ハコガクRPG２　キャラメイクってどうすんの？

ひな＠復旧中 @newgibbousmoon

ハコガクRPG２　キャラメイクってどうすんの？ 最新のデバイスはゲーム専用ではなく学習にも利用できるのが売りだ。学習用ソフトも充実している。 今話題の超対策RPG『カオス・ワールド・オンライン』の他に語学学習用のソフトなどもついてきていて、当分遊べそうなラインナップである。

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@newgibbousmoon （ゲームな……やってもいいんだけど、ハマると怖ぇし） 自分がこれと決めたら一直線なタイプであることはよくわかっている。 受験前のこの大事な時期に、ゲームになんかハマったらたまらない。 （あいつら、そのへんあんまり考慮なさそうだし……）

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@newgibbousmoon 四人の中で受験するのは荒北だけだ。 （けど、12倍ってのは魅力だよな） タイムクロック12倍……いわば、あれだ。 （精神と時の部屋、みたいなもんだろ） それは大変お徳というか密度の濃い時間を過ごすことができそうだ。 （現実の２時間で24時間だし）

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@newgibbousmoon それだったらちょっとくらい息抜きにゲームをやるのもいい。 （あくまでも息抜きな） カオス・ゲート・オンラインの中のマイルームには電子書籍を持ち込むことができるのだという。 つまり、参考書を電子化すればゲーム内に持ち込めるのだ。

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@newgibbousmoon （マイルームからは持ち出せないそうだけど） マイルームというのは、宿屋などセーブの可能なセーフティ・ゾーンで展開することのできる自室でベータ版のテストプレイヤーのレポートをみる限り、ホテルのシングルルームみたいな部屋なんだそうだ。

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@newgibbousmoon ベッドには宿屋のベッドと同じく回復機能がある。 もちろん、宿屋に入ったのなら宿屋を堪能する方が楽しいに違いないのだが、マイルームはゲーム内通貨ないし課金で自分好みに改装可能なのだとかで、それをゲームの目的にしたプレイヤーもいたらしい。

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@newgibbousmoon 『ゲームの楽しみ方は貴方次第！』というキャッチコピーの通りである。 （つまり、受験勉強で使うオレみたいなのがいてもいいわけだ） タイムクロック12倍というのは、ゲームにだけ搭載しているものらしく、学習用ソフトにはそういう機能がない。

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@newgibbousmoon 荒北にしてみれば学習用ソフトにこそ、そういうものを搭載するべきだと思うのだ。 「んで、まずするのはキャラメイクってわけか」 自分のアバターを作るというヤツだ。 だが、説明書を読んだだけで荒北はうんざりである。 （なんだ、この細かさは！！）

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@newgibbousmoon 「……まあ、いい、とりあえずやてみるか」 ログインする前の段階からもうメゲそうになりながらも荒北は気力をふるいおこす。 ヘルメットタイプのデバイスが主流な中、最新式である荒北のそれはゴーグルタイプだ。 （これなら寮に持ち込んでもバレねえだろ）

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@newgibbousmoon せいぜい冬休み明けの一ヶ月くらいしか行かないとはいえ、学習用に使うつもりであれば寮に持ち込みは必須だ。 ヘルメットタイプはかなりゴツいので宅配であったとしても、持ち込めば目に付きやすく、新開や東堂にバレやすい。 受験が終るまでは教えないつもりだ。

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@newgibbousmoon （あいつら、オレが受験生だってぜってー忘れっから） きっと一緒にゲームをするのは楽しいだろう。 けれど、それで受験に失敗したら目も当てられないのだ。 目先の楽しみで一生を棒に振るわけにはいかないのだ。 （オレは心が弱いから……）

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@newgibbousmoon 荒北ほど心の強い人間はいない、と周囲は見ているようだが、荒北はそうは思わない。 自分が本当に強いのならば、あの時にグレたりはしなかっただろう。 あれは、自分の弱さであり甘えだった。 福富はその自分の甘さを正してくれたのだ。

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@newgibbousmoon （だいたい、ここでゲームにはまって受験ミスったなんつったら、親にも顔向けできねえ） 第一志望が洋南と言ったら、父親には、一浪までは許す、と言われた。 が、そこを現役で合格して「どうだ！」とドヤ顔したい。親だけでなく周囲にもだ。それが荒北の意地だ。

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@newgibbousmoon 「……やべ、ひたってる場合じゃねえ」 夕食までにキャラメイクとやらを済ませてマイルームを作り、二時間くらいは勉強しておきたい。 荒北が使っている参考書はそれほど多くないから持ち込む冊数はそれほど多くない。辞書や英単語の学習ソフトは元々電子版だ。

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@newgibbousmoon しかも、荒北にとって好都合なことに、父親の部屋にはシートフィードでスキャンできるスキャナーがあるのだ。 参考書の持込もそう難しくはないだろう。 （とりあえず、ログイン……じゃねえ、ダイブインか） 荒北はデバイスを準備し、スイッチをONにした。

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@newgibbousmoon （……光……） 暗闇の中、遠くに光が見えたような気がして、次の瞬間、荒北の意識は真っ白な明るい場所へと浮き上がる。 （まぶし……） 荒北は、その暴力的なまでの明るさに目を眇めた。 「パンパカパーン！おめでとー」 耳元で能天気な声が聞こえる。

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@newgibbousmoon 「はぁい、『カオス・ワールド・オンライン』へようこそ～。あなたは記念すべき一万人目の旅人なの！いち・まん・にんめ！だから特典がいーっぱいあるのよ。まずはこの私。あなたのナビゲータは特別に私がつとめてあげるわ。ティータよ、よろしくね」 「あ？」

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@newgibbousmoon きらめく羽を持つ妖精と思しき女が、ふわふわ飛びながら物理的に上から目線で荒北に言う。 （え、ナビゲーターって動物選べるんじゃなかったのか？え？） デフォルトな選択では、しゃべる動物だったはずだ。 それもゲーム内で進化するというもの。

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@newgibbousmoon ひそかにモフモフを楽しみにしていた荒北は盛大にがっかりした溜息をこぼす。 「何よぅ、この私が不満だっていうの？」 「ゲーム中くらいは心置きなくモフモフさせろよ！！」 「え、ほんとに？」 よくできたナビキャラは、信じられないという表情で荒北を見る。

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@newgibbousmoon 「ひ、ひどい」 「ひどいのは、そっちだっていうの。まあ、いい。とりあえず、ちゃっちゃとキャラメイクっての済ませるぞ」 「はっ。そうね、そうよね。あなたもキャラメイクすれば私の素晴らしさがわかるわ。何といっても私には特典がいっぱいあるんだから」

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@newgibbousmoon 「あー、盛り上がってんとこ悪いんだけど、オレ、この手のゲームいっさいやったことねえから」 「え？」 「ゲームらしいゲームは一切やったことねえから」 「え？ほんとに？」 「おう」 「ド、ドラクエくらい……」 「ない」 「じゃあ、FF派だったの？」

ひな＠復旧中 @newgibbousmoon

@newgibbousmoon 「いや。そもそもテレビゲームやったことねえんだって」 「え？マリオは？」 「ない」 「ちょっと待って、あなた、何歳？社会人？」 （おお、すげえ表情もリアルだな） 「学生だよ」 「高校？大学」 「高校」 「イマドキの子供がゲームやったことない？」

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@newgibbousmoon 「テレビゲームは目が悪くなるだろ。オレ、スポーツやってたからゲームとか一切やったことねえの」 「ちょっと待って、なんでこのゲームやろうと思ったの？」 「タイムクロック１２倍」 「え？」 「オレ、受験生なんだわ。時間が１２倍有効活用できるじゃんか」

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@newgibbousmoon 妖精は器用にも空中でがっくりと膝をつき、うなだれた。 「……は、初めて聞いた、その理由」 「12倍でできないまでも、3倍くらいでいいんだけどさ」 「……じゅ、受験勉強にしか使わないの？」 ひしっと妖精がすがってくる。 「息抜きはするけど」

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@newgibbousmoon 「い、息抜きに冒険してくれる？」 小さな手がぎゅっと荒北の服を掴む。 「まあ、息抜きくらいなら」 「うん。ムリはいわないから。冒険してね、お願い」 「オレが冒険しないとおまえも暇なんだ？」 「そうよ。基本的にはマスターから離れられないの」