ケンペイvs座礁艦隊! あとパンツ ~フライングフィッシュ・オブ・アラビアン~最終話

憲兵ぱんつ天狗vsデコベリショ叢雲ちゃん最終話です。 括目してぱんつ見よ!
2
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

「しかし未だ解せんな」"元"戦艦武蔵、猪口敏江は帰りの航空機の中、腕を組んで溜息をついた。「何がさ」座礁艦隊隊長、[データ削除]大尉は、いつも通りのとぼけた表情を崩さない。「分かっているだろうに。お前様が海軍提督の出世コースを蹴ってまで、水陸起動団に移った理由だよ」 23

2014-12-30 08:12:01
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

「そりゃあ、こっちの方が面白そうだったから」「いい加減本当の所を教えてくれても良いだろう。『海軍カミソリ』とまで渾名された切れ者が、所属艦を全員解体扱いにして、半ば出奔も同然に」「でも外諜の仕事も楽しいでしょ」「とぼけるなよ」大尉は答えず、コーヒーを啜る。 24

2014-12-30 08:22:18
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

冷めた、泥のようなコーヒーを一口で飲み干す。「敏江さんはさ。艦娘についてどう思ってるの」「は?」猪口敏江は頭上にクエスチョン・マークのホログラムが浮かんだようなアトモスフィアを感じた。その質問は人間に「人間についてどう思うか」と尋ねていることに等しい。 25

2014-12-30 08:40:34
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

「どうって…今更艦娘が何なのかを論じるつもりではないよな」「まさにそうだけど」「おい、ふざけるのもいい加減に」席から立ち上がろうとする猪口敏江を抑えて、[データ削除]大尉は猪口敏江の目を見た。「じゃあ質問を変えよう。座って。300キロが動くとヤバイから」 26

2014-12-30 09:10:20
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

煮え切らない表情で、猪口敏江は座席へ腰掛け直した。骨組みが軋んだ。「それで」「前の四半期だけで、いわゆる"捨て艦戦術"により轟沈した艦娘の数を知ってるかい」「当然だ。1161隻。赤レンガは発表してないがな」飛行機は水陸起動団の輸送機であり、乗客は彼ら以外にいなかった。 27

2014-12-30 09:15:19
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

機密情報を口にしても聞き耳を立てる部外者はいない。「で、それがどうした」「もう一つ。同時期に深海棲艦の出現率はどれくらい増えた?」「…何が言いたい」「分かってるだろうに」「仮説の話だろう」「仮説だ、って鼻で笑ってるのはいない。グンレイにもね。奴らはおそらく知っててやってる」 28

2014-12-30 09:20:03
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

「……」猪口敏江はそれ以上言葉を継げることが出来なかった。だとするなら、海軍は、グンレイ・アクシズは、ドン・ハリマ元帥のやっていることは…。「権力が一箇所に集中する時代はとっくの昔に終わってる」「だから私を外務情報局にやったのか」「おれはね、武蔵。欺瞞ってやつが嫌いなんだ」 29

2014-12-30 09:25:02
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

闖入者の出現に、一世一代の覚悟を持って臨んだシンジューは中断を余儀無くされた。砂丘の天辺に転ばず立ち、ミュグラと扶桑を見下ろす人物に見覚えがある。中東の太陽に煌めく濃緑色の髪と、右目を覆う眼帯。「木曾…改二タイプ?」「もう海軍の迎えが来たのか…?」「でもあの服は」 31

2014-12-30 09:44:42
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

二人が困惑するのも無理からぬことである。それは確かに第二次改造を終えた木曾であったが、着ているものが通常の着衣装甲ではなく、この国の男性用の民族衣装であったからだ。「今はスハール鎮守府の木曾じゃなく、同胞団の戦乙女としてここにいる!」 32

2014-12-30 09:48:24
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

高らかに宣言すると、砂丘の裏から十数名の男たちがエントリー!木曾と共に一斉に砂丘を駆け下る!「アイエエエ!」「ミュグラ少佐!」短刀と一発の砲弾以外に抵抗手段を持たぬ二人は互いに抱き合い、無残な死を待つのみ!…しかし、男たちは二人ではなく、墜落している半重力飛行艇に向かった。 33

2014-12-30 09:54:20
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

アラビアの男たちは各々携えた機材を、半重力飛行艇の内外に設置してゆく。その様子をミュグラと扶桑は抱き合ったまま見つめルコとしか出来ない。「さて、あんたらの処遇だが」「アイエッ!?」吐息がかかるほど近くに木曾の顔!「私たちを神の敵とでも言って殺し、晒しあげるおつもりですか」 34

2014-12-30 20:14:15
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

艤装を全壊にされ、バイタルパートの装甲を穿たれた状態にもかかわらず、扶桑は気丈に振舞った。何か変な真似をすれば、なけなしの35. 6センチ砲弾をお見舞いする腹づもりでいた。が、「しないしない。俺たちはナンブ・リベレーションみたいな過激なテロ集団じゃなく、むしろ止める方さ」 35

2014-12-30 20:22:02
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

「では、なぜ艦娘が現地の民兵組織に与しているのですか」「それについては…アー…話せば長くなる。後だ。まず…、あんたたちはここで死んだ。そういうことにする。分かるか」ミュグラと扶桑は顔を見合わせた。死んだことにするとは?「事情は大体把握してる。海軍に帰ってもどうせ死ぬんだろ」 36

2014-12-30 20:34:22
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

「俺はセプク、扶桑は捨て艦でな。いつものことだ」「で、離れたくないからこの場で心中か」「分かっているなら止めてくれるな! 俺と扶桑の、二人だけの事情だ」「それは違う」屹然として、木曾が断じた。いつの間にか、アラブの男たちも周囲から二人を見つめていた。 37

2014-12-30 20:43:34
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

木曾が聞き慣れない言語で何かを口ずさみ、「あなたがた自身を、殺してはならない」と言った。「クルアーンの一説さ。神からの借り物であるその身体を害してはいけないんだ」「イスラム教は、私たちには関係ありません」「あるさ。ここは、イスラムの地だ」 38

2014-12-30 20:48:28
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

男たちの中で最も高齢に見える男性が木曾の隣に立ち、何かを言った。木曾はそれを翻訳した。「君たちはアッラーによって遣わされた戦士と戦乙女だ。砂漠を走る混沌を連れた鬼と戦い、それを打ち払った。アッラーは理不尽な死に瀕した君たちに、新たな生を与え賜うた」 39

2014-12-30 20:52:36
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

ワン・テンポ置いて、木曾が自分の言葉を引き継ぐ。「俺も同じことを昔やった。深海棲艦相手にだが。死ぬはずだった所を彼らに助けられ、戦乙女になった。同胞団。罪なき民や家族を襲う悪鬼羅刹と戦う、誇り高きムスリムの戦士たちだ。長くなったがつまりは…君たちを我らが団に迎え入れたい」 40

2014-12-30 20:58:37
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

降って湧いた申し出に、ミュグラと扶桑は顔を見合わせた。「なあ扶桑、言ったよな。俺と一分一秒でも一緒にいたい、死が待っていても、それを先延ばしにしたいって」「はい…」扶桑は顔を赤らめて応えた。 「俺にはお前しかいない。お前と共に生きられるなら、これまでの人生に何の未練も無い」 41

2014-12-30 21:07:34
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

「はい、少佐。お供いたします」「もう少佐ではない。その…下の名前で呼んでくれないか」「はい。フヒト」「扶桑」そして、二人の顔は近づき、接吻を…、「待った!そういうのは二人っきりの時にしてくれ。イスラムだから」木曾が横槍を入れた。「とりあえず、OKってことで良いんだよな?」 42

2014-12-30 21:12:19
RyoRi (VRVape屋さん) @ryorinovels

「ああ、不肖ミュグラ・フヒト。扶桑と共に同胞団に加わらせていただく。しかし、イスラムのことはほとんど分からないのだが…」「心配無い。そんなに難しいもんじゃないさ、いざ関わってみるとな。さあて、そうと決まれば偽装工作の仕上げだ。ミュグラ、あんたは血。扶桑は生体組織を少しくれ」 43

2014-12-30 21:15:46