四大聖戦:決戦フェイズ【魔王住みし王城】

──魔王  赫焉 @IgnisSatan  颶風 @DeathWaltz_doll  徒波 @fileWoz 続きを読む
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颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

「…腕、関節球体なら簡単にはまるのにね」 落ちてしまった赫焉の腕を、颶風は悲しそうに見つめます。けれどもこんなにもあったかい赫焔の魔王は勿論いきものですから、人形の様になんてなるはずもありません。 颶風は赫焉の魔王の暖かい手が大好きだったので、とても残念でした。

2014-10-03 21:53:39
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

「…そういえば、私、赫焉にこれを返さなくてはいけないわ」 うでは治してあげられないけれど、と颶風が取り出したそれは、戦いの前に赫焉から預かった大切な約束でした。 「……早く、迎えにいってあげないとだね。徒波も、八衢も」 きっと、2人とも待ちくたびれているだろうから。

2014-10-03 21:54:17
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「んあ? ああ、いーよいーよ」  笑みを向けて、片手をひらりとさせるかわりに軽く首を振った。 「それ、ぐーちゃんにやるよ」  あのかわいいドレスの代わりにゃならねーけど、と肩を竦める。 「腕はしゃーねェ。まァ精々アタシの灰として役に立たせる、さッ!」  大きな一声。

2014-10-04 05:00:51
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「っとォ、デケェ声悪ィ」  声を起点として発動する赫焉のカース。腕に張りついた灰が伝播し、床に落とされたままだった腕が燃える。軽く鼻を鳴らして、 「……ンあ?」  振り返る。不規則に床を叩く音。聞き覚えのある音。 「よォ、あだっちゃ……徒波、お前そのケガ」

2014-10-04 05:03:32
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「オイオイ、大丈夫かお前、生きてっかァ!?」  さしもの赫焉もこれにちゃちゃを入れる気にはならなかったらしい。 「ぐーちゃんちょっとここに……や、ゆっくりでいいから来い」  きな臭ェ、ともう一度静かに繰り返して、徒波の方を向き直る。 「アタシの勘は、よくあたンだ」

2014-10-04 05:06:38
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「オイ、あだっちゃん! 今そっち行くから待ってろよ!」  出来るだけ徒波を刺激せぬように、と控えめの呼び声。 「無理して動くンじゃねーぞ!?」

2014-10-04 05:08:02
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

「…臭い?」 外套をぎゅっと抱きしめて、颶風は耳をそば立てます。 廊下を歩く音、けれどこれはおそらく徒波です。もうひとつ、もうひとつ、何かの音はしないかと聴覚を研ぎ澄ませてみても、何一つとして颶風の耳をうつものはありませんでした。 「…なにも、ない……けど、静かすぎるわ」

2014-10-04 10:36:25
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

きな臭い。そう呟いた彼女の意図が少しわかった気がして。 赫焉の後を追って、ずるり、ずるりと身体を引きずります。 この城にもし何か異変が起こっているのなら、自分が守らなければ。心に強く、そう決めて。

2014-10-04 10:36:40
徒波の魔王 @fileWoz

ざぁ、と水の中で聞いたような音が徒波の耳に届く。切り取られた耳からの情報だと気付いたのか、顔を上げ、此方に必死に声をかける女性を目にする。 「あぁ、かくえん、かぁ」 大きなため息をつき、尻餅を着く。安心して力が抜けたのだろう、妙に間延びした声を上げながらそのまま寝転ぶ。

2014-10-04 10:37:52
華夏の勇者 @KaKa_Mater

私は静かに歩みを進めていく。ともに狩りに臨む群れはない。とうに失われたそれを想う。嘆く心は秘めた。枯れた森を想う。郷愁の念は既に忘れた。先に還った娘を想う。悼む気持ちは押し殺した。娘を死地へと追い遣った、人と女神のことを想う。……この怒りと憎しみは、決して消えずに燻り続ける。

2014-10-04 12:50:43
華夏の勇者 @KaKa_Mater

勇者が魔王を討ち滅ぼすことを望んでいるのは、娘を除けばあとはすべて、私の憎悪する者達だ。娘はその優しい心を、私は娘を愛する心を、人と女神に利用されているのだ。この怒りは決して消えない。この怒りのままに、抗うこともできやしない。狩りは無心で行うものだ。激情は牙を鈍らせる。それでも。

2014-10-04 12:50:52
華夏の勇者 @KaKa_Mater

血の臭いがする。死の臭いがする。炎の烟る臭いがする。人の声がする。靴が床を叩く音がする。何かが這いずる音がする。布が擦れる音がする。私の鼻と耳は確かに、それを捉えている。足は確かに、そこへと近付いていく。近付いていく。姿勢が低くなる。近付いていく。歩みが速くなる。近付いていく。

2014-10-04 12:50:59
華夏の勇者 @KaKa_Mater

――通路の先に、横たわる男の姿を、見た。 私はそれに向かって、床を蹴った。その息の根を止めるために、走り出した。 殺さねばならない。喰らわねばならない。 カリカリと爪が床石を叩く。人の耳がその音を確かめる頃には、私は獲物に肉薄している。開いた顎に並ぶ牙が、男の喉に狙いを定めて。

2014-10-04 12:53:37
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「ああ、きな臭ェ」  それは最早、野生の勘と言うべきそれ。 「とりあえずあだっちゃんを回収し、」  声と同時。身体が動くのは、喉ががなったのは最早反射だった。 「ッそいつに触ンじゃねェッ!!!」  空を漂う灰が瞬間的に爆ぜる。灰から灰へ焔は伝播する。

2014-10-04 12:56:29
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「オイオイオイオイ、この城に犬を連れこんだ憶えはねェぞォ!」  燃える。敷かれた高級そうな絨毯に焔は移り、灰となり。 「颶風! 下がってろ!」  赫焉のカースは広範囲に渡って攻撃出来るものだが唯一、小回りが利かないのが欠点だ。巻き込まざるを得ない。 「徒波ィ! 鞭打って悪ィな、」

2014-10-04 13:01:51
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「堪、えろ、よォッ……!!」  汗を拭うように首の下を擦り、軽く頭を振る。赫焉は強気に振る舞っていただけだ、疲労が無いわけではない。 「クソッ、なんだあの犬! マジでどっから入ってきやがった」

2014-10-04 13:04:31
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

「っ、おおかみ…?」 赫焉の声に、動きの鈍い身体を何とか動かしました。 痛みを感じるような身体ではありませんが、無理な動きをすれば負荷がかかった身体からは黒いものが飛び散ります。 けれどもそんな事よりも、そんな事よりも。颶風は片方だけになった瞳に映る、狼の姿に意識を奪われました。

2014-10-04 14:04:09
颶風の魔王 @DeathWaltz_doll

なんで。なんで。なんで。なんで。 颶風は混乱します。 なんせ侵入者なんて、風達が拾ってきてくれた音のお陰で今まで一人たりとも許した事はないのです。 「「女神の仕業か」」 ごぽり、黒色を吐き出しながら、恨みがましい声で颶風はその狼を睨みつけました。

2014-10-04 14:04:40
徒波の魔王 @fileWoz

「だぁぁぁくそっ、なんだってんだよ!」 怒鳴り声、焼ける空気の匂い、背中を転がる炎の熱、それらによりやっと徒波は自身が襲われそうになっており、この熱が己を守ったことに気付く。 熱が、回る。傷が焼ける。それに急かされるように、立ち上がる。敵の姿も捉えぬまま、熱と脅威から距離を取る。

2014-10-04 14:49:38
徒波の魔王 @fileWoz

「おぉいかくぇぇん、普段ならこの直火焼きに言いたいことがあったろうがなぁ、今日だけは俺様が特別に許してやる」 なんとか、熱の操り主のとこまで足を引きずる。自分より幾らか大きい彼女に並ぶと、ほうと一息つく。 「ありゃ勇者か」 呟き、ふと視線が黒を捉える。

2014-10-04 14:49:59
徒波の魔王 @fileWoz

「そこにいんのは……颶風か、おめぇも中々洒落たことになってんじゃねえか」 およそ前とは似ても似つかぬその姿に、呼び掛ける。 「ま、俺様の此れもなかなかキマッてんだろ!」 トントン、と意味を為さぬ耳を叩く。男としては、励ましているつもりらしい。 「で、どうするよ赫焉」

2014-10-04 14:51:11
華夏の勇者 @KaKa_Mater

牙が届くより早く、焔に見舞われた。襲い来る熱にほんの僅か気を取られた隙に、獲物は跳ね跳ぶようにして逃げ去った。 熱に灼かれる。豊かな被毛が業火を纏う。 死は、一度経験している。それは穏やかなものだった。当代のマテルが守護するファミリアを見守りながら、私は安らかに深い眠りについた。

2014-10-04 15:14:11
華夏の勇者 @KaKa_Mater

女神の声で呼び覚まされてみれば、何だ、これは。 「……オオオオオオォォォォォォ――!」 灼かれながら咆哮する。慟哭する。焔の中で、私は哭いている。たとえ牙が鈍るとしても。熱に触れて、燻る怒りが燃え上がる。それはあるいは、同じものを憎むがゆえか。己を蝕む熱に心地よささえ感じるのは。

2014-10-04 15:14:29
華夏の勇者 @KaKa_Mater

森を枯らした魔王は許し難い。けれどそれ以上に、人と女神を許せない。 【萌芽】する。燃える狼の躯(から)を破って、森(シルウィス)の緑が溢れだす。この緑は、フィリアのように甘くはない。蔓草が伸びる。撚り合わさって【崩牙】となる。敵を絡めて絞め上げ、穿ち喰らおうと、芽を伸ばす。

2014-10-04 15:14:44
華夏の勇者 @KaKa_Mater

悲嘆、悔恨、憎悪、憤怒。私は吼える。どうして人ならざる私が、人に成れなかった娘が、人と、それらが信ずる女神に使われねばならないのか。私は駆ける。【萌芽】し壊れはじめた躯で、焔の奥へと進む。血の匂いのする男と、娘に似た色を持つ女と、形も持たない黒色を、緑とともに喰らいにゆく。

2014-10-04 15:15:02