ツイッター小説 お気に入りセレクト 2010/12/08

いでゆのまち @ideimachi

#twnovel 商売道具を手入れする。分解して部品を丁寧に掃除。「へえ、銃ってそうなってるの」彼女が寄ってきてのぞき込む。うるさい、あっちへ行け。仕事のとき、俺は理由を知らされない。彼女みたいな女の子が標的だとしても。何かを知って死んだはずの少女は、俺にまとわりついて離れない。

y-fstw @y_fstw

#twnovel 「リストラを断行する。少子化が進む中、今の体制を維持できないのだ」「そんな、ピンチはチャンスです。今後はお年寄りにも配ることにしてはどうでしょうか」「そうか、それはいいかもしれん。さっそく企画書を書いてくれ」こうしてサンタクロースたちは新たな市場を目指した。

Mark @Marknovel

すやすやとベッドで眠る子供を窓から優しそうに覗き込んだサンタは早速仕事に取り掛かった。窓枠に付いた雪を払うとガラスカッターで手早く鍵の部分を切り取った。そして部屋に忍び込むとお目当ての子供をあっと言う間に袋に詰めた。子供好きのサンタは本当は子供が好きだった。 #twnovel

ジュン @jun50r

#twnovel またことしもおとうさんがきいてきた。「サンタさんに何を貰いたい？」サンタさんなんていないのに。おとうさんとおかあさんはぼくがまだサンタさんをしんじてるとおもいこんでいる。なんてむじゃきなのだろう。サンタさんをしんじているこどもがいるとしんじているなんて。

minamicloud @minamicloud

俺の息子の名前は『寿限無、寿限無五劫の擦り切れ、海砂利水魚の水行末 雲来末 風来末食、寝る処に住む処、やぶら小路の藪柑子、パイポパイポ パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの、長久命の長助』俺ってＤＱＮ？　#twnovel

藍　真史 @shin1960

#twnovel 仕事帰りにその喫茶店に立ち寄るのが彼の日課だった。中学の同級生の女の子が母親の代から引き継いでいる。親しかったわけでもない。今でも目を合わせることもない。隅の席でコーヒーを短い時間で飲む。定年を迎えた日、テーブルに小さな花があった。いつもよりカップが熱かった。

まりる＊まりら @Na_shin

#twnovel 部屋を片付けていたら、口紅が出てきた。はるか昔に、友だちから貰ったものだ。あの頃とは住む所も、仕事も違う。もうその友だちと会うこともない。華やかな赤色を唇に引いてみた。鏡の中には、昔とは違う私。ずいぶん遠くへ来てしまった。悲しそうな顔が映っている。

水木ナオ @nayotaf

父が人気作家であり続ける理由を僕は知っていた。あの眼鏡を掛けると読者のニーズが見えるのだ。一日雑踏にでも立てば、ベストセラーの出来上がり。だが父のそれを僕は欲しいと思わない。ある夜、鏡を見つめて父はぽつ、と呟いていた。俺の書きたいものなんて、とうに見えないのに。 #twnovel

犬太郎 @meronmeron09

#twnovel飼い犬にキスされてしまった。それは問題ないのだ。問題ない。普通に犬を飼っている人にとっては普通のことだろう。問題は私が赤面したこと。部屋に閉じこもってしまったこと。そして飼い犬が照れたような声で、態度で謝ってきたことだ。

@wakegiorino

#twnovel おやすみの前に。こんばんは、アナウンサーの星孝夫です。上中下の三巻本のうち1巻目を読み終わり、今朝、2巻目を持って出たつもりが3巻目でした。活字中毒なので、3巻目の出だしを少しだけ読もう、と開いたら、いきなり重要人物の一人が死にました。私、ちょっと泣きました。

すわぞ @suwazo

#twnovel 真夜中に降りしきる雪に紛れて、スノウマンはひたすら歩き続ける。「止まっちゃだめなんだ」と彼は言う。「地面に積もった雪とくっついて同化したら、そこを離れられなくなってしまうから」その彼自身にもどんどん雪が降る。スノウマンのからだは少しずつ大きくなってゆく。

夕凪奏恵 @k_you_nagi

#twnovel 冬の真ん中で花が咲く。華やかなイルミネーションよりも華やかに、鮮やかなクリスマスプレゼントの包み紙よりも鮮やかに、冷たい風にも俯くことなくしっかりと咲き誇っている。温かい季節ならばもっと楽に花開けたものを、厳しい季節を選んだ。あの人に確実に見つけてもらうために。

みもとりも @mimoto_rimo

「上書き保存」の出来ないアタシの恋のデスクトップには、痛い恋のファイルがズラリと並んでいます。哀しいかな「ごみ箱」も作られていないのです。 #twnovel

六葉時計 @black6leaf

「惚れる」と「惚ける」は同じ字を書く。人は常に何かに惚れながら生きている。そして年老い、惚れる対象がなくなった時、惚けてしまう。ならば僕は、ずっと君に惚れていよう。いくら年老いても、惚ける事がないくらいに。それはそれで、「色惚け」と言われるかもしれないけれど。 #twnovel

ヒデユキッス @hideyukiss

#twnovel 12月になると我々天使達は聖堂に集められる。「死ぬ気で矢を打ってこい！」この時期は特にカップル成立の厳しいノルマが課せられる。愛のキューピット達は皆、うつむいてしまう。「クリスマスカップルをつくっても構わん！」天使長の思わぬ計らいに天使達は一斉に顔を上げた。

雪月 @setugetufuka

#twnovel 猫に鈴をつける方法がわからず沈黙が続いていた。若いﾈｽﾞﾐが長老の前に出て来て言った。｢私に良い考えがあるのですが…｣ その言葉に皆が色めき立つ。ですが…若いﾈｽﾞﾐは言いにくそうに続けた。｢残り40字では説明できません｣ 長老は何か言いかけ、黙って首を振った。