五大聖戦:第一戦闘フェイズ【第四の扉】

──激突するは聖焔と八衢。
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【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

聖焔の背後に、今までより更に大きな土の巨人が生まれる。それは、勇者である彼女にも見ずとも『悪しき気配』として感知できるかもしれない。土の巨人は生まれるや否や、両手同士を握ってそれをアンゼリカに、鈍器として振り下ろす――!!

2014-10-29 10:29:07
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「──【疾く燃えよ】【疾く清めよ】【疾く祓わん】」 表情の無い顔。剣の刺さった箇所から、白き焔は燃え広がる。同時、その焔は使い手である自身すらも焼き尽くそうと、柄からアンゼリカを追い詰めていく。痛みはないが、長くはないと直感した。 ──背後に立つ悪しき影の存在も、相俟って。

2014-10-29 10:45:00
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「静寂を望むのなら、眠れば良いのです」 「眠りの先にあるのは常闇。そこでならば、あなたさまも誰に煩わせられることなく過ごせましょう」 「──【穢れ祓いの聖き焔よ】!!!」

2014-10-29 10:45:03
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

血を吐くような叫び。相当な重量を持って振り下ろされる両腕の打撃を回避する術を、聖焔は持たない。──なれば、せめて。 柄を握り込む。それを強く、強く押し込んで、真なる言を唱える。 ──果たして、八衢の魔王はどうなったか。

2014-10-29 10:45:06
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

一際大きく燃え盛った白き焔は、十字剣の刀身を伝い、少年の小さな矮躯を燃え清めようとするだろう。 ──しかし、聖焔がそれを目にすることはない。 「【穢れは燃えよ】」 その言を、最後に。華奢な身体は容易く叩き潰された。

2014-10-29 10:45:08
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

「やめて」 叫ぶ。 「しにたく、な、ぃ」 魔王らしからぬ大粒の涙がぼろりと、片目から零れた。 鎖に紫の紋様が浮かぶ。

2014-10-29 11:24:54
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

聖焔の潰された、腕を見やる。ああ、僕もきっとこのまま、いつかこうなる。死ぬ。死の恐怖が、右肩から迫る。嫌だ、助けて。ぼくは、しにたくない。 トレィクに寄り添うように、土の巨人が生まれる。それは、先の巨人よりは大きくない…代わりに、腕の先に斧のような鋭い岩石を有していた。

2014-10-29 11:43:32
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

おもむろに、腕を振りかぶった。トレィクに向けて、ギロチンのようにそれが振り降ろされる。

2014-10-29 11:44:12
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

重い一撃は、彼の右肩をいとも簡単に斬り落とした。千切れた腕が遠くへと飛ぶ。 魔王は、声にならない叫びをあげ、蹲る。荒野に、小さな身体が倒れる。 視界の先、焔で焼け尽くされて行く腕が見えた。

2014-10-29 11:46:38
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

「ふ、…っぐ、ぅう……う……」 痛みに悶えながら、地面に蹲り泣く。こぼれる涙が乾いた荒野を濡らす。 「う………っう、」 涙でぼやける視界、斧を持つ巨人が見下ろしていた。その一撃は、燃え広がる焔を留めるための苦肉の策。彼を守るための、最善の行動だった。

2014-10-29 11:49:52
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

「っはぁ、…は、」げほ、と咳き込む。 右腕の痛みは止まない。―――だけど、ずっとこうしていたって、きっと意味はない。この世界は、多分、ずっといてはいけない場所。 残った左腕だけで、何度か失敗しながらなんとか上半身を起こす。涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を、袖で拭いた。

2014-10-29 11:53:42
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

目の前に、土の巨人の大きな両手が差し出される。まるで、乗れとでも言うように。 「つち、くれ、」 見上げる。自分のことを、守ってくれるその大きな存在―――。ばたりとその手の中に身体を投げ出す。

2014-10-29 11:57:50
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

――その場を離れるため歩き始めた土の巨人の手の中で、トレィクは残された一際大きな【土塊】を見る。 鈍器のような両拳の下で、赤い血が広がっていた。確かに、勇者は自分が殺した。生き抜いたのだ。

2014-10-29 12:00:16
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

だけど。 ――本当に、死ねば、静かに眠れるのかな。 ルスシェスィアの言う真夜と、勇者の言う常闇。どちらが、本当に正しいのか。 でも。 ――ぼくは、しにたくない……。

2014-10-29 12:03:02