ツイッター小説 お気に入りセレクト 2010/12/08

阪木洋一 @sakaki_41

#twnovel 「姉ちゃん！姉ちゃん！」今日も今日とて我が弟が、探究心で穴を掘るわんこの如く私のことを呼ぶ。「姉ちゃんはどんな男が好みなんだ？」わりと困る質問だった。強いて言えば包容力のある男性だろうか。弟はどうなのかを訊いてみると、「おっぱいバイーンな人！」率直過ぎだった。

miminari_ @miminari_

受付の女の子と話したくて、夏の間ずっとプールに通い続けた。彼女は本から目を話さずに料金を受け渡した。話すきっかけもなく、夏休みの最終日を迎えた。焼き続けた体はてらてらと黒光りした。帰り際、彼女が読みふけっている文庫本のタイトルが「変身」であることに気づいた。 #twnovel

@asidity_dabyy

俺の頭は冴えてるだろう？普通の人間じゃあ思いつかんさ、こんな事。なぁ、俺は良い夫だろう？普通の人間じゃあできないさ、こんな事。万年床となった薄っぺらい布団の上の、薄っぺらい体。口をつけられた形跡の無い湯呑み、傍らのナイフ。究極の献身によって妻は自由になった。 #twnovel

神沼三平太 @y1s

#twnovel 佐渡出身の方から聞いた話である。五十年ほど前のこと、母親が集落の女性達と共に、収穫作業で畑の里芋を引き抜いていた。その途中で、一人の女性が叫び声を上げた。見ると引き抜いた里芋の親芋の周りに育った子芋の全てに、顔が浮き出ていた。それが一斉に目を開けて睨んだという。

白石マイケルこと紅茶男 @kouchaotoko

ライトノベル、スーパーフェザーノベル、フェザーノベル、スーパーバンタムノベル、バンタムノベル、スーパーフライノベル、フライノベル、ライトフライノベル、ミニマムノベル…僕はまだフライノベルが書けるくらいだ。将来はライトノベルをとは思うけど、階級を上げるのも一苦労だ。#twnovel

Cal Que El Lulu-rain @senzaluna

暗い中での作業は危ないので、ツリーの飾りつけは据えた次の日の朝から行なわれます。しかし、係の人がどんなに朝早く（たとえば日が昇り始めてすぐ）来ても、お星様はすでにツリーの天辺でキラキラと輝いていました。誰が飾っているのだろう。街の人は不思議でしょうがありません。 #twnovel

layback @laybacks

昨夜、都内の公衆浴場で、赤い服を着た初老の外国人男性が覗きの現行犯で逮捕されました。男性は警察の調べに対して「そこにしか煙突がなかった。どの煙突でも良かった」と述べており、警察では不法入国の疑いもあるとみて更に調べを進めています。 #twnovel

あまたす @amatasu

「これ、食べて！」彼女が大きな紙袋を持ってきた。持つとかなり重い。「何？」「ニンジン」「全部？そのままの？」「うん。洗ってあるけど、今朝採ったのよ」「そう…」田舎暮らしの彼女と付き合ってひと月。俺のことより、一人暮らしってものをわかってもらうのが先だな、これは。 #twnovel

泥辺五郎 @dorobe56u

#twnovel 朝起きると枕元に知らない男が立っていた。これまでも何度か記憶にない性交をしたことはあるが男は初めてだ。昨晩貸した金を取り立てに来た、と男は言う。証文もある。そっちか、と落胆しつつ金を探すが勿論ない。ならば仕方ない、と言って男は布団に入ってきた。結末は男女一緒だ。

浅葉積木 @tsumiki_a

怪しい店の福引きで「どうでもいい未来予知３回分」を当てた帰り道、その予知が見せた光景は。一年後のこの場所の天気と。十年後にここで昼寝している猫の背中の模様と。百年後に道端のこの石につまずいて転んで膝をすりむく女の子の姿。本当かしらこれ？　まあ石は片付けておこう。 #twnovel

佐木ささめ @sakiandu

#twnovel 寒い冬の夜の独り寝も、昨夜の貴方との逢瀬を想えば自然と体温が上がりシーツが熱を孕む。疼きを生み出す己の身体を持て余し、不道徳な右手に軽く自己嫌悪を抱きつつも彼の動きを模倣する。白い波間に深く吐息を埋めた。早く、早く貴方に会いたい。

内藤みか（作家） @micanaitoh

彼に贈ったピアスには、実は秘密がある。あれは受信機だ。といっても盗聴器ではない。彼の気持ちを受信できる。だから私は彼にメールする。彼が哀しい時には元気が出そうなメールを。彼に電話する。彼が困っている時には助け船をさりげなく出す電話を。彼はもうすぐ私を好きになる。 #twnovel

ぬこ @sakuranuko

明日暇だなーあいつと映画でも…そう考えてた時にメール。「明日映画でもどー？」うは！超ウレシイ！「明日たまたまバイト休みだから、行ってもいーけど？」2時間待って返信する。なかなか返って来ないメールにやきもき。なんで素直に「嬉しい！行く行く♡」って言えないんだろ。#twnovel

奈良鹿人 @cicasenbei

「私の妻は家に完全に引きこもる生活を送っていた。不憫に思った私が好きなことをしていいよというと『本当に？』と笑顔で外にでて行った。私が家に帰ると、妻は外から刈ってきた子供の首でドミノを作っていた。本当にしたいことをさせないほうがよいこともある。」#twnovel

兎田 @usagida2150

僕から好きなものと必要なものを取ったら何が残るんだろう。ふとそう思った僕は、周りにある好きなものと必要なものを片っ端から捨ててみた。周りには何もなくなった。驚くほど何も残らなかった。唯一残ったのは、僕自身だけだった。 #twnovel

みゆきち @kintotto_foxy

#twnovel　冬の放課後、春のように柔らかな日差しを受けて彼らはただ黙して演奏を続けていた。丁寧に沈める鍵盤から流れ出る穏やかな音が、やや神経質に尖ったヴァイオリンの音色を和らげる。それは彼らの会話だった。いつまでも、使い古された音楽室で影が溶けあうままに語り合うのだった。

みゆきち @kintotto_foxy

#twnovelはらり、一枚落ちた手のひら、真っ赤に広がるこれも手のひら。あの日亡くした子供の手も、育っていればこれほどであったろうか。そう思うと赤く色づいた椛は血に濡れたように感ぜられ、女は急いでその葉を振り払った。しかし振り向けば歩いてきた道には幾重にも手が女を招いていた。

ジュン @jun50r

#twnovel 手術により、盲目の彼に光が戻った。だけど私の心は複雑だ。私は決して可愛いとは言えない。自分の姿を彼にみられるのが怖かった。「目をあけるよ。やっと君の顔が見られるね」　私は「キレイじゃなくてごめんね」と俯いた。と、彼は「僕からもう光を奪わないで。ほら。笑って」

@cool_in_open

今朝いただいた熱帯魚が家に戻ると二匹に増えてた。瓜二つで見分けがつかない。とりあえずその日は寝た。夢で水槽の中から激しい罵りと叫び声が聞こえた。朝起きると熱帯魚はまた一匹になってた。ただ一回り大きくなって勝ち誇った顔が印象的だった。女の子だったんだ。 #twnovel

ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

#twnovel 家に帰ったら正体不明の誰かが居た。混乱する僕を余所に、誰かはおかえりと言ってくれた後に「一人暮らしは寂しいから誰か一緒に居てくれないか、て昨日思ったでしょ？」と言った。確かに思ったがと呆れる僕を放って誰かは夕飯の準備開始。誰かとの同居が始まった日だ。

@K_Ichida

#twnovel 「使い捨てカイロって幼女妖精のおかげであったかいんだぜ」「？」「小さな幼女妖精が中にいてさ。こすると、つぶれて死ぬわけ。生き残った妖精の怒りと悲しみで熱くなるんだよ。耳をすますと、悲鳴と鳴き声が聞こえるぜ。オレ、いつもそう思って使うんだ」「使う気なくなった」

高山 環 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕（宝島社文庫）」より発売中 @Takuya11

#twnovel いつの間にか寝てしまった。不思議な夢の後、眠りから醒めると、目の前にいつもと違う世界が広がっていた。暗い大海が現れ 、すぐ雪景色に変わった。僕は何処に迷い込んでしまったのだろう。ぼんやりとした頭で考える。見ず知らずの男が声をかけてくる。「お客さん、終点ですよ」

ぴメレス・大井川・ルヴァリエ @pimeles

#twnovel 昨日僕を振ったばかりなのに、今日の君の態度はいつもと変わるところがなく、その何事もなかった感に僕は二度振られた気分になる。だが君に避けられるようになったとしても、その気分は同じだろう。なるほど振られた後の時間は、振られたことを確かめるためだけに存在しているのだ。

Shimada Yuichi @chimada

ある日のツイッターは妙だった。文字を書くところの「いまどうしてる？」が「なにがあった？」になっていた。私は、「今日、部長に怒られちゃったの」と、そこに書き込んだ。すると、ある人から「大丈夫？」とリプライが来た。だから私はそれに「大丈夫」と返した。 #twnovel

瀬井隆@SEI's factory（官能アカ） @seiryu_09

#twnovel 【人間らしさ】レジに一日立ってて思うけど、最近本当に険しい顔の人が増えた。哀しい世の中だなぁ。でもほっとするときもある。買った商品を受け取り忘れて、お客さんが照れ笑いするとき。どんな人でもその瞬間は無邪気な顔になるんだ。それがその人の本当の顔なんじゃないかなぁ。