竹熊健太郎さん「ポップアートはサブカルチャーではない」

亡くなった赤瀬川原平さんと彼と同時代の前衛芸術について断続的に考えているので、その参考としてまとめました。
アート ウォーホル サブカルチャー オタク 村上隆 ポップ・アート
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竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666
1. 最近、村上隆さんがマイブームなのですが、Twitterで勝手に呟いていたらご本人が降臨されて緊急対談? の様相を呈してます。今は村上さんのFacebookに場を移してディープな対話が続いてます。村上さん、お付き合い下さいまして有難うございます。
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666
2. 対話は「村上隆は、なぜオタクに嫌われるのか?」という私の呟きに端を発して、これがテーマのようになっていますが、村上さんからは「自分はオタク界からだけでなく、日本の美術業界からも、映像制作業界からも、イベント業界からも嫌われている」という自己申告を得ました。
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666
3. なんとも嫌われたものですが、なぜこういうことになっているのか。身も蓋もない言い方をするなら、各業界の下積みを経ないで、各業界の仕事のエッセンスを用いて短期間に成功したと思われ「嫉妬を買っている」からではないかと思うのです。村上さんは「それは誤解だ」と言うかも知れません。
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666
4. 誤解とは、村上さんは世間が思うほど「個人で儲けているわけではない」からです。村上さんは会社を経営しています。カイカイキキの事業内容によれば、元麻布本社・三芳スタジオ・NYオフィス・PONCOTON(札幌アニメスタジオ)があり、世界各地に直営ギャラリーを経営しています。
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666
5. それぞれ社員を数十人抱え、全体で何百人なのかは分かりませんが、社員に毎月給料を払っているわけです。給料の原資は村上さんの創作活動。日々創作する芸術作品によって、数百人の社員を食べさせているのです。世界を見渡せば、社員を雇用して「芸術生産」を行う芸術家は珍しくはないですが、
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666
6. 村上隆さんは間違いなく「芸術資本家」の世界最先端を走っていることに間違いはありません。社員の生活が村上さんの「芸術活動」にかかっているのですから、まさに「止まったら死ぬ」、冥府魔道に身を置いていると言えます。虫プロ社長時代の手塚治虫と、全く同じ立場に立っているのです。
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666
7. 村上隆さんは「芸術資本主義」という全く新しいアートを「創作」しているのです。ご存知のように資本主義は商品を生産し、それを販売して金銭に替え、儲けた金銭をさらに事業に投資していく。これの繰り返しで成立します。一度始めたら止めることが出来ません。止まったら死ぬしかないのです。
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666
8. 私は20年前から村上隆さんを存じていますが、最初から全速力で走り続けていることに畏怖の念を覚えています。その上周囲の嫉妬を買って飛礫が飛んでくるのですから、理不尽な境遇です。何度も言いますが、彼は稼いだお金で豪遊しているのではなく、自分の芸術活動に投資し続けているのです。
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666
9. しかし、そうは言っても、村上さんに批判が集まることは事実で、そこに全く瑕疵はなかったのでしょうか? 私は彼への非難の多くは「私腹を肥やしているという誤解に基づく嫉妬」だと思うのですが、そうした誤解を生み出したこと自体、村上さんに「戦略ミス」は無かったのでしょうか?
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666
10. もし村上隆さんに戦略ミスがあったとしたなら、それは村上さんの「のし上がり方」に反感を買われる理由があったのかも知れません。村上さんは常にアートの世界を照準を合わせて前進していますが、「のし上がり方」は、私には典型的なサブカルチャーのそれに見えるのです。
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666
11. サブカルチャーは元来、素人のカルチャーです。庶民の庶民による庶民のための、ストリートのカルチャーだと言ってもいいかも知れません。一方の美術・芸術はハイカルチャーと呼ばれます。本来は王侯貴族が宮殿で鑑賞する、金持ち・上流階級のカルチャーだと言えると思います。
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666
12. ウォーホルなどのポップアートは、上流階級の高級な趣味であったアートの世界に、ありふれた庶民のアイコンを持ち込んで衝撃を与えたのです。大量消費財のパッケージや、漫画のキャラクターを絵画や彫刻にして、何十万ドルという高値で金持ちが取引する所に「批評性」の本質があるのです。
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666
13. ウォーホルはあくまでハイカルチャーの文脈でサブカルチャーを利用したので、そのため生前はアメリカ国民の反感を買ったと言います。「俺たち庶民の文化で商売しやがって」と、村上隆さんと全く同じ非難を受けていたのです。これは正統なポップアートが必ず受ける受難、洗礼だと言えます。
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666
14. ここでハイカルチャーでの成功と、サブカルチャーの成功の違いについて述べます。ハイカルチャーでの成功とは、1つしかない自分の作品が高値でお金持ちに売れることです。自分の絵画や彫刻が高く売れれば売れるほど、芸術家のランクが上がります。基本的に、庶民とは関係がない世界です。
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666
15. サブカルチャーの成功とは、作品を大量に生産し、大量に買ってもらうことです。顧客は王侯貴族やお金持ちではなく、普通の庶民です。なので、庶民が理解できない難解な作品は嫌われます。村上隆さんは、日本で誕生し、大衆化したアニメのイコンを使って、ハイアートの世界で成功しました。
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666
16. つまり、村上アートは庶民にとって「分かりやすい」のです。日常に転がっている見慣れたものが描かれているからです。それを欧米や中東の大金持ちが買うわけです。そこに「嫉妬」が生まれていると思われます。しかし重要なことは、村上アートは「萌え」を描いたから凄いのではなく、
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666
17. 「萌えの文脈を共有しない欧米人に高値で買ってもらうスキーム」を単独で構築したから凄いのです。これは生易しいプロセスではないと思います。萌えを欧米で受け入れて貰うために村上さんが用意した理論武装が「スーパーフラット」という美術概念で、村上さんの発明品の1つです。
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666
18. もう1つ村上さんが誤解された要因は、作品がオークションで超高額で落札された報道です。これは彼の名を一躍有名にしましたが、同時に「私腹を肥やしている」と憶測も呼びました。しかしジョン・レノンのスケッチや手描きの楽譜が高額で落札されたら、ファンは喝采でこれを迎えるのです。
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666
19. サブカルチャーの価値を誰の目にも否定出来なくさせる唯一の方法論が、「作品を大衆が買い求め、そのことでお金を儲ける」ということです。成功したサブカルチャーのアーティストは、これで何十億も稼ぎます。ハイカルチャーのアーティストは、王侯貴族・富豪が作品に何億も支払います。
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666
20. 儲けた金額は同じであっても、ハイカルチャーとサブカルチャーでは「顧客が違う」わけです。フィギュア作家の顧客はアキバの萌えオタですが、村上隆の顧客は欧米のお金持ちです。なので日本のオタクは、「俺たちに向けられた作品ではない」として、村上さんを敵視するのではないでしょうか。
竹熊健太郎《地球人》 @kentaro666
21. 長くなったのでこれ位にしますが、私が「村上隆問題」に関心を抱いているのは、ムラ社会の「内と外」の感覚を、ピンポイントに刺激しているところです。それ以外にも「現代美術と資本主義」に強引に橋を渡した手腕にも注目しております。極めて興味深い作家だと思います。
追記(まとめ人連ツイ)
もうれつ先生 @discusao
togetter.com/li/749288 竹熊健太郎さん「ポップアートはサブカルチャーではない」 ↑これ、後から思い返したんだけれど、『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』のジャケは非サブカルチャーか?ってのあったな。 pic.twitter.com/pggFCngb6S
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もうれつ先生 @discusao
ウォーホルの『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコ』のジャケはあきらかにポップアートだし、しかもサブカルチャーのアイコンとしても認められている。コンテンポラリーアートをコンテンポラリーアートとして評価するには「文脈」を読み込まなければならないが、これはその手間を省かせている。
もうれつ先生 @discusao
twitter.com/kentaro666/sta… ハイカルチャーとサブカルチャーでは「顧客が違う」 一方に↑のようなテーゼがあり一方で『ヴェルヴェッツ&ニコ』のような事例がある。これはポップアートの在り様が可変的であるということで、村上隆も似たようなことを言っている。
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コメント

もうれつ先生 @discusao 2014年11月24日
12から始まるポップアートの話は、乗越たかおさんの説くダンスの歴史にリンクすれば、ウォーホルや村上隆はマーサ・グレアムやマース・カニンガムに当たるようなポジションである、ということが言えるかな。
もうれつ先生 @discusao 2014年11月24日
そうなると、コンテンポラリーダンスはポップアートと同じく非サブカルチャーということになるけど(まぁ、特にそれに異論はないが)。
frisky @friskymonpetit 2014年11月24日
オタクかつモダンアート鑑賞を趣味にしているわたくしも、例に漏れず村上隆は嫌い。理由を自問すると…自分の自意識の問題のように感じる。「我々の文化に敬意を示していないくせにそれで儲けている。一方、儲けられない我々(のお金に対する姿勢)を軽蔑している」というような。
もうれつ先生 @discusao 2014年11月24日
もう一つ興味深いのは「ハイカルチャーとサブカルチャーの成功の違い」で、サブカルチャーって昔は売れないこと・マイナーであることこそが価値基準だったよなって感想があって、あらためて文化的なパラダイム・シフトがあったことを確認した次第です。
もうれつ先生 @discusao 2014年11月24日
「文化的なパラダイム・シフト」が起こったのは晶文社によって植草甚一がサブカルチャーの先駆として脚光を浴びた70年代。
言葉使い @tennteke 2014年11月24日
ここまで村上隆批判を誤解している人も、珍しいんじゃないか?そんなことはない?
ワス @wsplus 2014年11月24日
自分で描いたり彫刻してなくて、プランニングだけしてる人は日本じゃ「芸術家」と認めないからでは? デュシャンとか日本でそんなに人気ないでしょ。批評家は好んで使う題材だけど。
もうれつ先生 @discusao 2014年11月24日
頭書きの「赤瀬川原平~」と本文を無理矢理こじつけると、60年代初頭のハイレッド・センターと村上隆&カイカイキキが等分で並ぶことになり、前者は匿名的・非商業的行為として(今では)賞賛され、後者はあざとさと「のし上がり方」故に誹謗されるという差異が存在する。
もうれつ先生 @discusao 2014年11月24日
いらぬツッコミをしておくと、橋本治のテーゼに<日本にハイカルチャーという存在はない、日本の文化はすべてサブカルチャーに位置づけられ、上位にあるものは「文化」ではなく「儀式」だ。>というのがある。
もうれつ先生 @discusao 2014年11月24日
それは竹熊さんの指摘していることと少しズレている(自制も30年ほど違う)が、橋本テーゼも無理矢理抱合せてみると、ハイカルチャーもサブカルチャーも質的な問題ではない・質的な差異が(へんな言い方だが)本質的な問題ではない、ということになりそうだ。
もうれつ先生 @discusao 2014年11月24日
すなわち< 儲けた金額は同じであっても、ハイカルチャーとサブカルチャーでは「顧客が違う」わけです>という、享受する側の在り方がジャンルのちがいとなっているということ。
silly (蓮實 智久) @sillism 2014年11月24日
これを読む限り竹熊さんは2点誤解していると思う。1点目はなぜ「村上隆はなぜオタクに嫌われるか?」非オタである村上さん(御本人が「オタクになりたかったがなれなかった」と明言されています)はオタク文化の本質が理解できず表層的な部分をなぞっただけの作品をさもオタクの作品に見せかけて制作・出品したことによりオタク界隈から顰蹙を買ったことが発端だったということ。
silly (蓮實 智久) @sillism 2014年11月24日
2点目は竹熊さんがいうところの「芸術資本」という点。芸術資本というもの自体が存在するかどうか僕は分かりませんが、村上さんが画策したのは表層的なオタク作品で欧米のアートビジネスに参入しようと考えたことで芸術資本家になるということではないのでは?と思います。「芸術資本家」というのが芸術家+資本家という意味ならばビジネスパーソンであるという部分には同意しますが・・・
もうれつ先生 @discusao 2014年11月24日
村上隆の在り様は、サブカルチャーを援用することでハイカルチャーに属しながらハイカルチャーを相対的に捉え直そうというような「枠組の転換≒パラダイム・シフト」とすると、パラダイム・シフトの提唱者トマス・クーンに近いモノがあるのかもね。
R・こばやし/dion軍 @R_Kobayashi 2014年11月24日
アート論についてはわからんので置くとして、村上隆の一連の作品に違和感があるのは事実。なんというか自分はPCエンジンとかメガドライブで遊んでるのに「ファミコン面白いじゃないか!」って理解ある大人っぽく語って、それをゲーム知らない世間に「ファミコンは素晴らしいよ!」って大声で叫んでて、いやそれPCエンジンなんだけど……っていう感じ(わかりにくい
もうれつ先生 @discusao 2014年11月24日
トマス・クーンはパラダイム・シフトという考え方を提唱し、それまで絶対的な存在としてあった「科学」を相対的に捉え直そうとした(そして猛烈な批判に晒された)。
もうれつ先生 @discusao 2014年11月24日
しかしクーン自身は、クーンに影響を受けたラディカルな「クーン派」(例えばエディンバラ学派http://bit.ly/1xsiZAJ)のように科学そのものを相対化する立場には批判的で、あくまでも「科学」は他の文化概念とは異なった独自性を持つものとして考えていた。
R・こばやし/dion軍 @R_Kobayashi 2014年11月24日
ゲームやアニメとか、そういうカルチャーを悪い意味で「利用して」芸術にするまではいいんだけど、村上氏の作品が「クールジャパンたるアニメやゲームの最前線」だったり「象徴」ではないのに、そういう評価してる層がいるってのが「ちがうよー!」って言いたくなるというかw
もうれつ先生 @discusao 2014年11月24日
そのへんは、ハイカルチャーに殉じようという村上隆と似たポジションであり、オタクな「エディンバラ学派」のクーン批判というのも対比できるもののように思う。
もうれつ先生 @discusao 2014年11月24日
引用“悪いけどこの話ってもう10年前どころか20年前に通りすぎて終了してる話だよなあ。”https://twitter.com/toronei/status/536859853512130561
もうれつ先生 @discusao 2014年11月24日
ま、この手の話は既存の知見を再構成するようなものでもあるわけですから、詰まらなければ「通り過ぎて終わってるつもり」になってればいいんじゃないかな。
ブルーハワイ炊き込みごはん @B_H_T_Rice 2014年11月25日
「村上隆はなぜオタクに愛されようとしないのか?」オタクから露骨な搾取をする盗作犯カオスラウンジ(無商標)を引き立て離反する茶番劇といい、それに絡むツイッターでのやりとりを見る限り好かれる努力をしていない。私も「複数人を装って批判している」と村上隆に中傷されましたから。
源八 @gen_pati 2014年11月25日
村上隆が嫌われたのはオタクを理解せず、萌えを「萌えの文脈を共有しない欧米人に高値で買ってもらうスキーム」=欧米人の日本とオタクに対する偏見、オリエンタリズムでくるんで金稼ぎしたせいでしょ?大金を稼いだというより金の稼ぎ方が汚いから叩かれた。
もうれつ先生 @discusao 2014年11月26日
まとめを更新しました。
もうれつ先生 @discusao 2014年11月27日
まとめを更新しました。
もうれつ先生 @discusao 2014年11月27日
まとめを更新しました。橋本治「サブカルチャーの不思議」引用追記
もうれつ先生 @discusao 2014年11月27日
マジック・アレックスは72トラックという「プラス」の詐欺行為で失敗したけど、オノ・ヨーコやラ・モンテ・ヤングらフルクサスの先達となるジョン・ケージは『4分33秒』というマイナスの詐欺行為で見事にARTの傑作をものにした。
もうれつ先生 @discusao 2014年11月27日
しかし『4分33秒』って曲はほとんど「とんち」の領域だよね。さるマンに出てくるギャグ・レベルのことをマジにやって「芸術」にしているわけですから。。。http://ja.wikipedia.org/wiki/4%E5%88%8633%E7%A7%92
もうれつ先生 @discusao 2014年11月29日
http://mavo.takekuma.jp/manga/memo/aboutmavo.html【よりぬき たけくまメモ マヴォについて】流し読みで看過してたけど、竹熊さん、ここですでに「ハイアートであるとポップアート」と書いてたね…
もうれつ先生 @discusao 2014年11月29日
まとめを更新しました。
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