宵の血に依る契約城:一日目夜

──そして時は移り。
0
前へ 1 2 ・・ 12 次へ
ウィータスラーウァ @VitaslavaCC

誰か、話し出さないだろうか。そうすれば、少しでも“見える”ようになるのに。 「え……っと……、アケイシア、アルケーディアス。話、邪魔は、しないから」 何か。誰か。何でもいいから――。 所在なく、落ち着きなく、ふらふらと視線を彷徨わせながら。

2014-12-26 16:41:47
アルカ @Conces_arca

「……遠慮はしていない」 嘆息。何を言おうとヴァエクの態度が変わることは無いだろうが。 ーー寧ろ、変わった方が怖いか。 己の思考にそんな物は見たくないなと結論を出す。 閉じかけた扉の向こうに適当に摘むものを、と要求する。気配が遠のくと同時、小さく音を立て扉が閉まる。

2014-12-26 19:02:19
アルカ @Conces_arca

残る椅子は一つ。必然、選択肢は存在しない。 特に位置をずらすことも無く、腰掛ける。僅かに存在を主張する様に右腰の剣が鳴る。ほぼ無意識に押さえるように右手を乗せる。 意図せず助けを求める視線を無視した形になったウィータスラーウァには、僅かに申し訳なさを感じたが。

2014-12-26 19:02:22
アルカ @Conces_arca

「適当に、と注文をしたが。良かっただろうか」 念の為に、と確認の言葉。視線はシアとウィータスラーウァへ。 ヴァエクはハナから気に入らなければ注文を付けるだろうと気にもしない。

2014-12-26 19:02:26
シア @ConcesC_Cia

指図するなと一蹴される覚悟すらしていたもので、それまで見たよりも大人しい印象をヴァエクに受けて、唖然としていた。そしてウィータスラーウァが座らされた(置かれた)席もまた、私には意外だった。 「──」 誓う先は他の者であったにせよ、餌と、嘲りの言葉を否定した事も、理由なのだろうか。

2014-12-26 20:01:50
シア @ConcesC_Cia

(何処から何処まで?) 線引きの判断はつかない。されども初見の印象と落差の激しさからなのか。私は然程、ヴァエクが怖いとは思わなくなっている事を実感していた。 「邪魔、なんて」 私の隣に位置を定められた彼女はと言えば、所在無さげに視線をうろつかせていた。その様子に私は眸を瞬かせる。

2014-12-26 20:01:54
シア @ConcesC_Cia

この侭なら私とアルカ、ウィータスラーウァとヴァエクが対角線に向き合う形になる。必然、話題は共有する事になるだろうし、それ自体にあまり抵抗は無いのだけど。扉の閉じた音に、顔を上げて。 「あ、有難う。大丈夫です、多分」 そう言えば昼は何も口にしていなかった事を、今更になって思い出す。

2014-12-26 20:01:58
シア @ConcesC_Cia

多分、なんて曖昧な答えになってしまったと思いながら、ふと。 「ウィータスラーウァは?何か好きな物とか……食べられない物は」 食糧を奪い合うような環境に置かれていたらしい彼女に、食べられない物等と問うのは躊躇われたけれど。話題の序で、拒否反応が出るような物が有るなら聞いて置こうと。

2014-12-26 20:02:04
ウィータスラーウァ @VitaslavaCC

振られた問いに、戸惑いで瞬きが増える。 「適当、って、よく、わからないけど」 注文をつけるという行為自体、馴染みがないことで。当然、どうして急に好き嫌いの話になるのかもわからない。 「食える物は食うし、好きとか、特にないけど……」 ただ、“家族”のことが思い出されて、憂鬱になる。

2014-12-26 21:25:43
ウィータスラーウァ @VitaslavaCC

ほんの少し、左目が曇って、眉間に皺が寄る。振り払うように、頭を振る。 “死んだ”俺には何もできないし、生きて此処に居る俺には、きっと何もかもできすぎる。 そう、此処に来るまでに、行き着いてしまった。だから、 「ないんだ」 理由も、目的も。口の片端が上がる。笑えてくるくらい、何も。

2014-12-26 21:25:47
シア @ConcesC_Cia

「……そう」 無い、彼女のそう言う貌が困り顔に見えて眉を下げた。こういう時に使う気の利いた言葉を、私は知らない。 「それじゃ、お届け下さるのを待ちましょうか。お二人は────何でもないです」 男性達へ、何か食べたい物はと尋ねかけて思い直す。人と同じ物を食べられても彼らは吸血鬼だ。

2014-12-27 10:46:33
ウィータスラーウァ @VitaslavaCC

眉尻を下げるシアの表情に動揺する。困らせた? 悲しませた? わからない。ただ、何かシアの気分を悪くしてしまったらしいとだけ、わかって。 「お、俺……ッ」 ガタッと音を立てて席を立ち、椅子の背の後ろに隠れて膝を抱える。 「ここに、居るから! あの、椅子、やっぱ、落ち着かないから!」

2014-12-27 12:34:23
匿名企画『宵の血に依る契約城』 @Conces_Castle

——翼の音は静かに止む。 ——空に月は一つだけ。 ——双子月は、伏せられる。

2014-12-27 20:34:28
アルカ @Conces_arca

シアの言葉に小さく肩を竦める。気付いた様で何より。 人間とは違うから、空腹のそれも感覚が違う。 「同じものを口にする事は出来るが、紛らわせているだけに近い。紛い物だろうと好みはあるが」 話の途中、扉の方から小さいノックの音と遠ざかる気配。

2014-12-28 01:18:16
アルカ @Conces_arca

「……来たか」 立ち上がる。 途中、何をしているのかと言いたげに椅子の裏に隠れたウィータスラーウァに視線を投げる。 結局何も口に出さず、扉へと向かう。開ければ廊下には、ワゴンがひとつ。中へ引きいれる。

2014-12-28 01:18:23
シア @ConcesC_Cia

一方私は突如ウィータスラーウァが立ち上がった理由が解らず戸惑っていた。 「え、ええっ?待って、居て!お願い座って。お願い、是非、座って!」 私の表情が狼狽させたなんて思ってもいなかった。 (私を吸血鬼の間に一人にしないで!) とは、流石に言えなかったので、胸中だけで叫んでおいた。

2014-12-28 03:50:10
シア @ConcesC_Cia

「あ、有難うございますアルカ様!ほ、ほら、届いたから!届けて頂いたから!立ってたら食べ辛いから!座って、ウィータスラーウァ!」 扉を叩いた音の後。部屋へ招かれたワゴンを指し示して。 「食べられるのでしたら、お二人も是非」 味にも好みが有るのなら、口にする物を見れば伺えるだろうと。

2014-12-28 03:55:05
ウィータスラーウァ @VitaslavaCC

「す、座ってるし!」 シアは椅子にと言っているのが、俺にはわからない。どんな姿勢でも床の上でも、座っていることにはいるはずで。 アルカの視線にぎゅうっと身を縮める。途端、ぼろぼろと目から溢れだした雫をごしごしと手で拭った。 「あ、の、ほんと、逃げないから、居る、から。……ごめん」

2014-12-28 12:46:28
ウィータスラーウァ @VitaslavaCC

「ごめん……い、今、俺、何が悪かったのか、わからなくて」 喋るたびに、声と一緒に涙が出た。最初のうちみたいな、冷静なふりをする余裕はないし、壊れてしまった態度を作り直す時間もなかった。 「アケイシアに、嫌なこと、するつもり、なくて、でも、わかんなくて、だから、だから、えっと……」

2014-12-28 12:46:35
シア @ConcesC_Cia

「い、椅子には座ってないわ?ね、座って、お願い……」 身を竦ませたかと思えば、涙を零し始めたウィータスラーウァに、私は言葉を留めてしまった。この部屋から逃げるとまでは思っていなかったから、逃げない、と言った事にもすぐに理解は追いつかない。どうしよう、私は何か、してしまったかしら。

2014-12-28 17:02:03
シア @ConcesC_Cia

そうして泣き顔を見て途方にくれた時に、彼女の声が続いた。悪かった、嫌なこと──髪を振り乱すように、大きく頭を左右に振る。 「何にも、貴女には嫌な事なんてされてないわ」 椅子から立って慌てて、椅子の裏に座る傍らで膝をつき、目線の高さを合わせる。それから、アルカとヴァエクを見上げた。

2014-12-28 17:02:13
シア @ConcesC_Cia

「ごめんね、そんな事、ほんとに無いの。私、そんな嫌そうだった?」 意図せず不安にさせてしまった事は、私の不安にも繋がった。彼女を見て、二人の吸血鬼を交互に見て、問い掛ける。そんなに怖い思いをさせるような何を、私はしてしまっていたのか。解らず自覚も実感も無くて、聞かせて欲しかった。

2014-12-28 17:02:55
アルカ @Conces_arca

直ぐに視線を外した為にその後の様子に気付かない。 しかし振り向いた先の光景にぎょっとする。 ぎくりと一瞬動きが止まった事に彼女達は気付けるか。 ――なんで、泣いている!? あまりにも自分と違う生き物。言葉の意味は理解しても、その思考が理解出来ない。

2014-12-28 17:45:05
アルカ @Conces_arca

他者の顔色を気にして生きてきた訳ではないアルカに、それを気にして怯える心は理解できない。 途方に暮れかけた思考を戻したのはシアの問い掛けだった。 「……私にはそう見えなかったが」 その様には見えなかった。筈だ。 しかし、不確かな言葉を付け加えてはいけない気がした。

2014-12-28 17:45:14
アルカ @Conces_arca

――どうにかしろ、ヴァエク!! 弱る。思わず最も頼ってはならない者の名を内心叫ぶくらいには。 こちらを不安そうに見上げるシアと、涙を零すウィータスラーウァと。 どちらにも自分は手を出せない。小動物を彷彿とさせるその様子に、居心地の悪さを覚える。 小動物は、苦手だ。

2014-12-28 17:54:36
前へ 1 2 ・・ 12 次へ