四大聖戦:決戦フェイズ【魔王住みし王城】

──魔王  赫焉 @IgnisSatan  颶風 @DeathWaltz_doll  徒波 @fileWoz 続きを読む
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【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

内側から、扉は蹴破られた。自分の片腕を抱えた姿はだいぶマヌケだろうなと思いつつ、軽く背筋を伸ばしてしゃんとする。 「っし、帰ってきたァ!」  一番乗りかねェ、とどこかワクワクした様子で呟きながら、城内へ戻る。 「こっから一番近ェのはァ……あだっちゃんトコか」

2014-10-03 18:15:06
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

首を鳴らし、片腕を回す。どこか急ぎ足で徒波の潜った扉がある彼の自室へと勇み足で進む。

2014-10-03 18:16:40
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

「黒」という色は、全ての色を混ぜ合わせる事によって出来るといいます。冬の空の様に美しい青も、炎の様に鮮やかに燃ゆる赤も、全ての色は混ざり合い、汚れ、最後には黒へと辿りつくのです。 つまり簡単に言ってしまえば、「黒」とは全てのものがその終焉に辿りつく、ゴミ捨て場の様なものなのです。

2014-10-03 19:05:22
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

ずる、ずる。 この化け物の「黒」は、そういう黒でした。 光焔の勇者との戦いの後、酷く傷ついた化け物はやっとの思いで扉へと辿り着き、愛しい城へと体を引きずりました。 彼の、人間の、その力と思いの強さを甘く見た報いでしょうか、壊れきったその身体ではまともに飛ぶことすらままなりません。

2014-10-03 19:06:07
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

ガラクタとなった身体は、ただでさえ醜い姿をより一層みすぼらしく見せました。 「かくすもの…探さなきゃ…」 こんな姿では、きっと受け入れては貰えないでしょう。赫焉から預かった外套もこの姿で果たすわけにはいきません。 醜い影の様な身体を引きずって、化け物はこっそりと移動を始めました。

2014-10-03 19:06:38
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「ぐーちゃん?」  それは徒波の悔し顔を見てやろうと歩みを進めていた赫焉の視線の先。いろいろなものがないまぜになった黒。 「おい、ぐーちゃんカラダどうした、壊されちまったか?」  あだっちゃんは後回しだ、今は目の前のぐーちゃんが先だ。

2014-10-03 19:34:56
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「ケガは深ェのか? 傷は? 大丈夫かァ?」  颶風のその姿を見てなお、それを少女人形だと信じて疑わず、赫焉は声を投げ掛ける。自分だって片腕が無いにも関わらず。  態度は何時もと変わることなく、歩み寄れば普段のように触れ、撫でようと手が伸ばされた。

2014-10-03 19:38:35
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

恨みつらみも偽善も悪も、世の忌むべきもの全部を混ぜたような黒。それを同じく黒い身体から垂れ流しながら、化け物は進みます。 けれど途中、とても聞きなれた声がどこにあるのかもわからない耳に入り化け物はとても焦りました。 こんな不快の掃き溜めの様な身体を見られてはきっと嫌われてしまう。

2014-10-03 20:07:52
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

大好きな声は、聞こえないふり。 化け物は声から遠ざかろうと身体を必至に動かしますが、焼け爛れたその塊はとても遅く、足音は大した間も無く追いついてしまいました。 「「触らないで!」」 いつも頭を撫でてくれた手が伸ばされる感覚。優しいその手に触らせてはいけないのだと、声をあげました。

2014-10-03 20:09:43
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

「…触ったら、きたないから」 彼女の手を牽制するように、黒の塊から無数の手の様なものが伸びます。 あれ程軽んじていた人間にいい様にしてやられてしまった化け物を、赫焉の魔王はどう思うでしょう。自ら答えを問うには、化け物はあまりにも臆病でした。

2014-10-03 20:10:28
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「あ?」  牽制するかのように伸ばされた、黒い手のような何か。あーだとか、うーだとか言葉にならない呻きを幾度かあげたのち、有無を言わさずにその手を掴み取る。 「あのなぁ、汚いもなにもあるかよ」  ぐーちゃんはぐーちゃんだろ。 「どんなぐーちゃんでも好きだぜって、」

2014-10-03 20:15:30
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「アタシ、言ったよなァ?」  にまりと笑う笑みは赫焉が何時も浮かべる悪戯に成功した悪ガキのようなそれ。 「それよりもケガだケガ。アタシも腕一本持っていかれちまってよォ、女神も意外と本気だったのかね」  脇に抱えたままだった腕は颶風の手を無理矢理取ろうとした結果、床に転がっている。

2014-10-03 20:18:17
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「いや、本気だったのはニンゲンの方かァ」  口の端から漏れでた焔を飲み込むように喉を鳴らして、赫焉は笑う。 「帰って来れたようで何よりだぜェ」 「おかえり、ぐーちゃん」  満面の笑みが向けられる。にかり、という効果音が聞こえてきそうな。

2014-10-03 20:21:38
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

歪な影、歪んだ手。存在として不出来なそれを握ってくれたその手を、化け物はとても暖かく感じました。 どんな自分でも好きだと、言ってくれたその言葉はきっと嘘になってしまう。そんな風に思っていたのに。

2014-10-03 20:51:10
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

どうしてでしょうか。化け物にもその理由はわからないのですが、冷たい陶器越しに触れた時よりも今の方がずっと、彼女の手は暖かく感じるのです。 「…赫焉はほんと、魔王っぽくないね。……優しすぎるもの」 信じていないのは、彼女の優しさを嘘と決めつけていたのは、化け物の方でした。

2014-10-03 20:51:33
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

ぽろり、ぽろり、雫が零れます。真っ黒だらけの化け物の中で唯一、その雫だけは綺麗な水晶の色をしていました。 「…ただいま、赫焉」

2014-10-03 20:52:03
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「ええー? そうかァ? 角とか魔王っぽくねェ!?」  どこか照れ臭そうに笑いをこぼしつつ、赫焉は胸を張る。 「おら、泣くな泣くな!」  落ちる雫を拭うように手を伸ばしてまた笑う。 「こっからだとあだっちゃんがちけェかな……行こうぜ、ぐーちゃん」  すんっと鼻を慣らす。

2014-10-03 20:57:40
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「きな臭ェんだよなァ……」  その呟きは半ば無意識。窓の向こうへと一瞬、視線が泳ぎまた颶風へと戻る。 「一番乗りじゃなくて残念でしたァ、ってしたら次はやっちゃん迎えに行かねェとな」  にまりと笑って一度離した黒い手を握り込む。颶風が許せば、そのままゆっくり歩みを進めようとする。

2014-10-03 20:59:55
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「……あ、やべ、腕忘れてた。すげェ邪魔だなこれ。いっそ灰にすっかァ?」 どこまでも格好がつかない。自分の腕を前にどうしようと悩む姿はなかなかに、間抜けであった。

2014-10-03 21:01:00
華夏の勇者 @KaKa_Mater

扉をくぐるとそこは、朽ちかけた神殿ではなかった。まず、臭いが違った。ここには、何かが生きている臭いがしている。世界から失われたはずの精霊の加護が、この場には残っている。 「……すべて逝ったか。であれば、確かに休息の間はいらないな」 何も言われずとも、“マテル”は理解している。

2014-10-03 21:07:19
華夏の勇者 @KaKa_Mater

かつて人が政を行っていた王城。そのかつての様子を、狼であるマテルは知らない。天井の高い通路、硬く滑らかな石で均された床の上を、大きな爪のある足が踏みしめて、進んでいく。……音もなく。 狩りに臨むように静かで慎重、それでいて素早い足取りで、狼が少しずつ、魔王の居所へと近付いてゆく。

2014-10-03 21:07:27
徒波の魔王 @fileWoz

倒れ込んだ瞬間、初めからそこに存在しなかったと思わせるくらい自然に扉は消える。 その前に立ち上がりフラフラと壁に寄りかかる徒波。廊下に倒れ込んだせいで傷口を塞いでいた泡が割れているが、そこから血は流れていない。 「あぁ……まぁ、まともな身体じゃあ、ねえもんな」

2014-10-03 21:25:54
徒波の魔王 @fileWoz

糸を切られたように、ガクリと膝を付く。傷の割りには元気なようで微かに文句の意味合いを含んだ呻き声をあげる。 「だぁくそ、あの野郎いてえじゃねえか」 立ち上がり、廊下に飛び散る赤を睨み付ける。先ほど割れた泡だ。 徒波が手をかざすと、またそれは集まり赤い泡になる。

2014-10-03 21:26:03
徒波の魔王 @fileWoz

風船のように浮かぶそれを口元まで運ぶと、飲み込んだ。 「あぁ……消えた血は幾らか戻ったか……?あくそいてぇ!かっ……あぁ」 血の混じる咳。戻した血を戻さまいと手で塞ぎ再び飲み込む。 「まずは肉だ肉……」 先ほどよりは幾分元気な引きずり方で廊下を進む。

2014-10-03 21:26:08
徒波の魔王 @fileWoz

しかしその目は何処か遠くに置かれており、無事な耳の方を壁際にし歩いているので、聴覚的情報にも気付いていない。 その状態でも、前ほど文句を漏らさず廊下を進む。ただ不規則なリズムで、ブーツの音が通路に響く。

2014-10-03 21:26:21
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