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ElementaryGard
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県図書館で私の名前で検索したら『ミッキーマウス~』があったので棚に行ってみた。映画ではなく労働運動の棚。見つからず。どなたか館内で閲覧中のようです。
2014-11-08 15:15:05![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
同じ棚にあった『文化と闘争 東宝争議1946~1948』(井上雅雄・新曜社)を久しぶりに通読、借出。佐藤忠男による東宝争議論に刺激された論考で、敗戦後の東宝に花開いた(そして空中分解した)理想主義的組合運動を論じている。著者もあの争議の理想を高く買っているのがわかる。ただ(続く)
2014-11-08 15:18:11![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
今の私はそういう純朴な感想は抱けない。敗戦を経験した映画人たちが、映画の戦争責任を生真面目に考え、会社からのトップダウンな企画に甘んじず自分たちで企画を立てて作る志を持った(トップダウンだから制作現場の人間には戦争責任なしという自己免責の理屈への罪悪感があった)のは理解できる。
2014-11-08 15:21:54![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
理解できるけれど、労働運動とは「我らの生活環境を改善せよ!」が基本であって、「良い作品を作ろう!」ではないはず。それが敗戦の衝撃、戦争責任への自責(これは免責と紙一重の気がする)、新時代到来の夢、それから戦時中の労使一体体制の温存が重なって「良い作品を!」に走ってしまった。
2014-11-08 15:24:46![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
東映動画(今の東映アニメ)に労働組合ができたのはもっと後ですが、東宝争議のDNAはしっかり残っていたようです。初代組合委員長に取材したことがあります。「良い作品を作ろう!というスローガンはぼくは大嫌いだった。自分が委員長のときは絶対使わせなかった」
2014-11-08 15:27:07![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「それが代が変わるにつれてスローガン化していった。耐えられなくて『組合解体』まで唱えたほどだ」と言われたのがとても印象的でした。「生活環境を改善しろ!」が「良い作品を作ろう!」にすり替わることで何か別のものが隠ぺいされることを感じ取っていたのです。
2014-11-08 15:28:49![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
拙訳『ミッキーマウスのスト』には、戦後のハリウッドでも大規模なストライキがあって暴動どころか戦争状態だったことが詳しく綴られています。ですが「良い作品を作ろう!」と当時の映画人たちはけっして唱えなかった。
2014-11-08 15:33:34![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
良い作品かどうかは、労働運動ではなくアカデミー賞の選考の問題なのだし。ちなみに『ミッキー』にも記述があるようにアカデミー賞は映画界での労働運動のガス抜きとしてもともと始まったもので、余興に近かったのです。
2014-11-08 15:36:50![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「我らの生活環境を改善せよ!」が基本のはずが、「良い作品を作ろう!」と唱えてしまった東宝争議は結局占領軍の介入で崩壊。何しろ戦車までやってきた。 pic.twitter.com/nmWidXuYrM
2014-11-08 15:39:53![](https://pbs.twimg.com/media/B15lF8wCYAA7Iap.jpg:medium)
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撮影所を明け渡す組合員たち。このなかには若き黒澤明もいた。 pic.twitter.com/OQEIY1l7Rs
2014-11-08 15:41:03![](https://pbs.twimg.com/media/B15lXFwCMAAF_XK.jpg:medium)
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「良い作品を作ろう!」DNAはその後も生き残り、60年代に入って東映の大泉撮影所に、そして道隣りにある東映動画にも伝播。
2014-11-08 15:42:22![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「良い作品を作ろう!」のもと、組合主導で企画され、制作されたのが伝説のこのアニメ。『太陽の王子ホルスの大冒険』。1968年。youtu.be/5YjNe1EuJRY
2014-11-08 15:44:16![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
『ホルス』制作スタッフはやがて東映動画を去ってテレビアニメに活動の舞台を移した。『ホルス』監督の高畑勲によって作られた伝説の(また!)アニメがこれ。1974年。youtu.be/c9Ez1XIHYow
2014-11-08 15:48:14![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
当時の制作現場の内情はこれが詳しいです。yk.rim.or.jp/~rst/rabo/taka…
2014-11-08 15:49:40![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
>日本初の動画チェッカーである篠原は(アシスタントとして5話~28話に水田めぐみ、29話~52話は前田英美との二人体制)で、三十六時間不眠不休のチェックもザラであったという。
2014-11-08 15:50:36![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
>小山の平均睡眠時間は二時間。二人とも数週間帰宅もせず、長椅子で仮眠をとるだけの生活に愚痴一つこぼさずに耐えたと言う。
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>労働の総量は、おそらく通常のテレビシリーズの2~3倍であったと思われるが、制作の予算枠は決められていた筈で、労働時間に見合った残業手当などはなかったとも言われている。
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>こうした、常軌を逸したハードワークは、全て「より良い作品に到達しよう」とする高い志と、「全てのカットを自分でチェックしなければ」という職人的な意地に支えられていた。
2014-11-08 15:52:46![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
>一人でも病欠が出れば機能不全になってしまうという緊張感の中、「せめて一週間が10日になれば…」「天変地異でスタジオが壊れて欲しい」と真剣に夢想していたという。
2014-11-08 15:53:41![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
高畑、宮崎は東映動画時代に組合の委員長と書記長でした。組合の幹部だったんですよ。それが『ハイジ』では自分たちの手で過酷な労働条件をセットしたという皮肉!
2014-11-08 15:55:13![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
「我らの生活環境を改善せよ!」が基本のはずが、「良い作品を作ろう!」と唱えてしまったがゆえの喜劇。このねじれあってこそあの名作が生まれ、後のジブリになっていったのは更なる皮肉にして喜劇。
2014-11-08 15:56:39![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
日本のアニメ(まんがもですが)には敗戦の衝撃の影があります。代表的なものはこれ。安彦のコミカライズ版から引用。 pic.twitter.com/wwXfwmuQH9
2014-11-08 16:02:41![](https://pbs.twimg.com/media/B15qT-ZCIAARwvP.jpg:medium)