駄提督のクリスマス休暇

竹村京 @kyou_takemura

「ただでとは言わな……」 『ホノルルマラソンしよっ』 「ハワイまで遠洋航海の許可やるから一人で走ってこい」 『えー、提督と一緒じゃないとやだー！』 長門の張りのある低めの声で可愛い口調を使われると怖いんだよ。#落ちぬい二次

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『ね、ホノルルマラソンしよっ！』 「お前、その日の用件知ってるだろ？」 『提督がちゃんと付き合ってるなら遠慮するさ。でもそうじゃないんだろう？』 「そりゃまあ、そうだが」 『じゃ、ホノルルマラソンとお肉とクリスマスは陸奥の監視ねっ！』 条件スゲー増えた。#落ちぬい二次

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「……わかった、わかったよ」 『それじゃあ明日だな。よろしく頼むぞ、提督』 長門は厳しい女だ。 俺が優柔不断なのはわかってる。居心地の悪い思いをしたくなければさっさと態度を決めろと、長門はそう言っているのだ。#落ちぬい二次

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「ギンブチやモグリみたいにはっきりできりゃ苦労しねえんだけどなあ……」 もう一本銜えた煙草はうまくなかった。#落ちぬい二次

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そして運命の日である。 早朝、官舎の駐車場に行くと既に女性陣三人は揃っていた。うん、五分前行動は軍隊生活の基本だからね。#落ちぬい二次

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神通はタイトなジーンズにベージュのピーコート。靴は膝下までのローヒールのブーツでまとめている。 凛々しさの中に女らしさも忘れず、でも日本刀を構えたらきっちり決まる動きやすさ重視のコーディネートだった。#落ちぬい二次

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不知火は紺のダッフルコートをきっちりと着込んでいる。足元はいつものスパッツではなく脛までのレギンスで、いつもの革靴と相まって年相応の中学生スタイルだ。#落ちぬい二次

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「司令？」 不知火が怪訝そうな顔で俺を見る。 「どうした、なんかおかしいか？」 「髭、剃ってください」 「いつも通りだぞ。髭くらいいいじゃん」 ていうか無精髭ってファッションだよ？#落ちぬい二次

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「駄目です。人が多い所に行くんですから身なりに気を付けてください」 神通に目をやると、神通も控えめに頷いている。 「へいへい、髭剃ってくるわ」 男のお洒落を理解しないやつらめ。#落ちぬい二次

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官舎に戻ろうとすると浜風も注文を付けてきた。 「スカジャン以外のコートないんですか？」 「あん？ スカジャンいいだろ、かっこいいしあったかいし」 ぐっと背中に舞う龍を見せてやる。#落ちぬい二次

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「TPOを弁えてください、龍を背負って行くような場所じゃないんですから」 「つってもな、お前も言えた格好じゃねーと思うんだよ俺は」 見たら笑うから出来るだけ見ないようにしてたんだけど、浜風の格好は最高だ。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

どんな格好かってーと、白いセーターとフレアスカート、黒タイツというのはわかる。 その上にピンクのダウンジャケットとスキーウェアの相の子みたいなピンク一色のジャンパーを羽織って、足元はヒールの高いブーツときた。#落ちぬい二次

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ゲレンデならベストマッチかもしれないが、これから行くところに合わないのは浜風も同じだろう。 どうせ自主トレに使うスポーツウェアを買いに行ったついでに売れ残りの安さに負けて買ったってオチだろう。#落ちぬい二次

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「い、いいんです！龍とか刺繍されてませんし！」 ダサい自覚はあるようで、顔を真っ赤にして反論してくる。 けどな、多分アンケートを取ったらそのピンクジャンパーより龍を背負うスカジャンの方が圧倒的人気だわ。#落ちぬい二次

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「あの」 「神通もか」 言ってみ、と目で促す。 「上着の下にアロハシャツ一枚ではさすがに寒いと思います」 見破られてやんの。 神通すげーな、スカジャンの上からアロハは見えないようにしてたんだぞ。 「わかったよ、ちょい待ってろ」#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

自室に引き返して電気シェーバーで軽く髭をあたる。 お気に入りのアロハとスカジャンを脱ぎ捨ててクローゼットを漁る。 確か昔、長門が面白がって押し付けた服とコートがあったような…… 「あったあった。これなら文句はねえだろ」 出てきたのは黒いセーターと派手なパーカー。#落ちぬい二次

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とりあえずTシャツを着て、口うるさい秘書艦殿にメールでお伺いを立てる。 『セーターとパーカーどっちが文句ない？』 『パーカーが似合う年齢と見た目ですか？』 わーお、辛辣辛辣ぅー。 不知火のやつは有能なくせに地味に調子に乗りやすいから困ったちゃんなのだ。#落ちぬい二次

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お仕置きはまた今度にするとして、セーターを着込む。自慢のキタローヘアが静電気で顔面に張り付いて気持ち悪い。 上着はダークグレーのトレンチコートがあったんでこれで。 髭は剃った、アロハは脱いだ、スカジャンも脱いだ。 これで文句はないだろ。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

車に戻るとピンク頭だけがいた。 「おう、これでいいか」 「ええ、先ほどよりはるかに。……司令？」 「なんだ、髭は剃ったぞ」 「いえ、それは見ればわかるんですが」 さらに三秒くらい俺の顔をしげしげ見つめるピンク頭の犬っころ。#落ちぬい二次

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「なんというか、髭を剃るとそれなりに若い顔立ちなんですね」 すげーズケズケと物を言うねこの小娘は！ 「実年齢も若いんだよ！」 それなりに、と付くけども。#落ちぬい二次

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で、神通と浜風どこ行った？ 「神通教官が連れて行きました。すぐ戻ると言っていたのでそろそろ……戻ってきましたね」 「お待たせしました」 二人は艦娘の官舎の方から小走りに戻ってきた。#落ちぬい二次

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神通は前のままだが、浜風はギャグじみたピンクジャンパーから白いダッフルコートに着替えていた。 「スキーウェアやめたん？」 「す、スキーウェアじゃないです！」 「私のコートです。かわいい服装をしたいですものね？」#落ちぬい二次

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言われてみれば確かに余った袖をそれとなく折り上げている。もとは丈が短めみたいだけど、ちっこい浜風が着ると裾が太腿まである。でも胸周りはぴったりでやんの。 「……はい。ありがとうございます、神通教官」#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

「どういたしまして。でも、今日は「教官」はなしにしましょう」 せっかく遊びに行くんだもんな。 「じゃ俺も名前で呼んでいいぞ」 さすがに艦娘の本名を出すのはセキュリティ上駄目だが、俺の名前はそもそも公開されてるから問題ない。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

「わかりました。兵頭さん」 「司令を兵頭さんと呼ぶなんて、なんだか不思議な感じです」 当たり前のように上官を名前で呼ぶ浜風と少し戸惑っている神通に対して、#落ちぬい二次