五大聖戦:第一戦闘フェイズ【第四の扉】

──激突するは聖焔と八衢。
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【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

──そして、続く光の道の先、有る扉を開けた。 一片の緑も見えない、荒れた地が視界一杯に広がっている。その地に刺さっているのは、十字架だろうか。それも一つではなく、ぽつぽつとそこらにある。 「──せめて、祈りを」 十字を切る。祈るように手を合わせてから、視線を上げる。

2014-10-27 22:12:24
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

腰に帯びた十字剣を鞘から引き抜いた。油断してはならない。相手は悪の権化なのだ。ミセリコルディアさまに仇為す魔なのだ。 一歩、また一歩と踏み締める。──敵影はまだ、見えない。

2014-10-27 22:12:26
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

そのアンゼリカの視線の先―――十字架にもたれ掛かるようにして座っている、少年。微動だにせず口を開いて、空を見上げるその姿はまるで人形のようだ。 勇者の気配にも動じずにずっと雲を見つめている―――

2014-10-27 22:39:51
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「──魔神フォルミドの手の者と、お見受けいたします」 微動だにせずただ空を見上げるその姿は、いっそ人形のようだと思った。ぞくりと背を這う言い知れない悪寒を抑え込むように、アンゼリカは背筋を伸ばす。 果たして、視線はこちらを向くのだろうか。十字剣を握り直し、じっと、少年を見詰める。

2014-10-27 22:50:06
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

ふ、と目だけがアンゼリカの方を見る。 「……、ぁ」 ―――勇者。面倒だな、と頭の中でぽつり。 「ゆう、しゃ」 口からこぼれるようにつぶやく。小さな言葉だが…不思議とアンゼリカの耳には、届くだろう。 勇者を前にしても、未だに微動だにはしない。

2014-10-27 23:14:39
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「……あなたさまは、一体。どの力をお持ちなのでしょう」 小さな声。端的な言葉。そこに在るのは幼い少年だが、魔王であると本能が訴える。 「わたしは、聖焔。炎を女神より賜りし勇者。アンゼリカと申します」 双眸と同じ色の修道服の裾が生温い風に揺れる。十字剣をしかと握ったまま、見据えた。

2014-10-27 23:22:29
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

「………」 そんなものを名乗る必要があるんだろうか。少し目線を逸らして―― 「…八衢…」 ぽつり。長い袖で一度顔を拭いてから。 勇者を前にして未だ、頭の中では戦うのかあ、めんどくさいなあ、などと考えている。 アンゼリカの剣の切っ先をじっと見て、まだ動かない。

2014-10-27 23:44:06
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「……八衢、」 土の魔王か。思考はくるりくるりと廻る。答えなどせず、実力行使で来られる場合も想定はしていたが、あっさりと返答があったことに、少しだけ内心、脱力した。──それでも、表面上は気を抜かず。 「わたしは、あなたを撃ち滅ぼさねばなりません。──世界の為に」

2014-10-28 00:02:01
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「……何故、あなたさまは魔王となられたのですが」 切っ先は地面に向いたまま、しかしより強く柄は握られる。本当は問答などしている場合ではないのだ。──それでも、アンゼリカは聞きたかった。その理由を。それを聞いてからでも遅くはないだろう、と。

2014-10-28 00:02:08
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

何故、と。理由を問われると目を伏せて。こんな問答に意味なんかあるんだろうか。こんな戦争に意味なんかあるんだろうか。僕はどうして此処に居るんだろう―――― 「僕、は」 また言葉を零すように口を開こうとして……、そのまま閉じた。

2014-10-28 00:42:23
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

「興味、無い」 その一言で、十字架の周りの荒野が揺れ始める。傍にある鎖ががしゃがしゃと揺れる。 「君にも」 地面が大きく隆起する。鎖に紋様が光りだし、『八衢』の周りをぐるぐると回り出す。 「世界にも」 飛び出した地面が、岩石が、人を象る。

2014-10-28 00:45:09
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

「こんな、戦いも」 土石のの巨人三体が、十字架を囲むように現れる。 「……どうでも、…ぃい」 絶対的な拒否の言葉を吐いて、魔王の部屋に居たように三角座りを始める。そして、顔を膝に埋めて、黙り込んだ。 三体の巨人は、トレィクの居る十字架を取り囲んだままアンゼリカを見下ろしている――

2014-10-28 00:47:07
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「そう、ですか。──それは、残念です」 きゅ、と唇を引き締めて、十字剣を握り直す。切っ先を天に掲げ、胸元まで下ろし、刀身に口付ける。 「【この身体は御身の刃である】」 唱える。刀身が淡く輝く。 「【この刃は御身の穢れを祓うものである】」 唱える。刀身に灯ったそれは、炎を象る。

2014-10-28 01:03:57
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「【この焔は降り掛かりし禍を祓うものである】」 唱える。白い焔は刀身を覆うように灯り、そして揺らめく。 「八衢のあなたさま。どういう目的であれ──この世界に害為すとあらば、」 刃を振る。白焔が散る。正眼にそれを構えた。 「──わたしは、撃ち滅ぼすのみです」 駆け出す。

2014-10-28 01:03:59
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

八衢を狙うにもまずあの三体の巨人をどうにかせねばなるまい。正眼に構えた剣の切っ先を地に向け、斜め上に切り払うような形で剣を振るわんと。 それが無事通れば白焔は巨人の全身を覆うように広がり、焼き尽くさんと猛威を振るうだろう。 ──他の二体の動きに目を配りながら、聖焔は仕掛けた。

2014-10-28 01:04:01
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

仕掛けてくる気配を感じたのか、三体の巨人の顔らしき部位が聖焔の方へ向いた。中央のそれが、八衢の袖と同様の長い腕をどしんと地面に叩きつけた。 …しかし、的も大きい、動きも遅い、では避ける術がない。斬撃を真に受け炎が身体中へ広がる―――

2014-10-28 01:16:51
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

―――が、所詮は『人形』。意思も感情も無い土塊は、炎に身体が包まれながらも聖焔へ一歩踏み出す。次に長い右腕を彼女に大きく振るい、攻撃を仕掛ける!

2014-10-28 01:19:56
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

斬撃は通った。火が広がれば、やがてそれはただの土塊と戻っていくだろう。一歩後ろへ後退を、と思った矢先に振るわれた右腕に双眸を見開く。剣を引き寄せ、巨人の腕をいなすように構える。しかし、勢いまで殺すことは出来なかった。 「くっ……!」 刀身を支える為に宛てた左手がじんじんと痺れる。

2014-10-28 01:50:41
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

暫くは使い物にならないかもしれない。小さく息を吐いて、右腕だけで剣を支える。左手は添えるだけに留め、視線を巡らす。一瞬、回り込んでとも考えたが、回り込もうとする間にまた、あの大きな腕を振るわれてはたまったものじゃない。──ならば、やはり。確実に、一体ずつ。

2014-10-28 01:50:43
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

駆ける。左肩に感じた痛みを無視して、聖焔から見て右の巨人を狙いに行く。次は斬撃ではなく、突きを食らわさんと。刺さればまた、同じように白焔が傷痕から広がっていくだろう。

2014-10-28 01:50:46
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

彼女の狙い通り、その人形が炎に完全に包み込まれる頃にはただの土塊に戻っていた――聖なる焔によって、邪な力が祓われたために。 右の巨人にアンゼリカの鋭い剣が突き刺さる。またその場所から炎が広がるが、先と同じように巨人は傷も炎も無視して動く。

2014-10-28 11:54:16
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

巨人の両腕は緩やかな動きながらもアンゼリカを捕らえようと動く。 …近くで土塊が動く重い音、炎の熱い気配を感じる中、彼はまだ蹲っていた。 そんなことしても無駄なのに、なあ、などと頭のなかで零す。彼女と相対してから、トレィクは一歩も動く素振りを見せていない。

2014-10-28 11:56:45
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

少年は膝に顔を埋めたまま、微動だにしない。その姿を僅かながら視界の隅に捉えたアンゼリカを捕えようと、緩慢に巨人の両腕が動く。 「っ、」 先程の打撃で力の強さは恐ろしい程に身に染みている。巨人を蹴り、その反動で剣を引き抜いて、たたらを踏みながら後退しようと後ずさる。

2014-10-28 13:49:13
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

傷を受けても怯まないのでは、連続して斬撃を叩き込んだところで意味は持たないだろう。己の白焔があの巨人を燃やし尽くすのを待たねばなるまい。 ──これが、もし少年の力の一端に過ぎないとしたら? 思考は戦闘の妨げとなる。巨人の両腕はもう、すぐそこまで迫っていた。

2014-10-28 13:49:16
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「【穢れ祓いの白き焔よ】!」 唱える。重なる。剣に纏わる白焔の勢いが増す。アンゼリカを至近に捉えた巨人の両腕が、掴みかからんとするのと同時、勢いの増した白焔を纏う剣が、土塊の腕に突き立てられるだろう。 ──祓われ崩れるのが先か、内臓を潰されるのが先か。

2014-10-28 13:49:19