不知火に落ち度はない　お正月スペシャル２０１５　その３

yamoto @yamoto

やめてください！ やめてください！！ 雪風の手は食べられません！ 美味しくないです！！ しかしパンダさんは言うことを聞かず、雪風の手をお口の中に入れたまま舐め回します。 くすぐったいですけど、いつ噛まれるかわかりません！！ #不知火に落ち度はない

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そして、しばらくして。 パンダさんは雪風の手を離してくれました。 うう、べとべとになっちゃいました。 「もー。雪風がいいって言うまで、食べちゃダメですよ？」 パンダさんはティッシュを舐め取ったのです。 我慢できなかったのでしょうか。 #不知火に落ち度はない

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ひらひらさせると、どうやら食いついてくるみたいです。 これは、やり方を変える必要がありそうです。 「この中に入ってます。ついてきてくれたらあげます」 ぽんぽんポシェットを叩いてみせます。 ぱかっと開けて、中にティッシュがあるのを見せました。 #不知火に落ち度はない

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ふすふす、と。 パンダさんはポシェットに鼻を近づけて、匂いを確認。 「そう、たっぷりありますよ。雪風は何を隠そうティッシュ持ちなんです」 えっへん。 お金を持ってる人は、お金持ち。ティッシュを持ってる人はティッシュ持ち。 これなら言うことを── #不知火に落ち度はない

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ぱくん。 きゃー！？ 「ダメですダメですポシェットだめですー！！！！ ポシェットは食べ物じゃないですー！」 ちゅっぱちゅっぱちゅっぱちゅっぱ。 舐め回すサウンドが聞こえます。 このままでは雪風のティッシュが食べつくされます！！！ #不知火に落ち度はない

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ごめんなさい、パンダさん！！ 依頼を果たすまで、報酬はあげられない！ 「雪風チョップ！」 すこっ！ とパンダさんの額にチョップが決まります！ これが雪風の必殺技、雪風チョップです！！ その威力は大砲級の一撃！ これでパンダさんはポシェットを── #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

ごっくん。 あ──。 飲み込んじゃいました。 ふぎゃあああああああ？！ #不知火に落ち度はない

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「出してくださいー！ かえしてー！ かえしてー！！！」 ぽすぽすぽすぽすと叩きますが、パンダさんはけへっ、けへっ、と言うばかり。 ひどい。このポシェットは大事なものが── えっと、チョコと。 ハンカチと。 ティッシュと。 「ともかくかえしてー！」 #不知火に落ち度はない

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そして格闘することしばし。 パンダさんはポシェットを吐き出してくれました。 もー、べとべとです。 ポシェットの中はからっぽです。 うー。チョコー。 「食べちゃったぶんはしょうがないから、手伝ってください」 パンダさんはうなずきました。 #不知火に落ち度はない

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そうして、再び旅が始まります。 雪の中にあるジラーチを探して。 雪が降る方へ降る方へ進み。 「どこにもありませんねー」 そんなに簡単に見つかるものでも、ないのかもしれません。 だんだん足が痺れてきて、手がすっかりひえひえで。 空も灰色で。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

「パンダさん、ちょっと休みませんか？」 毛皮をむぎゅ、と掴みます。 あ、パンダさんすごく暖かい。 大分探したのですが、見つからないのは仕方ないのです。 もっともっと上の方に行けばあるかもしれません。 でも、雪風の足はもう動かなくなりそうです。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

きょろきょろ見回すけど、何もありません。 ここは山への通り道。 休憩所は一つも見つかりませんでした。 どうしましょう？ このまま引き返して、見かけたコンビニに入りましょうか。 確かちょっと前に見た気がします。 いつ見たか忘れたけど。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

そんなことを考えると、雪をギュッギュと固める音がしました。 振り返ってみると。 「パンダさん？」 パンダさんが。 大きな雪の塊に、すっぽり入り込んでいました。 どう見ても遊んでいます。 もー！！ #不知火に落ち度はない

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「遊んでないで出てきてくださいー！」 毛皮をぎゅーっとひっぱります。 しばらくもがいてましたが、諦めたのか雪の塊からパンダさんは抜け出てきます。 本当に困ったパンダさんです。 あれ？ あれ？ #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

この雪の塊。よく見ると、雪風ぐらいなら中には入れそうです。 これは、もしや。 かまくらです！！ 休憩所のかまくらができました！ 「パンダさんよくできました！」 雪風が頭を撫でると、嬉しそうにしています。 #不知火に落ち度はない

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出来上がったかまくらの中は、さっきまでパンダさんが入っていたおかげか少しあったかくなってました。 しっかり固めて遊んでたおかげか、座るところまでできていて、これでゆっくり休めそうです。 「あ、そうだ。ポシェットの底に」 ごそごそごそごそ。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

ちゃんとありました。 ポシェットの底に、不知火さんが縫い付けてくれた糸があり。 外すと二重底の下から、救命キット（不知火さんセレクション）が出てきます。 マッチあり、固形燃料あり。 遭難した時のための一揃えとして、仕込んでおいてくれたのです。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

もちろん、防水シートに入ってたので、全然平気です。 説明書を読んでぽーい。 火をつけてぬくぬくのかまくら出来上がりです！ これでしばらくは大丈夫！ 雪風は凍えません！！ 「はあ、あったか、あったか」 手の感覚が戻ってきます。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

火にあたってると、視線を感じます。 じーっと、見てる視線です。 あ。そういえば。 パンダさんが入り口からこっちを見てました。 パンダさんは中に入れないのです。 「ごめんなさい。火あたってください」 そう言うものの、パンダさんは中に入れないのです。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

しかたなさそうに、パンダさんは入り口から顔だけ入れてました。 それでも暖かいらしく、目を細めてました。 ぬくぬく。ぬくぬく。 身体が暖かくなってきて── ぐう。 #不知火に落ち度はない

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雪風は、睡魔に負けてしまいました。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

さて。ここからは儂の出番のようである。 身体の冷えきっていた丹陽の御子は、火の温もりを得てすっかり寝入っておる。 おそらくこれでは朝までは起きてくるまい。 しかしながら、この雪籠の中ならば少々の事ならば問題ない。 造り火も消える気配はない。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

さてさて、では如何にするか。 丹陽の御子は『ジラアチ』と言うた。 人の言葉はなんとも聞き取りづらい上、故郷の言葉と大きく異なる。 ジラアチとははて、何ぞ？ この老骨には、とんとわからぬ言葉であったが。 丹陽の御子が求め、ここまで一人旅したのは確か。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

儂が何者か？ これは失敬、申し遅れた。 儂は台湾生まれにして、今は御子の集う鉄造りの寝床に住まうもの。 人はかつて儂を『陽陽（ようよう）』と呼び、そして今は『胖胖（パンパン）』と呼ぶようになった。 歳は今年で100を数える、大熊猫である。 #不知火に落ち度はない

yamoto @yamoto

さてはて、ジラアチとやらが見つかるまでは丹陽の御子は帰らぬだろう。 寝ておる間に、疾く見つけて来ねばならぬ。 「そこに居られるは、陽陽大老」 「ふむ？」 思案する間に、声が一つ。 見上げれば、そこには白き梟が佇む。 #不知火に落ち度はない