五大聖戦:第一戦闘フェイズ【第四の扉】

──激突するは聖焔と八衢。
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【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

後退されると、ずしんと一歩巨人が踏み出す。またアンゼリカにその腕を伸ばし、今度は押し潰そうと動く―――!!

2014-10-28 14:32:24
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

が、その腕も炎に包み込まれ、大きな音を立てて崩れる。…祓いの炎が回るほうが、一足先だったようだ。 …そんなことをわかっていながら、まだトレィクと左の巨人は動かない。ただ、仕掛けなければ沈黙、静観するのみだ。

2014-10-28 14:33:33
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

――ああ、どうしてこんなところにいるんだろう。 戦闘なんか余所に自ら塞いだ視界、暗闇の中でただ魔王はそんなことだけを考えていた。まるで、すぐそこにいる勇者のこともどうでもいいように。

2014-10-28 14:35:19
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

果たして、アンゼリカはその両腕に押し潰されることなくそこに在った。残る巨人と、少年に動きは見えない。後退し、距離を取って一息。──後ずさるアンゼリカに、追撃の様相を見せない魔王らに、さしもの聖女も怪訝な表情となる。背を伸ばす。

2014-10-28 15:02:05
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「──あなたさまは、」 ぜえ、と荒い息を吐いて、剣を正眼に構え直す。ずきずきと痛む左肩のことを悟られぬようにと、左手も柄に沿えながら、アンゼリカは言葉を落とす。 「あなたさまは、何故、此処にいらしたのです」 その場で微動だにしない少年に声を投げる。

2014-10-28 15:02:07
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

土塊から巨人を生み出す。──これのみだと断定するには余りにも手の内を知らなさすぎる。しかし、八衢の魔王はそれ以外の行動を起こそうとしない。 息を少しでも整えようと、浅い呼吸を繰り返しながら、アンゼリカは八衢たる魔王の言葉を待った。 ──辺りに満ちる、一時の静寂。

2014-10-28 15:02:10
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

膝から顔を離して、目だけを勇者へ向ける。小さく「あ」と口を開くと、そのまま止まった。何かを言おうとして、躊躇うような表情。…数秒そのまま止まった後、続ける。 「…僕、は……」 「静か、に……生き、た、ぃ」 息を吐き出すついでのようにつぶやく。

2014-10-28 16:29:47
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

数珠繋ぎのように零す言葉の中には、少しの迷いが見られる。それはトレィク自身が、理由を探しながら喋っているような。 「真夜、を…もた、らす…ため、に」 【冥漠】が言った『真夜』の中なら、きっと今よりずっと、もっと、静かに生きられるんだろう。

2014-10-28 16:32:50
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

それからまた、数秒の後。アンゼリカから目をそらして、自然に、静かに、流暢に、ぽつり呟いた。 「……死にたくない。」 そして、また地面が揺れ始める。鎖が先程よりがしゃがしゃと揺れ、大きな音を立てる。崩れ落ちた分を補填するかのように、二体の土の巨人が少し離れたところで生まれる。

2014-10-28 16:36:30
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

二体の土の巨人は、生まれた傍から移動を始める。それに伴うように、左にいた巨人も。 「僕は」 三体の巨人が、トレィクとアンゼリカを挟む壁のように動く。 「…ぁ、なたを」 計六本の腕が、思い切り地面を叩く。その衝撃が、地震のように地を揺らす――!!

2014-10-28 16:41:15
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「きゃっ」 揺れる地に剣を突き刺して支えとする。体勢は安定することなく、ぐらぐらと揺れる。 八衢の言葉には、唇を噛む。静かに暮らせる場所など、探そうと思えば幾らでも見つかる。しかしそれを勧めたところで、この戦いに終止符が打てる訳でもない。 ──己の使命は、魔王を討ち滅ぼすことだ。

2014-10-28 17:32:21
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

いまだ揺れる地面を踏み締め、眼前の巨人三体を睨み付ける。姿勢を低く保ち、重心を安定させる。 「──あなたさまの口から聞けて安心致しました」 やおらに作る笑顔。この戦場においてそれは酷く違和を感じさせるものであった。 「ええ、ええ。これで、安心して……」 祓い燃やす事ができようと。

2014-10-28 17:32:23
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

──地面を、勢いよく蹴る。 「【穢れ祓いの聖き焔よ】!」 真なる言を、唱える。揺らめく焔はより白く、より清く、より聖く、より浄く。それは最早、白い焔こそが刀身だと言えようか。三体の巨人。その向こうにいるであろう八衢の魔王。

2014-10-28 17:32:25
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

一先ずはこの巨人らをどうにかせねばなるまい。それは一か八かの賭けといえた。焔で出来た刀身は長く保たせることは出来ない。 ──迷っている暇は無い。そこは巨人の腕の射程範囲内。だが躊躇ってもいられない。聖焔は勢い任せに、剣を横に薙ごうと振り被った。

2014-10-28 17:32:28
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

横一閃に薙がれた斬撃は、土の巨人三体の腹部を裂いた。炎に焼かれ、今まさに身体中に火が回るであろう、その瞬間に――初めて、【八衢】は動いた。 右腕だけを、相も変わらず緩慢に。肩と垂直になるまで上げ、"あっちへ行け"とでも言う風に袖が動く。

2014-10-28 22:25:50
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

聖なる焔に焼かれ、ただの土石の塊となるその瞬間――それらは、アンゼリカの方へとゆっくりと倒れ始める! 炎を纏った土砂崩れのようになったそれは、アンゼリカの方へ……その華奢な身体を飲み込まんと降り注ぎ始める――!!

2014-10-28 22:28:58
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「なっ……!」 これが塊であったなら、避けるか斬るか出来ただろうか。思い切り踏み込んだ弊害か、二歩三歩後退した程度で、この土砂崩れを回避することは敵わないだろう。 「【──、────、──】」 何かを唱えながら、その姿は土の中へと埋もれていく。 ──辺りに、静寂が灯る。

2014-10-29 00:01:49
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

咄嗟のことで剣を手離したのだろうか、その土砂の中から剣だけが姿を見せていた。白金も、薄赤の修道服も、恐らく土砂の中。

2014-10-29 00:05:33
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

ばたり、と右腕を脱力させて地面に落とす。聖焔の埋もれたその土砂を見やる。 「―――」 ――まさかこれで終わりなわけはあるまい。【勇者】なんだから。そう考えると同時に、また面倒という感情が心の中で沸き上がっていた。 いっそずっとこの荒野に、横になって眠っていられたら良い。

2014-10-29 00:14:38
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

そう思いながら、その土砂を薄く開いた目でずっと見ている。何か、動きがあるまで。

2014-10-29 00:16:12
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

──【白焔が巻き上がる】。 「……、」 渇き切った土が、白金の髪からパラパラと落ちる。薄赤の修道服は所々、色濃く染まっている。土の中の砂利で傷付いた顔に表情は無い。 「【世界に害なす穢れを祓わん】」 引き抜いた剣に、白焔が再び灯る。それは先程よりも尚強く。

2014-10-29 01:54:05
【聖焔の勇者】アンゼリカ @Feu_5hw

「【世界に仇なす穢れを祓わん】」 唱える言葉は厳か。疾く唱える。疾く構える。疾く──奔る。 必要以上に掛かった負荷の所為か、頭がひどく痛む。 魔王が土塊を操るのが先か、己の切っ先が届くのが先か。 「【穢れ祓いの聖き焔よ】!!!」 ──向けられた切っ先の、行方は。

2014-10-29 01:54:19
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

「―――!!」 やはり生きていた。その予想は正しかった、が、起きざまに攻撃されることはトレィクの予想を上回っていた。 目を見開き、自分の至近の地面へ集中を向ける。目の前の地面が大きく隆起し、彼を守る壁として機能する―――

2014-10-29 10:20:59
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

――が、それも一足遅かった。 土壁は致命傷を防ぐ一手にしかならず、剣の軌道を僅かに逸らすにしか至らなかった。魔王の右肩に、剣の切先が突き刺さる。 「ァ、」

2014-10-29 10:23:15
【八衢の魔王】トレィク @m_earth_5hw

肩が熱い。鋭く痛む。全神経がまるで肩に集まってしまったような、その感覚――― 「が、ァ、あぁああぁあァああアッ!!」 それは、聖戦が始まってから彼が初めてまともに出した声だった。叫びが荒野に響き渡る。 ――と、同時に。鎖が一際大きな音を、立て始めた。

2014-10-29 10:26:46