[コンパクトな言葉の具体的な説明]が重要です―『[新編]叛逆の物語』パンフレットより
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話の前振りとして,まずはこんな文章を見てみましょう。 「今日は《冬至》。一年の中で昼が最も短い日ですね」 前半に出てくる《冬至》という言葉。もしこの言葉の意味を知らなかったとしても,慌てる必要はありません。後半の文が,《冬至》が何であるかを説明する文だからです。
2014-11-26 18:12:28例に挙げたこの文章で使われている構造を一般化すると,こうなります。 「○○は[コンパクトな言葉]です。[コンパクトな言葉の具体的な説明]ということですね」 先の例で言うと,[コンパクトな言葉]が《冬至》で,[コンパクトな言葉の具体的な説明]が「年の中で昼が最も短い日」です。
2014-11-26 18:19:27この構造を持つ文章を目にした時,書き手の主張を読み取る上で重要になるのは,[コンパクトな言葉の具体的な説明]です。書き手は[コンパクトな言葉]を[コンパクトな言葉の具体的な説明]の意味で用いているからです。
2014-11-26 18:26:14もし[コンパクトな言葉]のところで文章を読むことを止めてしまったら,書き手の主張を理解することはできません。それどころか,最悪の場合,[コンパクトな言葉]に記された字面に騙されて,書き手の主張を誤解してしまいます。
2014-11-26 18:29:11実は,この構造を持つ文章が,『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編]叛逆の物語』のパンフレットのインタビュー記事の中に,少なくとも2つ存在します。一つは新房昭之さんのインタビュー記事の中にあり,もう一つは虚淵玄さんのインタビュー記事の中にあります。
2014-11-26 18:32:03まずは,新房昭之さんのインタビュー記事。 「今回登場するまどかは、神様になった記憶を置いてきた本物のまどかなんです。決して偽物やつくりものじゃないんですね」 [コンパクトな言葉]は「本物のまどか」で,[コンパクトな言葉の具体的な説明]は「決して偽物やつくりものじゃない」です。
2014-11-26 18:35:45つまり,新房昭之さんが言う「本物のまどか」とは「偽物やつくりものではない」という意味であることが分かります。さらに言うと,新房さんは,「本物」という言葉を,「偽物」「つくりもの」の対義語として使っているのです。
2014-11-26 18:38:35もし,「今回登場するまどかは、神様になった記憶を置いてきた本物のまどかなんです」だけで読むのを止めてしまうと,新房昭之さんの主張を誤解してしまいます。例えば,「本物のまどか」とは「神様になった記憶を置いてきたまどか」である,といったような誤解をしてしまいます。
2014-11-26 18:40:26次に,虚淵玄さんのインタビュー記事です。 「今回、まどかは、ほむらにねつ造されたキャラクターとして登場します。ほむらによって都合の悪い記憶を摘み取られている状態ですね」 [コンパクトな言葉]と[コンパクトな言葉の具体的な説明]は,それぞれ一体どれでしょうか。
2014-11-26 18:44:23[コンパクトな言葉]は「ほむらにねつ造されたキャラクター」です。そして[コンパクトな言葉の具体的な説明]は「ほむらによって都合の悪い記憶を摘み取られている状態」です。
2014-11-26 18:44:43つまり,虚淵玄さんが言う「ほむらにねつ造されたキャラクター」とは「ほむらによって都合の悪い記憶を摘み取られている状態」という意味であることが分かります。さらに言うと,虚淵さんは,「都合の悪い記憶を摘み取る」ことを「ねつ造」と表現しているのです。
2014-11-26 18:46:35もし,「今回、まどかは、ほむらにねつ造されたキャラクターとして登場します」だけで読むのを止めてしまうと,虚淵玄さんの主張を理解することはできません。例えば…
2014-11-26 18:49:22例えば,「事実でない事を事実のようにこしらえること(『広辞苑』第六版)」という辞書的な意味から,「ほむらは,姿形がまどかにそっくりな人形を作り,あたかもまどかがするような言動をさせている」といったような誤解をしてしまいます。
2014-11-26 18:51:11数多くの先人たちが言ってきたように,「文章には文脈がある」「文章から一文だけを抜き出しても意味を為さない」ということを,今回改めて痛感させられました。
2014-11-26 18:54:09