ニンジャスレイヤー二次創作「ザ・ムーン・イズ・オン・ジ・ウェイン」#1

Twitterで連載中の「ニンジャスレイヤー」の二次創作作品となります。 ◆日本語翻訳版ニンジャスレイヤー公式アカウント◆ https://twitter.com/NJSLYR 続きを読む
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ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

「でもトビッコは8つ買うからね?」『もう、好きにして』再び声が響く、少年の笑い声だけが。シキヨは生まれつき言葉を発する事ができなかった。笑う時も泣く時も、声を出す事はなかった。生体LAN端子で直結したサイバーサングラスが、彼女の言葉を、感情を表した。45

2014-11-23 23:40:24
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

その後も二人は会話を続け、トビッコ・スシの数は4つになった。そしてマグロ・スシの数の話を経て、キゲンの欠伸が三回目を数えた時、それは起きた。「それじゃまた…………どうしたの、姉さん?」それはキゲンにとって始めての事であった。無論、シキヨにとっても初めてのことであった。46

2014-11-23 23:44:19
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

シキヨは窓を見た。いや、窓の外を見た。朧に浮かぶ満月がネオサイタマを照らす、その姿を。「姉……さん?」キゲンの声に気付く事なく、彼女は窓の外を見た。闇と、文字情報の雨。シキヨの目にはそれしか映ることはない。だが確かにシキヨは見ている。今宵の、満月を。47

2014-11-23 23:48:42
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

シキヨはフートンから飛び出した。キゲンの声が聴こえる。しかし彼女は止まらぬ。肌着のまま走り出す。自室のドア、階段、くるりと回って廊下を走る。長年歩いてきた場所だ。つまづく事などありえない。そして突き当たりの右手のシャッターを上げ、中へ。48

2014-11-23 23:52:40
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

「ちょっと姉さん!?」後ろでばたばたと音が聴こえる。だが、それがどうしたと言うのだろうか。シキヨは目もくれず走る。工具散らばるガレージを飛び越え、二つ目のシャッターへ。シャッター越しに聴こえるタマ・リバーの水の音。彼女は躊躇うことなくシャッターに手を掛ける。49

2014-11-23 23:56:52
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

「姉さん!」キゲンが駆けつけた時、シキヨは座り込んでいた。タマ・リバーのほとり。緩やかに流れる黒い水面の側で、姉はひとりで座りこんでいた。いや、一人ではない。夜目をこらしキゲンは見た。姉の細い指を握りしめる、太くごつごつした無骨な指を。50

2014-11-24 00:04:31
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

川辺に打ち上げられたのは。白いスプリントアーマーを纏う大男。今までタマ・リバーを流れてきたのか、ひどく濡れている。息はあるのかわからない。フルメンポに覆われ、顔を伺う事はできぬ。だが、この大男は生きている。右手が折れたカタナを強く握る。51

2014-11-24 00:08:29
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

月光の下。黒いタマ・リバーがわずかに虹色を帯び、大男と女の輪郭をなぞる。女は左手を水面に差し出し、タマ・リバーのせせらぎを聴いた。大男の左手が、女の指先を優しく握りしめた。時折触れる川の波よりも、柔らかく。52

2014-11-24 00:12:19
ガパオパオ(asiazou) @noraosamu

ニンジャスレイヤー二次創作「ザ・ムーン・イズ・オン・ジ・ウェイン」#1終わり#2に続く

2014-11-24 00:13:52