牛トルトbot

過去のお話まとめ。
1
牛トルトbot(二月末日更新停止) @cowtolt

@cowtolt 「(発進の音に紛れて聞こえたその声は、優しく僕の心に染み入って溶けていく)」 「(大きくて固い、ライナーの手)」 「(その手の感触は、確かに僕の全てを優しく包み込んで抱き締めてくれていた)」 【続く】

2015-02-11 21:39:06
牛トルトbot(二月末日更新停止) @cowtolt

@cowtolt 「(涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった僕の顔を見て、ライナーが困ったように小さく笑う。体を起こし、再び運転席に上半身を戻したライナーの片手は僕の手を強く握ったままだった)」 「後でたっぷり叱ってやるから安心しろ」 「…っ、うん…っ」 「……無事で、本当に良かった」

2015-02-11 21:31:00
牛トルトbot(二月末日更新停止) @cowtolt

@cowtolt 「ら…、」 「痛かったか?」 「…!」 「殴られて、怖かっただろう」 「……」 「迎えに来るのが遅くなって、本当に悪かった」 「…な、なんで…」 「え?」 「何で、ライナーが謝るの?僕は嘘をついて、ライナーとの約束を破って、なのに、なのに…!」

2015-02-11 21:20:59
牛トルトbot(二月末日更新停止) @cowtolt

@cowtolt 「(熱い舌の感触に傷になった場所がぴりぴりと痛む。けれど、僕はそれを嫌だとは思わなかった)」 「(ゆっくりと、労るように)」 「(繰り返し何度も傷を舐めてから、ようやくライナーの舌が抜けていく)」 「……」 「……」

2015-02-11 21:14:57
牛トルトbot(二月末日更新停止) @cowtolt

@cowtolt 「……」 「ごめ…っ?!」 「(突然、背中を支えていた座席が後ろへ倒れる。同じように倒れながら驚いて目を瞠ると、そこへ覆い被さってくる顔が一瞬だけ見えた)」 「(唇が触れる。薄く開いたままの口へライナーの舌が潜り込んで、殴られた頬の内側をそっと舐められて…)」

2015-02-11 21:09:12
牛トルトbot(二月末日更新停止) @cowtolt

@cowtolt 「…ごめんなさい…」 「(もっとちゃんと謝らないといけないのに)」 「(たったその一言しか出てこない)」 「(涙はもう、こらえられなかった。まだ僅かに腫れている頬をぽろぽろと涙が落ちていく)」 「ごめんなさい、ごめ…、ごめんなさい…」

2015-02-11 21:00:17
牛トルトbot(二月末日更新停止) @cowtolt

@cowtolt 「!」 「そんなに町へ行きたかったのか?…俺に、嘘をついてまで」 「…っ、」 「(ライナーの言葉に胸が詰まる。車のエンジンをかけても発車しようとはせず、ライナーは右手で目元を覆いながら唇を噛み締めていて…)」 「(…僕が、ライナーを傷つけた)」 「(僕が…)」

2015-02-11 20:53:47
牛トルトbot(二月末日更新停止) @cowtolt

@cowtolt 「(溜息混じりのライナーの声。無言で差し出された手を一瞬迷った後でそっと握るととても冷たくて…)」 「(…泣いちゃだめだ。僕が悪いんだから)」 「(外に停めてあった車へ乗り込む。町には雪が降り始めていて、外の景色を眺める視界が僅かに滲んだ)」 「…そんなに、」

2015-02-11 20:47:52
牛トルトbot(二月末日更新停止) @cowtolt

@cowtolt 「俺達はこの前ここへ越してきたばかりで知り合いがいないんだ」 「だが…」 「じゃ、気が向いたら連絡をくれ」 「(ライナーがちらりと僕を見る。けれどジャンはそんなライナーの態度を気にも留めず、そのままマルコを連れて出て行ってしまった)」 「…帰るぞ」 「…はい」

2015-02-11 20:40:30
牛トルトbot(二月末日更新停止) @cowtolt

@cowtolt 「ああ。…本当に、ありがとう」 「いいって。そんじゃ俺らも帰るか、マルコ」 「うん」 「良ければまた日を改めて礼をさせてくれ」 「あー、そういうのは無し!…ただ、そうだな。今度マルコとそいつを遊ばせてやってくれよ」 「えっ…」 「ベルトルトと?」

2015-02-11 20:34:34
牛トルトbot(二月末日更新停止) @cowtolt

@cowtolt 「(何も言わない僕を見て、代わりに説明してくれたのはジャンだった。僕がジャンに話したあの男の人との会話も全部…ライナーはただ黙って聞いていて…)」 「…そうか」 「嘘ついて町に出てきたことは悪いが殴られたことに関してそいつに非はない。それは承知してやってくれ」

2015-02-11 20:29:46
牛トルトbot(二月末日更新停止) @cowtolt

@cowtolt 「それにしても早かったな。隣の街にいたんだろ?」 「予定を切り上げてきたんだ。…それで、殴られたっていうのはどういうことなんだベルトルト」 「……」 「ベルトルト」 「(ライナーの顔を見ることが出来ない。謝らなきゃいけないのに…ライナーの顔を見るのが怖い)」

2015-02-11 20:24:04
牛トルトbot(二月末日更新停止) @cowtolt

@cowtolt 「(僕を助けてくれた人はジャンと名乗った。連れて行かれたのは近くの喫茶店で、ライナーにはそこからジャンが連絡してくれた)」 「(ライナーは突然の電話に状況をうまく飲み込めていないようだ、とジャンは言った。…当たり前だよね、僕はライナーに嘘をついてたんだから)」

2015-02-11 20:11:41
牛トルトbot(二月末日更新停止) @cowtolt

「…どうしたんだ、その頬は」 「ライナー…」 「あんたが飼い主か。早かったな」 「!ジャン…だったか?すまん、うちの牛が迷惑をかけたようだ」 「いや、俺はあんたに連絡して一緒にいただけだ。今日は特に予定もなかったし。なぁ、マルコ」 「うん。…ベルトルト、良かったね」 「……」

2015-02-11 20:06:21
牛トルトbot(二月末日更新停止) @cowtolt

@cowtolt 「はぁ…。とりあえずこっち来い。頬が痛むだろ?」 「ひっ…、ぃ、な…、らいなぁ…」 「分かった分かった、いいからまずは頬を冷やせって。俺もマルコを待たせてんだから」 「(言って、不意に片手をすくわれる。少し驚いて顔をあげたけれど不思議と怖い感じはしなかった)」

2015-02-11 13:02:48
牛トルトbot(二月末日更新停止) @cowtolt

@cowtolt 「(そうして睨みあっていたのは数秒のこと。やがて僕を叩いた男は不満も露にたくさんの人の中へと消えていってーー)」 「おい、大丈夫か」 「……」 「おい」 「……」 「(今更ながらに体が震える。頬が痛い。怖くて怖くて仕方なくて、涙がぽろぽろとこぼれ落ちていく)」

2015-02-11 12:56:50
牛トルトbot(二月末日更新停止) @cowtolt

@cowtolt 「家畜の分際で人に逆らうな!」 「…っ、」 「(再び振り上げられる、大きな手。殴られる恐怖に固く目を閉じたーーその時だった)」 「それ以上やったら警察呼ぶぞ」 「!」 「(割って入った男の声におそるおそる目を開ける。振り上げられた手は別の手に掴まっていた)」

2015-02-11 12:49:55
牛トルトbot(二月末日更新停止) @cowtolt

@cowtolt 「あっ!」 「(腕を取られて強く引かれる。体が前につんのめり、僕はその手から逃れようととっさに男の手を引っ掻いた)」 「つっ!てめ…!」 「(ばしん、と頬に衝撃が走る。じんじん痺れる頬の熱に過去の記憶が甦ってーー僕の体は固まったように動かなくなってしまう)」

2015-02-11 12:42:27
牛トルトbot(二月末日更新停止) @cowtolt

@cowtolt 「(僕の声に周りの人が不思議そうな目を向けてくる。でもそんなのはどうでもいい)」 「(僕のことはなんて言われてもいいんだ。でも、ライナーのことを悪く言われるのは絶対に嫌だ…!)」 「ライナーは僕をお金で売ったりしない!」 「! おい、でかい声で喚くな」

2015-02-11 12:34:53
牛トルトbot(二月末日更新停止) @cowtolt

@cowtolt 「(体を売らせる…)」 「(それはつまり…)」 「しっかし、いくら人の姿してても家畜だろ?そんな気になれるなんて頭がおかしい証拠だな」 「…っ、ライナーはおかしくなんてない!」 「あ?」 「おかしくなんてないよ!」 「何だ、急に」 「ライナーは…っ」

2015-02-11 12:05:28
牛トルトbot(二月末日更新停止) @cowtolt

@cowtolt 「お前、乳を出すために買われたんじゃないんだろ。一回いくらだ?それとも飼い主専属か?」 「あ、あの…?」 「とぼけるなよ。金で変態共の相手をしてんだろうが。まぁそのくらいしか使い道もねぇよなぁ」 「!」 「(不意に、ライナーの言葉が脳裏に浮かんだ)」

2015-02-11 11:56:01
牛トルトbot(二月末日更新停止) @cowtolt

@cowtolt 「!」 「(にやにやと笑うその顔が意味するものを僕は知っている。今までだって何度も見てきた…『乳を出せない役立たず』を見る人間の顔だ…)」 「……」 「その様子じゃまだ出てないんだな。ははっ、もしかして噂は本当なのかよ」 「え…(噂…?一体なんのことだろう)」

2015-02-11 11:44:38
牛トルトbot(二月末日更新停止) @cowtolt

@cowtolt 「(プレゼントは何がいいかなぁ。ライナーの好きなコーヒー豆とかチーズとかーー)」 「!」 「(不意に後ろから肩を叩かれ体が跳ねる。慌てて振り返ったそこには、知らない男の人が一人立っていた)」 「…?」 「お、やっぱりあそこの牛だ。なぁ、まだ乳は出ないのか?」

2015-02-11 11:34:48
牛トルトbot(二月末日更新停止) @cowtolt

@cowtolt 「(パン屋のおばさんに聞いたらお金は充分足りるみたいだし、他のプレゼントも見てみよう。それで今日の冒険は終わりだ)」 「(ライナーはアニと隣の街まで行くって言ってたから戻ってくるのは早くても夕方…)」 「(帰りは乗り継ぎのバスだから遅れないようにしないと)」

2015-02-11 11:25:26
1 ・・ 26 次へ