不知火に落ち度はない　お正月スペシャル２０１５　その３

yamoto @yamoto

「ごめんなさい。冗談よー」 よかったー。 嘘らしいです。 「でも、複雑なのよねー」 「複雑なんですか？」 「ええー。好きだけど嫌いで、嫌いだけど好きってわかるー？」 好きだけど嫌いで、嫌いだけど好き？ 好きの反対は嫌いで、嫌いの反対は好きなのに？ #不知火に落ち度はない

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「わかりません！」 「雪風ちゃんには、まだ早かったみたいねー」 うんうんと頷いて、龍田さんは笑いました。 でも、なんだか笑ってない気がしました。 すごい不思議な感じです。 「まあ、どっちもあるから、どっちにもいけないのよねー」 #不知火に落ち度はない

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「いっそ嫌いだったら、面倒じゃないのにねー」 「それはなんだかやですー」 ふにゃんってなっちゃいます。 龍田さんも同じように、ふにゃんとなっちゃうのでした。 大人は大変なのです。 好きだけど嫌いで、嫌いだけど好きは雪風にはわからないのです。 #不知火に落ち度はない

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「そうねー。嫌かもねー」 「どうしたらいいんでしょう？」 「奇跡でもあればいいのにねー」 そんなに複雑らしいのです。 うーん。でも雪風には何もできません。 大人は難しいのです。 #不知火に落ち度はない

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「あら、いけない。どこまで送ればいいかしらー？」 「バス停までお願いします！」 「はいはーい」 雪風はそう答えました。 車が進みだします。 その間もぐるぐると、さっきの考えが頭の中を回っています。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

龍田さんの言ったこと。 明日にはわかるでしょうか。 それとも明後日にはわかるでしょうか。 そうしたら、司令と龍田さんは仲良くなるんでしょうか。 だったら、雪風も早く大人になりたいなあ。 #不知火に落ち度はない

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そうして考えてる間にバス停で止まります。 雪風は降りてここからバス待ちです。 「じゃあ、さようなら。雪風ちゃん」 「ありがとうございました！ 龍田さん！」 「ううん。お出かけいってらっしゃい。元気でね」 「はーい！！」 手を振ってお別れしました。 #不知火に落ち度はない

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ここのバスは待ち時間があります。 その間に雪風は考えます。 龍田さんと司令が仲良しになれる方法をずーっと考えます。 あ、そうだ。 思い出しました。 響が寝る前に、言っていたことがあります。 #不知火に落ち度はない

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ロシアの方のお伽話で、ジラーチという星の妖精がいるらしいのです。 それは寒い冬、宝石になって雪になって降りてきて、見つけた人の願いを叶えるのだとか。 お酒で顔が真っ赤っ赤になりながら、見つけたら一生分酒を飲みたいって言ってました。 そう、それです。 #不知火に落ち度はない

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雪風はひらめきました。 ジラーチを見つけましょう。 そして、雪風が大人になればいいのです！ 決まりです！！ 今は冬です。そして、幸がいっぱいある寒いところといえば山！ お山に登ってジラーチを探しに行けばいいのです。 #不知火に落ち度はない

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ジラーチを見つければ、きっとなんでもうまくいくのです。 がんばります！ そうして、バスがついて雪風は駆け込みました。 「ジラーチのいそうな山まではどう行けばいいですか！？」 運転手さんは少し困った顔をして。 山行きのバスの時間を教えてくれました。 #不知火に落ち度はない

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※※※※※※※※※※※※ ※※ 落ちぬい劇場版 ※※ ※※ 雪風の冬やすみ ※※ ※※※※※※※※※※※※ #不知火に落ち度はない

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山へはバスで２時間かかります。 バスは雪風以外誰も乗ってません。 一人っきりだと、なんだか眠くなります。 うとうと うとうと はっ。寝てません！！ うとうと うとうと はっ。寝てません！！ うとうと うとうと はっ 寝てま…… #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

だめでした。スイマーには勝てないって言ってました。 雪風の旅はここで終わりなんでしょうか。 ああ、なんだかもふもふあったかいです。 そう、白くて、黒くて。 あれ？ ふかふかで、もふもふで。 爽やかなレモンの匂いがします。 あれ？ #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

パンダさんです。 なんということでしょう。 雪風はパンダさんの背中に乗っかって寝ていたのです。 は、よだれよだれ。 その背中には、よだれの跡がついてました。 ハンカチでふきふき。 これで綺麗になったはずです！！ パンダさんも、どこか満足そうです。 #不知火に落ち度はない

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「パンダさんこんにちは！」 パンダさんは何も言いません。 でも頭をぺこっと下げてくれました。 「パンダさん、雪風のお供なんです？」 パンダさんはうなずきます。 なるほど！ 心強いです。 ジラーチ探しを手伝ってくれるそうです。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「では行きましょう！ 山へ！」 雪風は目の前にある山への道を指差します。 お空は曇り空。雪がちらちらとすでに降り始めています。 きっとあの山の上になら、ジラーチがいるはず。 雪風の旅のはじまりです。 バスの停留所の看板も、そう言っていました。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

のっしのっし のっしのっし もぞもぞもぞ ふんふんふん のっしのっし のっしのっし もさもさもさ もぐもぐもぐもぐ #不知火に落ち度はない

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雪風の旅は、早くも困難と挫折が始まりそうです。 パンダさんはパンダです。 走るのはあんまり早くないみたいです。 あと道草を食べています。 その度に降りるので、あまりペースは良くないです。 「パンダさんー」 もさもさもさ、また道草がなくなります。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「もうちょっと早足でいけませんかー？」 道草で必ず止まるので、山の上に行く頃には明日になっちゃいそうです。 パンダさんは、お話をスルーして道草を食べています。 もー。のんびりさんなのは困りますー。 ゆさゆさ揺すっても、平然と食べてます。 #不知火に落ち度はない

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「おいてっちゃいますよー？」 もさもさもさ 「お腹すいてるなら、雪風がチョコ持ってますよー？」 もさもさもさ 「ティッシュ食べますかー？」 むくり どうやらティッシュが当たりだったみたいです。 ひらひらティッシュを振るとついてきます。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「ではいきましょー。ジラーチを見つければすぐ帰りますよー」 ゴーゴー。 のしのしついてくるパンダさんに先行して、雪風は進みます。 見上げれば雪はしんしんと降り始めています。 ジラーチがあの中にいるでしょうか。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「パンダさんはジラーチって知ってますかー？」 注意深く探しますが、見つかりません。 どこかに落っこちてないかと時々、道から外れてみますが、ありません。 「見つけたらなんでも願いが叶うらしいですよ？」 パンダさんはティッシュのほうがいいみたいです。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「やる気出してくださいー」 ひらひらとティッシュを振って言いますが、ティッシュの方を見てます。 「パンダさんのお願いはなにかないんですかー？」 ぴた、とパンダさんが止まります。 あ、何かあるんですか？ だったら山分けです！！ #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

はぐ。 きゃー！？ ぱくりされました。 お手てごとぱくりされました。 「だだだだめですよ！？ 雪風の手は食べられませんよ！！」 ぺちゃぺちゃちゅっぱちゅっぱ パンダさんはいうことを聞いてくれません。 雪風の手がご賞味されてます。 #不知火に落ち度はない