"Towards a theory of development"まとめ
- YoshinariYsd
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例えばHIVウイルスの感染において、宿主細胞のヌクレオチド(これが「足場」に相当する)がウイルスのRNA(これが発生する系)と一時的な混成物を形成することで逆転写の進行を「助ける」ように。
2014-10-19 16:35:53先述のように、新たな発生概念を採用することは発生の理論の形成の一助になりえ、ひいてはそれを組み込んだ進化理論の形成を助けるかも知れない。また、典型的な「生命」とは異なる物質的基盤や組織化レベルからなる対象の発生と進化をも扱うことができるようになる。
2014-10-19 16:49:08我ながら支離滅裂のひどいまとめだが、分量的にも内容的にもきちんとまとめようとすると大変だし、まだちゃんと理解できていない部分もあるので今はここまで。
2014-10-19 16:49:41こういった新たな定義の有効性は、一つにはそれを採用することがどれだけ実際の研究の進展を助けるのかによって測られると思うので、機会があれば発生生物学者やevo-devo研究者の前で詳しく紹介して率直な反応を見てみたいところ。
2014-10-19 16:58:21それはそれとして、意義とか評価とか抜きにしても、科学的概念の再定式化によって別々の現象を一つの枠組みの中で見られるようにしてくれそうなこの手の研究は個人的には大好きである。
2014-10-19 17:07:19"General theories of evolution and inheritance, but not development?" (Arthur)読了。Towards a theory of developmentの第9章。
2014-10-19 21:57:06発生の理論はそもそも可能なのか、という問いを軸にした論文。著者は確立された理論の事例として進化理論を分析した後、発生の研究における過去の代表的な理論を紹介する。その後、現代そして未来におけるありうる理論探求の方向性として、因果構造のネットワークモデルに言及する。
2014-10-19 22:13:55そして、新たな理論の形成のためにはそれと対立する理論が存在することが重要ではないか、という類推のもと、現代におけるそのような対立する理論の候補をいくつか挙げる。最もページを割いて分析しているのは先述の因果ネットワークモデルである。
2014-10-19 22:39:24例えば、因果ネットワークには多数のノードを結ぶ関係として分岐・収束・フィードバックなどがある。だがその全てが発生において働くことは分かっているので、仮に因果ネットワークに関する発生の一般理論がありうるとしてもそれは各々の関係の相対的重要性について述べる程度のものになるだろう。
2014-10-19 22:45:35最終的に著者は、あらゆる発生に当てはまる一つの理論が存在することに対する悲観的見解を述べている。
2014-10-19 22:49:14とまぁ要約するとこんな感じだが、まず突っ込みたいのは、全体的な議論の展開から外れた結論が最後に提示されているように思われること。先述のように最後に彼は発生の理論の存在について悲観的見解を述べるのだが、その根拠になっている分析はconclusionの直前の半ページほどのみ。
2014-10-19 23:01:37しかもその分析は因果ネットワークモデルに関してなされたものに過ぎないため、それとは異なる方向からの理論形成に関する悲観論の根拠にはならないはず。「因果ネットワークベースの発生理論の構築は厳しそう」という限定をしてくれるならいいのだがそれがあるわけでもない。
2014-10-19 23:07:48過去の事例の紹介も中途半端で、わざわざ前成説と後成説の話を持ち出しておいておきながらそこから導き出す教訓は「理論はメカニズムを提示するべき」という論文全体の論旨との関連がいまいち不明瞭なもの。
2014-10-19 23:16:02「分化に関する理論」として、発生が進行しても遺伝子は選択的に発現するだけで失われはしないことをGurdonの研究などを参照して述べてもいるが、これも論文全体の主張との関連性は弱いように思われる。
2014-10-19 23:21:16総じて各パートの議論が中途半端で結論とあまりリンクしていない。発生の理論の形成に対する悲観論を述べるなら論文全体をその主張を支持する形で組み立てて欲しい。そういう構成にしないならラストでいきなり悲観論を放り込まないで欲しい。
2014-10-19 23:26:08そもそも発生における因果ネットワークが分岐だけ/収束だけで構成されていないことは今では皆知っている。細胞分化が位置情報と系譜の両方に依存していることも、発生が遺伝情報と環境要因の両方に方向付けられることも今や皆分かっている。
2014-10-19 23:40:07そういった様々な二分法が否定されてきている事実を踏まえた上で発生の理論の可能性を検討しよう、という趣旨の論文集だろうに、ちょっと分析が甘過ぎるのではないか。
2014-10-19 23:42:41"The epistemological resilience of the concept of morphogenetic field" (Vecchi & Hernandez)読了。Towards a theory of developmentの第5章。
2014-11-03 16:05:31著者らの主張は、分子の時代においても発生生物学者は形而上学的な問題を避けては通れないというもの。それを示す事例として彼らは二つの問題について論じる。一つ目が発生における情報の問題、二つ目が発生における因果の問題。
2014-11-03 16:18:58発生情報の節では主にWolpertの位置情報理論が分析される。彼らによれば、位置情報理論は初め遺伝子による説明の代案として提唱されたが、その後のWolpert自身の主張の変化によって逆に遺伝情報による説明に回収されてしまった。
2014-11-03 16:30:49因果の方の節では三つの問題に焦点が当てられる。(1)パターンの形成はどのように始まるのか?(2)細胞間の情報伝達を統べる物理的相互作用はどんな性質を持つか?(3)発生システムの構成要素間の相互作用はどんな性質を持つか?
2014-11-03 16:36:13著者らは形態形成に関するモデルとして、Turingの反応拡散モデル、De Robertisによるオーガナイザーのモデル、NewmanとBhatの生化学的振動子モデルを取り上げ、これらは発生における因果性を巡る上記の三つの問いに対してそれぞれ異なる回答を与えると論じる。
2014-11-03 16:46:02発生生物学の発展はここで明らかにされた形而上学的な問題をさらに明確化できるか次第であり、その意味で発生生物学者は未だに形而上学的問題に取り組む必要があると著者らは論じる。
2014-11-03 16:53:48