不知火に落ち度はない その23

yamoto @yamoto

「それ、使えるかー？」 「えー？ なんですか、聞こえませーん？」 「サイクロン気に入ったかー！」 「使いづらいですー！！」 浜風からNoいただいた。 モグリざまあ。 主婦の皆様は紙パック式愛用らしいぞ。 #不知火に落ち度はない

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さて、お部屋の掃除は全て浜風に任せた。 俺はこのベランダで太陽を浴びながら一服である。 ああ、平和だ。 何もしないで良い休暇とか、すんごいいい。 昔さ？ 親が家で休日ゴロゴロして休みなのになんでって思ったりしただろ？ それが一番幸せなんだ、たぶんな。 #不知火に落ち度はない

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「な に を ──サボってるんですか？」 ずごごごごごごごご といい音をたてて、尻が吸われる。 やめて。 俺を休みから仕事に引き戻さないで。 「いや、ほら 良い天気だろ？」 「関係ないです」 「大人って疲れると空が恋しくなるんだよ」 #不知火に落ち度はない

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「私もお休みなんです。なんで手伝ってるんですかもー」 「いや、それは俺が聞きたい」 あと尻吸い続けないで。残念なおじさんになってるから。 屁かますぞ浜風。 「ほらー、さっさと済ませてどこかへですねー」 「飯程度には連れてくから、そっとしておいて」 #不知火に落ち度はない

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「どこですかー？ ご飯って」 「焼肉屋」 どうだ。若い子にとって最高のスポットだろ。 しかも食べ放題じゃないやつでどうだ。 「却下します」 「バカな！？ 肉だぞ？！」 若い子って肉ホイホイされるだろ普通！？ サンプルケースは陽炎と黒潮だが。 #不知火に落ち度はない

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「そんな昭和な考えを出されても」 「ジェネレーションギャップだわ……」 やれやれとため息が聞こえ、尻からはまだ吸い続ける音が聞こえる。 あれか？ モグリにそっとメール伝達。 『若い子って焼肉だめなん？』 即返答。 『ぬいぬいならイタリアンだろ』 #不知火に落ち度はない

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『お前暇なの？』 『ホテルでしけこみ中』 『エロ野郎め』 『うっせ』 うむ。この海軍の面汚しっぷりすげえ。 #不知火に落ち度はない

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『横から失礼します。焼肉って（笑）』 『出たぞギンブチの煽り』 『Line入れてくださいよいい加減二人とも』 『めんどい』 『個人情報管理大事』 #不知火に落ち度はない

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『若い子に今オススメな、手軽フレンチありますよ。男性だけが入るのには敷居が高いらしいですが』 『お、マジで？ 店plz』 『翔鶴情報か』 『はい。聞いたら教えてくれました』 ギンブチ。それ連れてけってことだから。 #不知火に落ち度はない

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『んじゃ提案してみる』 『おう、ぬいぬいによろしく』 『ぬいぬいなんですよね？』 『おう』 はい会話終了。店のURLをゲットして開くわけだが。 尻を吸う感触にそろそろキッツさを覚えたので、ノズルをキック。 何か出たらどうするんですかまったく。 #不知火に落ち度はない

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「……なるほど、これは男一人じゃキッツい」 女子会にどうぞってでかでか書いてる。 しかも海が見えるロマンチックさ。飾りも女子向けでお花いっぱい。 お値段控えめ、量も控えめ。 フォアグラとかあの辺のこってりまったりからはだいぶん離れたメニュー構成。 #不知火に落ち度はない

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「ちょ、ちょ……あああああああ！？」 ずぼぼぼぼぼお、と面白い音が背後からしたので振り返ってみると。 あ。 はい。 うん。 浜風が掃除機に襲われてる。 #不知火に落ち度はない

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「ちょっと！ 見てないで止めてくださいよ！」 浜風のスカートが掃除機に食われてる。 浜風のスカートが掃除機に食われてる。 おぱんつさまがお見えになってます。 今日は……びみょーに気合い入ってるのか、リボンつき？ 年頃の子だな、としみじみ。 #不知火に落ち度はない

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「いや、電源切ろうぜ浜風」 「そ、そんなこと言ったってですねー！！！！」 とてもトミノ調。暴れるホース飲み込むスカート食い込むなにか。 駆逐艦vsサイクロン掃除機。 サイクロン掃除機が今のところ優勢である。 #不知火に落ち度はない

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なお、おパンツ様の状況はただいま全開。 パンモロって騒ぎじゃなく、揺れる回る震える上と同時になんとも面白愉快な状態である。 ストッキング越しだけどな。 あと腹まで見えてるけどな。 煙草が美味しいなあ。 #不知火に落ち度はない

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『モグリ、サイクロン掃除機がスカート食ってる』 『病院いけ』 『リアルなんだこれが』 『そうか 救急車だな』 即反応帰ってくるあたりこいつも暇してると見える。 あと1分ぐらいでどうにもならなかったら助けよう。 浜風の悲鳴絶賛放送中。 #不知火に落ち度はない

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「ジャスト一分、さて助けるとするか」 うむ。煙草旨かった。 さて、と。電源引っこ抜きに行くかな。 「…………。何か言いたいことありますか？」 おや浜風さん。既に電源切った後でしたか。 それはともかく浜風さん。 笑顔綺麗ですね。 #不知火に落ち度はない

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「えっと、あれだな。ナイスヒップ」 「ばかー！！！！」 ぱしこーん。 サムズアップした俺に容赦なくビンタ振るわれました。 スカートは無惨にも、サイクロン掃除機の集塵ビンに入ってました。 斬新だな。ぱんつまるだしノンスカート浜風って。 #不知火に落ち度はない

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「いちちち。……いや悪かったと思ってます」 「他に言いたいことは？」 「ナイスヒップ」 「またぶちますよ？」 スカートが使い物にならなくなった浜風は、俺の短パン装備中。 サイズが違いすぎるのか、なんか凄いチェケラっぷり。 俺の顔には紅葉が刻まれた。 #不知火に落ち度はない

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「ほ か に な に か い い た い こ と は ？」 「えーと……飯行く？」 その言葉にご機嫌直して貰えるかと思いきや、つんっとそっぽむかれました。 「焼肉嫌ですからね」 「フレンチ」 ぐ、と一瞬止まる浜風。 #不知火に落ち度はない

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「店の名前が、『Bistro Chantilly』以外なら」 ほうほう。 どれ、さっきの店名をちらっと。 どうしよう。 直球でそれじゃん。 あかん。 「え、通ったことあんのもしかして」 「ないです。ないですけど」 #不知火に落ち度はない

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今の格好で行けるわけないでしょう、などと仰ってくれました。 ドレスコードなしなのにな。 「そこ以外にしてください。早く」 参ったな。ステーキ屋とか言えないぞこれ。 大変キビシー。 浜風の不機嫌度上昇なう。 #不知火に落ち度はない

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「あー……えっと、じゃあここどうよ？」 「……」 写真データを見せる。 浜風は半眼でそれを見て。 少し口元を緩めて、OKしてくれたのであった。 #不知火に落ち度はない

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「浜風。コショウ」 「はいどうぞ」 ずる、ずるるる。 うん。ここ相変わらずうめえな。 「久々ですね。ここ」 「なんだ、通ってなかったのか」 と、いうわけで。 例のラーメン屋にきてるわけでした。 あー、よかった。 ここの味気に入ってたみたいだ。 #不知火に落ち度はない

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「親父さん。この限定のやつ旨いな」 うむ、と深々頷く。 なんでも冬場が近づくと出てくる、味噌なんだと。 味噌ラーメンバター入り。 北の大地が目の前に見える。 北海道生まれなのかね、店主。 一方浜風はプレーンな醤油。スタンダード愛好派なのであった。 #不知火に落ち度はない