不知火に落ち度はない　お正月スペシャル２０１５　その１

yamoto @yamoto

「ほんっとにもー！！ 不知火が圧倒的に悪いけど司令も悪いんですからね？」 「低血圧なんだよ」 「こないだの健康診断高血圧って出てたじゃない」 何で知ってるんだ秘書艦。 「それに不知火ともうちょっと仲良くしてよね。こっちがヒヤヒヤするから」 ははは。 #不知火に落ち度はない

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「俺は全然仲悪くないつもりでいるけどな」 「朝から銃殺されそうになったってわかってる？」 「若い子のコミニュケーションを何でも否定するの良くない」 「殺意だってばさ！？」 08：30 朝礼を終えた俺達は、とりっぱぐれた食事をそれぞれ食べている。 #不知火に落ち度はない

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本日のメニューはコッペパンにサラダにスープ、あとちょっとしたお肉と牛乳の組み合わせ。 学校給食かと思うメニューである。 「あー、朝からコメじゃないとかつれーわー」 「遅刻したんだからとーぜんです」 それはそうだが原因の一端はお前にあるのだ、陽炎。 #不知火に落ち度はない

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なお、このパンも実は食堂が気を利かせて用意してくれたものらしい。 陽炎の朝イチの説教モードは兵舎を突き抜けて食堂まで届くのだ。 別命雷おこし。 いかづちじゃないわ かみなりよ。 雷鳴のごとく響く声で、総員起こしの手間が9割削減されるのだ。 #不知火に落ち度はない

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「で、本日の予定は？」 「えんへいに、しょうはいはんはいひ」 食べながらしゃべるなお行儀悪い。 がっついて大口で食べる様子は実に大型犬チック。 「近隣哨戒を２へオーダー変更。元気の有り余ってる不知火を旗艦にした水雷戦隊で組め」 「ははった」 #不知火に落ち度はない

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本日の深海棲艦指数は20。 2班回すかは微妙な数値だ。 だが、気象条件を見るにちと怪しい。 海が凪いでいて、曇りの時間が長い。 最低でも1編隊は偵察に出てくる、と予測した。 ぶっちゃけただのカンなんだけどな。理由は後付だ。 #不知火に落ち度はない

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「しかし……陽炎、食うの早いな」 コッペパンに肉とサラダを挟んでお手製サンドイッチを作ってもぐもぐもぐ。 その後スープと牛乳で流し込んでる。 見てて気持ちいいぐらいの食いっぷり。 性別が男ならさぞモテモテの健啖家っぷりである。 #不知火に落ち度はない

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「タイム・イズ・マネー。美味しく食べてるからいいじゃない」 「おう。そうな。俺の分も食う？」 「え、いいの？」 「食いっぷりに惚れたからな」 と、言いつつ大きなわんこさまに、お肉と野菜とコッペパンを献上する。 育ち盛りは食べ盛りなのだ。 #不知火に落ち度はない

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「あは、あははは。もー、そういうのやめてよね」 「おう、一人前に照れたか」 「私だって女の子ですから？」 そりゃそうか。 少し顔を赤くするうちの秘書艦殿は実にオンナノコしてるのだ。 だいたいいつもこんなんだが、外出するときは年頃っぷり全開なのである。 #不知火に落ち度はない

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「つわけで俺は、別でエネルギー補給っとな」 「はい、カット」 スコーン。 置いた酒瓶カットアウト。 更にグラスもスパットカット。 アルコール１００％カットの容赦無い秘書艦参上である。 「仕事中に飲むなっ」 「へいへい」 あとでコンビニ行こうか。 #不知火に落ち度はない

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「ったく、このダメ中年めー。そんなに飲みたいなら──」 「休みに飲めってか？」 「今晩付き合ってあげるけど？」 「え、マジで？」 「陽炎さんの手料理もつくけどー？」 うっわマジで。 コイツのチョイ足しおつまみ超うまいんだ。 絶妙に家庭の味がしてな。 #不知火に落ち度はない

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「でも仕事をサボる悪い司令にはないけどね？」 「おう、超やる気になったわ。ばりばり仕事持ってこーい」 「たーんじゅん」 「男の子だからな」 「元男の子の間違いでしょ？」 なかなか言いよるわ、こやつめ。 こういうところ、嫌いじゃないのだ。 #不知火に落ち度はない

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「じゃ、早速書類を用意したいけど……」 「おう？」 「これ、食べてからでいい？」 指差すのはさっき差し出したコッペパン一式。 ちょっとツインテを垂らしてお願いモード。 もちろん俺はOKを出した。 腹ペコキッズは嫌いじゃないからな、俺。 #不知火に落ち度はない

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11：00 書類を片付けてる最中、通信が入る。 『陽炎。あとついでに司令、聞こえていますか』 「はいはい良好だよ」 「こら不知火。ついでじゃないでしょ」 メガネ陽炎が、通信機に向かって説教開始。 格好と相まって、実にアーテルハイドと先生である。 #不知火に落ち度はない

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『不知火にとってはついでで敬称ぐらいです。基本路傍の石程度のものですから』 「そいつは随分いい評価だな」 「そんなわけないでしょ！ もうちょっと威厳を──」 『夫婦漫才はそれぐらいにしましょう』 「めお！？」 ぱくぱく酸欠金魚陽炎である。 #不知火に落ち度はない

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「で、何だ？ 愉快なお友達を発見したか？」 『司令の分際でよくご存知ですね』 「あのね！？ もう、後で説教！」 『司令のせいで怒られました。謝罪と賠償を』 「あとでコンビニ払いしてやる。で？」 『深海棲艦発見、軽巡２、重巡２、駆逐２の編成です』 #不知火に落ち度はない

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ほう。水雷としちゃ、ちと分の悪い相手だな。 こちらの編成は駆逐が雪風、黒潮、不知火。軽巡が川内、神通、那珂。 『うち重巡は赤射反応あり。エリートクラスと判断します。指示を』 「そうな。逃げるか？」 『ご冗談を』 「やれるか？」 問う。答えは── #不知火に落ち度はない

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『壊滅させてご覧に入れます』 「足りねー」 即却下。 しかし不知火はめげない。 『そうですか。追加オーダーをどうぞ』 「全員無傷で、かつ壊滅させてこい」 『無茶苦茶ですね、司令』 「なんだ、できねえの？」 フン、と通信越しに鼻で笑う音がひとつ。 #不知火に落ち度はない

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『完全無欠に勝利してご覧に入れます。陽炎、サポートお願いします』 「はーいはいはいはい。今から準備するから！ もー！ 無茶苦茶！」 「なに、信頼してるんだよ。不知火をな」 と、申し上げたところですね。 ばさーっと、机の上の一気に片付けられましてね。 #不知火に落ち度はない

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よく見るとほっぺたがぷくーっと膨らんでおりまして。 それは実によく焼けたモチのようになっておりまして。 「ん、妬いた？」 「妬いたわよ！ 悪い！？」 うちの秘書艦殿は大変ご機嫌斜めになった模様。 ほっぺたつつくぞこのやろう。失礼このアマ。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「そうな。もちろん信頼してるよ、秘書艦殿」 「陽炎！」 おいおい。あのね。 通信機オンになってるんですけども 「か、げ、ろ、う」 「オッケー。じゃあ、はじめま……って笑わないでよもう！」 当たり前です。 陽炎、お前すっげー今恥ずかしいぞー。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「こほん。じゃあ、始めましょうか司令！」 「おうよ」 ばっと広がる海域図。 ざっと並べられるコマ。 ヘッドセットをお互いセット。 ノートPC片手に陽炎が隣に座り、俺は帽子をかぶり直す。 スタンバイOK。 『状況──開始！！』 開戦の号令が重なった。 #不知火に落ち度はない

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12：15 『状況終了。敵戦力の壊滅を確認』 「被害状況を報告せよ」 『当然無傷です。こちらの戦力が圧倒的に上でしたから』 ほっほーう。それは慢心ではないですか不知火さん。 囮を引き受けた川内は相変わらずだが、黒潮と那珂はヒット貰いかけてたぞ。 #不知火に落ち度はない

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「お疲れ様でした。川内さん、神通教官、那珂さ……」 『那珂ちゃんって呼んでー？』 「な、なかさ」 『那・珂・ち・ゃ・ん♥』 知ってるか。 この愉快なブリブリモンチッチが、実は一番殺ってる。 姉達が飛び込んだ後、的確にとどめを刺していくのだ。 #不知火に落ち度はない

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「はいはい、那珂ちゃん那珂ちゃん満足か那珂ちゃん」 そこで代打の俺登場。 『ぶー☆ もっとファンぽく言って？』 「なっかちゃーん！！」 『も一回』 「なっかちゃーん！！」 『元気が無いぞー！ せーのー！』 「調子のんな那珂ちゃん」 『はーい』 #不知火に落ち度はない