魔の階 最終対話 『豪奢なる広間の場』

左右と中央、三本の上り階段から繋がる場。ありとあらゆる贅を尽くされた調度の並ぶ広間に、動くものはただ三人。
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《狼》ウィス @StairwayWis

「明るくなってきたな」とは声には出さない。がつがつがつと踏みつける階段の段にはいつの間にか絨毯が敷かれていたが気にせずがつがつがつと踏みつける。登った先は開けていた。 「三つか」目で数えた階段の数は声にした。他はまだ居ない。見渡す。ごちゃごちゃとしたものが並んでいる。

2014-10-15 22:19:02
《狼》ウィス @StairwayWis

「……待つか」もう一度見渡して、丁度の高さのテーブルに寄り掛かった。椅子もあるが座るにはごちゃごちゃしすぎている。

2014-10-15 22:20:59
《蛇》 @SatanaDio

「おや、お早い御到着だ。お待たせしてしまったかね」 柔らかな高音が響く。白衣を翻し、カツリカツリと踵を鳴らす。 「さてはて、貴方はどれだろう。自己紹介は皆が集ってからの方が、手間が少ないかね?」 雑多に並ぶ調度品、体の良い椅子に腰掛け、足を組む。

2014-10-15 22:35:39
《蝙蝠》音成カイ @teudev

昇るにつれて質のいい調度に靴音は吸い取られていった。 段をのぼりきって赤絨毯を踏みぬく。見回し第三者があることを確認。 「……」 階段の数を数える。 「もしかして俺が最後だったか」 階段の降り口で立ち止まったまま呆然としたように言った。

2014-10-15 22:42:19
《蛇》 @SatanaDio

「私もたった今来たところだよ、見も知らぬ貴方。適当に掛けると良いのでは無いかな」 大仰に腕を広げ、人の好い笑みを浮かべる。 「さてまずは、自己紹介……かね。私は《蛇》だ」 そう言って笑みを浮かべたまま、貴方たちはと問いたげに視線を向ける。

2014-10-15 22:48:43
《狼》ウィス @StairwayWis

到着したあとの二人のやり取りを端で聞く。 「《狼》だ。《狼》のウィス、どっちで呼んでくれてもいい」問いにはすぐに答える。もう一人に目をやる。残ったのは《狼》と《蛇》と。「あんたは?」

2014-10-15 23:01:06
《蝙蝠》音成カイ @teudev

「そうか。さして待たせたんじゃなくて何よりだ」 靴の音を絨毯に飲み込ませたまま室内に何歩か踏み込む。そこにいるだけで不自由のなさそうな調度品を見回して眉をよせると、イスのひとつに腰を下ろした。 「《蛇》と……《狼》のウィスだな。俺は《蝙蝠》だ。名は音成カイという」

2014-10-15 23:09:01
《蛇》 @SatanaDio

「失念していた」 そうだ、そうだったと一人ごちて一瞬伏せた面を上げる。 「ディオ……ああいや、今この姿でならディア、かね。まあ個を表す名称としてはそのような名をしているよ」 肩を竦め、《蝙蝠》と《狼》二人の男へ視線を向ける。 「さて、貴方達は何故魔王となる道を選んだのか」

2014-10-15 23:24:55
《蛇》 @SatanaDio

「私は欲……ああいや、《欲の宴》と名を変えたこれの為と言おうか」 指を鳴らす。その手にはワイングラスとなみなみと注がれた深紅の酒。にまりと嗤い、一口飲み下した。

2014-10-15 23:26:10
《蝙蝠》音成カイ @teudev

「ディオ。ディア? よくわからんが今のところディアと呼ばせてもらう」 眉を寄せてふにおちない顔をしたがうなずく。ワイングラスを目にしてもやはり同じような表情のままだ。 「そうだな。話し合うのをもったいぶる理由もない」 バイオリンを持ったまま左手をひざに置くと頬杖をつく。

2014-10-15 23:52:03
《蝙蝠》音成カイ @teudev

「理由だけなら脅威であるよう望まれたからだ。望まれる脅威になれる自信があるし、それを俺自身も望んだ」 グラスの内側で目を細める。二人の声の高低を耳が探る。 「《欲の宴》とやらがよくわからんが名を変えたというのはどういう事だ」 言いつつも《狼》の答えを待つよう視線を注ぐ。

2014-10-15 23:56:38
《狼》ウィス @StairwayWis

《蛇》。《欲の宴》。名を変えた。「それにどんな意味があるんだ」疑問はそのまま口にした。ワイングラス。回りくどい言い方をするとは声にしない。《蝙蝠》の手には楽器。簡単な理由。 「俺は『魔王』に俺が一番近いと思ったからだ」同じ事を繰り返すのは苦手だが仕方ない。

2014-10-16 00:25:08
《狼》ウィス @StairwayWis

「『魔王』に求められるものを俺は成せる。『魔王』になって人間達をひとつに纏め上げられるって確信も自負もある。それにもうひとつ約束もあるしな」夜の空の色。「反故にはできない。だから来た」

2014-10-16 00:28:47
《蛇》 @SatanaDio

「脅威であれ。近いと思った。そして、約束。ふむ、成る程どうして頷くしかあるまい」 くつりと喉を鳴らす。椅子の傍らにあったテーブルにはずらりと、酒の入った瓶がいつの間にか並んでいるだろう。 「《欲の宴》。元はただ一つの《欲》に過ぎなかった」 指を鳴らす。片手には真っ赤な林檎。

2014-10-16 00:46:45
《蛇》 @SatanaDio

「だが一つの邂逅を果たし、《宴》を喰らって《欲の宴》となった」 「私もまた、託された一人。約束を抱えた一人。《蛇》の甘言等と笑われてしまわぬよう、果たさなければならない一つ」 「人々の欲望溢るる世を。そして私が喰らうべき《欲の宴》で満たす事」

2014-10-16 00:49:19
《蛇》 @SatanaDio

柔らかな高音。 「この世界を欲で満たす。私はそれを喰らう。混沌を世に。有り余る欲を、宴をこの胃袋に」 瓶同士がぶつかり擦れ鳴り合う。 「それが私の理由であり、約束である」 そう締めて、微笑む。艶やかな笑み。

2014-10-16 00:51:30
《蝙蝠》音成カイ @teudev

「楽園の甘言を聞いているようだ。人の欲は美味いか?」 翻る白衣から並べられた酒瓶。フィンガースナップの高音とともに現れた林檎。青年の眉間のシワは深いままだ。 「約束ならば俺もある。魔王にならねば果たせん約束だ」 シグナルレッドが月の色をむく。[シ]が二人の言葉に重ねて語る。

2014-10-16 10:22:49
《蝙蝠》音成カイ @teudev

「当たり前だろうが、それぞれどのような脅威をもたらすつもりかは異なろうよ。まずはそれを聞きたい」 頬杖をついたまま怠惰に眼鏡のブリッジを押し上げる。低い声を、高い声を鼓膜に受け入れる。 「三者に三様の約束があるようだ。ディアもウィスも引く気はないだろう。無論それは俺も同じだ」

2014-10-16 11:12:06
《狼》ウィス @StairwayWis

《蛇》に欲。欲を食うとはよくわからない。わからないがそういうものだろうと頷いた。音成、《蝙蝠》がこちらを見る。「脅威ってのは少し違う。それだけじゃない。単に暴力単に暴れ回るだけじゃない。人間たちを一つに纏め上げてひとつに向かわせるだけの害悪だ。その為の『魔王』だと思ってる」

2014-10-16 17:46:52
《狼》ウィス @StairwayWis

「俺はそれが出来ると思ってるしだから俺が近いと思ってる。『魔王』になれば人間に殺されるまでが役目だ。それを入れてそう考えてる。人を殺したいわけでも自分の欲でもない。『烙印』の意味はそういうもんだと俺は思ってる。……二人が俺以上に『魔王』に近いとは、今は思えない」

2014-10-16 17:52:49
《狼》ウィス @StairwayWis

「だから今のところ、俺に引く気は無い」言い切る。頭を掻き混ぜた。 「どうする、三人とも妥協はしないだろうし殴り合って決めるか。あんま良い方法じゃないと思うけどな。俺は戦うのは苦手だからそうして欲しくないってのもあるけど」得意なのは狩りだけだ。

2014-10-16 17:56:46
《蛇》 @SatanaDio

「ああ美味いとも。禁断の果実と言われる由縁もなんとなしにわかるというものだ」 摘まんだ林檎をワイングラスの中へ投げ込めば、それは溶けるように赤い酒へと姿を変える。 「脅威。成る程脅威とは言い得て妙だ」 一つ頷く。二つ頷く。 「私は《蛇》だからね」

2014-10-16 19:55:29
《蛇》 @SatanaDio

「人々を唆す。何、ちょいとコツを掴めば直ぐに人は堕落し欲を得ようと様々を貪る。それの滑稽なコト……っと、話がずれたね」 語るうち、柔らかな高音は滑らかな低音へ。その姿も男の物へと移る。 「私自身が何かを振るう訳では無い。何某かを振るうのは人間たちだ」

2014-10-16 19:57:12
《蛇》 @SatanaDio

「だがね、《狼》たる君、ウィス。一つに纏め上げて、君が倒され地に伏したとして人間はすぅぐバラバラになるよ。予感ではない、経験則だ」 矢面に立ったのは自分では無く、知らぬ誰かだが。そんな光景を一度ならず見てきた。 「そうして、君はどうするかね。それでも一時の集いをと謳うかね」

2014-10-16 20:01:46
《蛇》 @SatanaDio

純粋なる疑問。己の欲、喰らった宴と似たコトしか聞かなかったが故に、《狼》の言葉は《蛇》の興味を擽った。 「しかし成る程、成る程。殺されるが《魔王》たる役目。そんな風にはついぞ、思いもせなんだ」 頷きを交えながらワイングラスを傾ける。テーブルに並んだ瓶が少しずつ減っていく。

2014-10-16 20:04:04
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