筍提督と僻地の泊地 (7)

海軍大将でありながら艦雄として艤装を背負う提督・筍の、事情が変わった海に立ち向かおうとする、なんだかんだで第2編に突入した日記。 (2回目の日常編; 誕生~シンガポール小紀行~新天地)
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筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

「今までは、今日話すことを大まかに確認してただけさ。これから詳細を決めたりする。後回しはできない」 『そうですか……しかし、朝食はどうされるのです?』 「多分、飯どころじゃないよな」 「そうですね」 「ね」 設計室に不思議な団結力が生まれておいででした。 #南方秘書日記

2014-11-30 23:03:37
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「そうだ。手が空いたらでいいから、鋼材と燃料をもってきてくれないか」 『畏まりました』 「頼んだ」 提督から私に向けられた言葉はそれが最後で、次の瞬間からは、汎用駆逐艦の装備の見直し案が話されていました。 私は蚊帳の外のような気分で、そっと設計室を退出しました。 #南方秘書日記

2014-11-30 23:07:43
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疎外感は覚えましたが、それだけ提督方は真剣になって、私たちを守ることを考えていらっしゃるということです。あの飛翔体の出現も、それを画策しなければならないほど重大な事態なのでしょうから。尤も、私はその飛翔体をこの目で見ていないので、よく分かりませんが……。 #南方秘書日記

2014-11-30 23:12:01
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そういえば、髪については、何も仰られませんでした。秘書艦室に戻った私は、頭の後ろでまとめずに流している髪を幾度か撫でます。 すぐに我に返り、忘れないうちに、鋼材と燃料をまとまった数だけ用意する作業に移りました。 やはり邪魔になって、結局、髪はまとめてしまいました。 #南方秘書日記

2014-11-30 23:15:26

日常に帰す

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昨夜、鳳翔が眠りに落ちて間もなく始まった会議は、昼休憩の直前に終わりました。肩は凝るわ目は痛むわでとても疲れましたが、有意義な会議でした。 決定した事項は、新時代艦の兵装から軍用機の装備の部品一つ一つに至るまで、多岐に亘ります。 #僻地の泊地日記

2014-11-30 23:20:48
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鳳翔が持ってきてくれた鋼材と燃料は、他の皆が朝食を食べ始める時刻を待たずになくなり、ちょうど<ゆら>たちの腹の虫が鳴き始めていました。 「はー、よかった。これでちゃんとしたご飯が食べられる!」 <ゆうばり>も伸びをしながら、心の裡をそっくりそのまま吐露します。 #僻地の泊地日記

2014-11-30 23:23:14
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『お疲れ。自分の分を片付けたら、さっさと食堂に行っていいぞ』 「はーい」 二人は疲労を感じさせない笑顔で返事をすると、目にも留まらぬ速さで書類を片付け、気付けば設計室の扉の外にいました。 思わず笑ってしまったのと同時に、私の腹も音を立てて鳴ります。 #僻地の泊地日記

2014-11-30 23:28:46
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私は慌てて、鋼材が入っていた箱に書類を入れ、燃料の空き缶が詰まった別の箱と一緒に抱えて工廠を出ました。 狭い視界の中に、工廠の出入り口の横にいる、紺のYシャツと白のロングスカートの女性を認めました。 「提督、お疲れ様です」 『うおっ、びっくりした』 #僻地の泊地日記

2014-11-30 23:32:27
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それは紛れもなく鳳翔でした。 『待っててくれたんだ?』 「<ゆうばり>たちが出てくるのが見えましたので、提督もお見えになるだろうと思いまして……ああ、手伝いましょうか」 『悪いね』 空き缶だらけの軽い箱を渡し、執務室だけでなく食堂もある管理棟を一緒に目指します。 #僻地の泊地日記

2014-11-30 23:34:18
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一旦執務室に戻り、書類を置いた私は、すっかり解放された気分でした。首を巡らせたり眉間を押えたりしながら、鳳翔と肩を並べて廊下を進み、食堂の扉を開きます。 直後、皆の視線がこちらを捉え、銘々に挨拶をしてくれました。久方振りの感覚です。 #僻地の泊地日記

2014-11-30 23:40:37
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その食堂に、妙な違和感を覚えます。戦艦らが集まっている方です。 見れば、陸奥の向かいに大和が座っています。ああ、日記を読んで以来、様子が気になっていたが、やっと会えます。 ……が、違和感の正体はそれではありませんでした。 金剛型が五人いるのです。 #僻地の泊地日記

2014-11-30 23:54:21
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『何か多くないか……?』 私が呟いたのと、大和が立ち上がったのが同時でした。大和は控え目に手を振ると、金剛型のうちの一人を半ば強引に立ち上がらせ、手を引いて連れてきます。 大和が近付いてくるにつれて違和感はその存在感を増していきました。まさか、その正体は……。 #僻地の泊地日記

2014-11-30 23:59:48
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『ローリー!』 私は声を上げてその名を呼びました。それは金剛型のダブりなどではなく、金剛型の服に身を包んだローリーことル級改でした。 ローリーは目の炎を真っ赤にして、スカートで腿を隠そうと必死です。 「そんなに見るな、恥ずかしい……」 『日本語も完璧だな』 #僻地の泊地日記

2014-12-01 00:04:26
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『少しは打ち解けたと聞いたが』 「ああ、駆逐艦と潜水艦以外は、空いた時間に話しかけてくれる。退屈しない」 『そいつは何よりだ』 心なしか、ドックで目を覚ました時よりも、口元が柔らかくなった印象を受けます。ストレスが減ってきた証拠でしょう。 #僻地の泊地日記

2014-12-01 00:09:28
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私は次に大和を見ます。 『上官に知らせることなくインドネシア海軍の世話になるたぁいい度胸だ、超弩級戦艦さんよ』 「す、すみません! でも昭南からお誘いがあって……」 『昭南って、シンガポール司令部?』 大和は慌てたように肯きました。 #僻地の泊地日記

2014-12-01 00:13:32
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『いつ頃の話だ?』 「春の大作戦が終わった後のことだったと思います。大和はピーコックに行かせてもらえなかったので、手持ち無沙汰なこともあって……」 『ああ、そりゃ悪かった。で、誰から誘われたんだ?』 「言っても分かるかどうか……」 #僻地の泊地日記

2014-12-01 00:17:54
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大和は、シンガポール司令部の山形という名の中尉だと言いました。確かに、私の知り合いにはいない苗字です。 『……まぁ、知らないってことは、気にしても無駄ってことか』 私はひとりごちると、二人には笑顔を作って見せました。 #僻地の泊地日記

2014-12-01 00:21:57
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『さ、面倒なことは忘れて飯を食おう。お前たちの隣に座ろうかな』 その場の思い付きで、料理を取ってきた私はローリーの、鳳翔は大和の隣に座りました。 席に落ち着いて気付いたのですが、料理がいつもより一品増えていて、果物の盛りも少し豪華になっていました。 #僻地の泊地日記

2014-12-01 00:26:21
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ふと調理場の方を見れば、間宮とは別に、割烹着姿の子がいます。 大和に誰かと訊けば、伊良湖という名の給糧艦とのことでした。間宮のお助け役として本土から派遣されたらしく、間宮の負担が減ったので、料理を増やすだけの余裕ができたとか。 #僻地の泊地日記

2014-12-01 00:30:26
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

これは後で挨拶に行かねばなりません。……が、今はもう空腹が限界です。私は手を合わせると箸を持ち、間宮特製の肉じゃがに有り付きました。会いたかった大和やローリーとも話すことができたので、久々の食堂での食事はなかなかに充実していました。 #僻地の泊地日記

2014-12-01 00:35:10
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

食事を終えると、清霜と天津風に、明日執務室へ来てもらうよう頼んでから食堂を出ました。扉の外に、<ゆら>が立っていました。 「提督さん。今度は、艤装を全部貸してもらえる?」 『ああ、総点検か。俺はきっと寝てしまうな』 「うん、多分ぐっすりだと思う」 #僻地の泊地日記

2014-12-01 00:37:55
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

「でも、MIが終わったんだから、二日や三日くらい熟睡したっていいんじゃない?」 『1次新はどうなる』 「提督さんが寝てる間は何とかする。その代わり、起きたらちゃんと手伝ってもらうからね」 『はいはい』 私は二つ返事で艤装を外し、<ゆら>に渡しました。 #僻地の泊地日記

2014-12-01 00:41:15
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

艤装のない、本当の意味で軽くなった体。その重さを椅子に預けた途端、私を強烈な睡魔が襲いました。すぐにでも寝てしまいそうです。 「肩をお揉みしましょうか?」とは鳳翔です。また最上にでも頼もうと思っていましたが、折角なので彼女にお願いすることにしました。 #僻地の泊地日記

2014-12-01 00:45:46
筍提督と僻地の泊地@新時代鎮守府 @storyoflingga

肩に適度な刺激が加わり、非常に心地いい。私は一時の楽園の中で、静かに口を開きました。 『1次新だけどな、俺も改造されることになった』 「どのように変わられるのです?」 『SM-2やESSMの搭載量を増やすために、VLSのセルを増やすんだ。それから艦橋だな』 #僻地の泊地日記

2014-12-01 00:47:59
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