってくれるが、だいたいの人間は『生意気』だと判断して、それ以上を見ない。

2014-08-17 08:54:26
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon (でも、それでいい) 自分を嫌っている人間を好きになるなんて器用な芸当は宮本にはできない。そんなことに労力を費やすより、もっと大事なことはたくさんある。 (別に、オレだって何も考えてないわけじゃないぞ) 宮本は宮本なりにいろいろ考えているのだ。

2014-08-17 08:56:56
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 年上に多少嫌われようとも、同年輩や年下には好かれる方だし、後輩にだってものすごく慕われてきたのだから、充分おつりがくるはずだ。 (……と、東堂は、例外だぞ) 大変綺麗な顔の青年というよりは少年、を思い出して、宮本は小さな溜息をついた。

2014-08-17 09:01:42
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「そういや、今年は広島だけどさ、来年は神奈川だってね、IH」 「ああ、そうっすね。地元開催で、たぶん、地元コースになるから、来年の優勝だけは落せないでしょうね」 「イイ選手いるの?」 「さあ、卒業してから全然顔だしてねえから……」 「ふうん」

2014-08-17 10:55:01
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 笹屋がにやりと笑う。 「なのに、カワさんに言われただけで広島くんだりまで来ちゃうんだ」 「ち、ちがうっす。何か、その、荒北達の話の流れで、母校に顔出せばそれが解決するみたいな口ぶりだったから」 わたわたと理由もないのにあせる宮本を笹屋はさらに笑う

2014-08-17 10:57:12
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「ふうん。カワさんには素直だもんねー」 「んなことないっす」 「まあ、おまえがひねくれてて、不器用で口ベタなのはわかってんけどよ、おまえのやっくんへの執着はマジでドン引きだから。気をつけなさい」 「うっす」 見上げた空は青く。日差しは強い。

2014-08-17 10:58:54
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon (今日も暑い一日になる) ハコガくは伝統的に余裕を持った前日入りをしている。 だいたいこの前日にOBたちが激励にやってくる。 当日の朝などではやはり邪魔になるだろうという気遣いがあるからだ。 スタート地点のテントの設営も前日から許可されている。

2014-08-17 11:02:56
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「平坦スタートで市街地スタートか」 「難しいコースなんっすか?」 「難しいわけじゃないけど、このコースだと初日は平坦多いけど、海沿いだからさ。潮風きついよ。最初は気持ちいいとか思うけど、そのうちべとついてくるし、高校生だには意外な難所かも」

2014-08-17 11:11:32
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「あー、高校生っすもんね」 「でもまあ、いまどきの高校生は侮れないけど。先月の湾岸クリテのユースの部で優勝した子のタイムに、野瀬が負けたっていうから」 「野瀬は遅いっすよ。あいつは敵じゃない」 「おまえの区別は敵か味方しかないのかよ」 「まさか」

2014-08-17 11:16:23
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「……他に何があるのか言ってみ」 宮本は自身たっぷりなドヤ顔で言い切る。 「敵と味方とライバル!」 「それ、敵と味方とやっくんかよ!やめろっ、おまえ、絶対にいつかぱちに刺されるから!あいつはやるぞ。しかも完全犯罪だ!」 「笹屋さん……」

2014-08-17 11:19:02
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「そんな目で見んな。僕の方が絶対にあの二人の事はわかってるから。あと、もう一つ残念なお知らせをしてやる。やっくんは、おまえのこと何とも思ってないから。いいか、おまえなんか眼中にないから」 「それ、みんなに言われるんっすけど」 「事実だよ」

2014-08-17 11:31:11
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「いや、意識されてねえことはいいんっす。いや、よかないけど。ようは、オレがもっと強くなればいいってことでしょ」 「強くねぇ……っていうか、おまえとやっくんは根本的に違うんだよな」 「???」 「おまえも負けず嫌いではあるんだけどさ……種類が違う」

2014-08-17 11:32:37
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「どっちがどうってことは僕には言えないけど、その違いが、おまえとやっくんの勝敗を分けてると思うんだよな。まあ、スプリンターのおまえが、オールラウンダーのやっくんと勝負すんのがそもそもちょっと難しいんだけど」 「まともに勝負したことないし!」

2014-08-17 11:36:11
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「できねえっての!だいたい、やっくんは、クリテとかトラックは走らねぇ。なのに、どっちかっていうとおまえはそっちオンリーだ。まともな勝負ができるステージなんてねえよ。やっくんに向きじゃないもん走らせて勝っても、無意味だろ」 「当たり前っすよ」

2014-08-17 11:38:54
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon でも、と宮本は続ける。 「あいつは、群馬の工場ん時……覚えてます?二年前くらいの夏の終わり……いや、あれ、秋でしたっけ?あれ、クリテ形式だったけど、すげえ早かったじゃないっすか」 「……あれは、やっくんの作戦勝ち。あの子は勝負ってもんを知ってる」

2014-08-17 11:44:05
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「?????」 「身体あったまってきてからのアタックじゃあ、絶対にかなわないからってんで、スタート早々に猛アタックかけたわけだ」 素人っぽいとか思うかもしれないけれど、結構皆混乱して自滅したろ。 「僕らはコース下見ついでに身体あっためたし」

2014-08-17 11:45:55
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「クリテはじめてって話でしたよね?」 「それどころかレース自体三回目とかって話だった。……けどな、あれは天性のセンスってやつなんだろ。コースどり……ルートの一瞬の判断、ポジションのとりかた……アタックをかけるタイミング……何もかもが絶妙だった」

2014-08-17 11:49:37
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 笹屋は薄く笑う。 「彼にひかれて走ることがどんなに素晴らしいことだったか、たぶん、語り合えるのはぱちくんだけだろうね」 「………」 「僕は、あのレースの後、ヤマさんに即座に頼んだよ。学生だっていうのなら、卒業したらうちのチームにってさ」

2014-08-17 11:56:15
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「そしたら?」 「笑われた。バーカって」 「なんで?」 「あいつをそんな狭い世界に押し込むなよってね。ああ、確かにって僕は思ったよ」 やっくんやぱちくんは、もっと広いところに行くんだろうなって思うんだよね。 「……オレも、諦めてねえっすよ」

2014-08-17 12:00:07
ひな@復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「おまえは、どうだろうね……けど、僕はって思ったときに、僕は、明確なビジョンが思い浮かばなかったんだよ」 海外で活躍する……そんな夢は見たことあるけれど、でも、それよりも僕は今の竹下のチームで勝つことを考えてしまうんだよね。 柔らかな表情だった。

2014-08-17 12:03:00