デビルサマナー 葛葉あきつ丸vs亡霊戦艦 #6(完結)

大体FFが悪い
1
劉度 @arther456

「わああっ!」「ぐうっ……」あきつ丸も武蔵もスルトから吹き飛ばされた。「し、死んだ婆さんが手招きしとる……」ジュボッコに至っては炎上し、管の中に退散してしまう。「何という、力……!」ここに至って、あきつ丸も武蔵も、格の違いを思い知っていた。霊のパワーが違いすぎる。 22

2015-01-15 22:13:34
劉度 @arther456

「もっと強い悪魔はいないのか!?」「申し訳ない。自分が持ち歩ける悪魔は、今のが精一杯であります」『武蔵、あきつ丸、聞こえるか!?』呉元帥の通信が入る。『大和が横須賀に進路をとった!このままのスピードだと、1時間後には横須賀に突入する!』「何ッ!?」 23

2015-01-15 22:16:47
劉度 @arther456

『カイジュウ・ブルーを横須賀に入れる訳にはいかん!早く脱出しろ!汚染覚悟で大和を沈める!』「カイジュウ……?それよりスルトが横須賀に上陸するほうが危ないであります!」『スルト……?』「ええい、とにかく、早く止めなくてはならんのだろう!?もう少し待ってくれ!」 24

2015-01-15 22:19:59
劉度 @arther456

『……15分。それが限界だ』「上等ッ!」武蔵が艤装を展開する。「武蔵殿ッ!?」「下がっていろあきつ丸。余波で吹き飛ばされても、知らんぞっ!」武蔵が再び、スルトに向かって突進する。スルトの周りの炎が寄り集まり、炎の竜巻となって武蔵に襲いかかる! 25

2015-01-15 22:23:11
劉度 @arther456

「副砲、撃てぇっ!」腰の副砲が火を吹いた。風を切り裂く砲弾は、炎の竜巻を一撃で吹き飛ばす!「ぬうっ!?」眼前に迫った砲弾を、スルトは手に持った剣で切り払う。その手首を、踏み込んだ武蔵の拳が打った。スルトの手が痺れるほどの衝撃、隠しようのない隙が武蔵に晒される。 26

2015-01-15 22:26:24
劉度 @arther456

「オオオォォォッ!」咆哮と共に放たれた第一撃は、顎への右ストレート。そこから連撃が始まる。ボディーブロー、側頭部へのフック、顔面めがけアッパー、肋骨下部への四連打。巨人の体を殴る度に、武蔵の拳が焼け焦げる。だがこんなものを気にしてはいられない。本当にキツいのはここからだ。 27

2015-01-15 22:29:39
劉度 @arther456

「グオオオォォォッ!」スルトが吠え、武蔵の頭を殴りつける。急降下爆撃よりも遥かに重い一撃。「いいぞ、当ててこい!私はここだっ!」武蔵もスルトの胴体に拳を叩き込む。メリ、と骨にヒビの入る感触がした。見上げれば、スルトの顔が苦痛にゆがんでいる。仕掛けるなら今だ。 28

2015-01-15 22:32:55
劉度 @arther456

「全砲門、開け!」武蔵の機銃が、副砲が、そして主砲がスルトに照準を合わせた。武蔵の口元が、勝利を確信し釣り上がる。「撃てぇぇぇっ!」世界最強の艦娘の全火力が、一点に注ぎ込まれた。主砲発射の余波で、大和艦橋の窓ガラスが粉々に砕け散る! 29

2015-01-15 22:36:09
劉度 @arther456

「くうっ……!」防護結界を張っていたあきつ丸ですら、衝撃で一瞬目が眩む。そこに武蔵が吹き飛ばされてきた。「わぁっ!?」艤装付きの巨体をあきつ丸は受け止められず、諸共に倒れ伏す。「お、重いであります、武蔵殿……」あきつ丸が這い出しながらボヤくが、返事はない。 30

2015-01-15 22:39:24
劉度 @arther456

「ぐはっ……!」代わりに、濁った血が武蔵の口から零れた。「武蔵殿!?」「46cm砲の反動は……流石に、響くな。立てん」「どうしてそんな無茶を!」死ぬほどのダメージを負うことは分かってたはずだ。「私の主砲しか奴を倒せなかったんだ。なら、やるしかなかろう?」 31

2015-01-15 22:42:37
劉度 @arther456

「それに……よく分からんのだが、奴には負けたくないと、魂が叫んでいたのだ」「『武蔵』の艦霊が、でありますか?」「いや、少し違うような……まあいいさ。奴は倒し……」炎が、艦橋を包み込んだ。「た……?」薄らいだ硝煙の向こうを見れば、巨人は未だ聳え立っていた。 32

2015-01-15 22:45:58
劉度 @arther456

「滅亡に、人間如きが立ち向かうとは」砲撃を受けたスルトは無傷ではない。肩から、腹から血が流れている。だがその血液が燃え上がり、炎となってスルトの体を再構成している。「最早許し難し!我がレーヴァテインの業火によって、塵芥残さず滅却せしめん!」 33

2015-01-15 22:49:23
劉度 @arther456

スルトが手に持った剣を掲げる。纏い付く炎が一層強く燃え上がり、直視できないほどの光を放つ。「まずい……!」一目見て、防ぎきれない炎であることは分かった。「あきつ丸、逃げろ!」だがあきつ丸は、詰襟制服の裾をマントのように翻して立ち上がった。 34

2015-01-15 22:52:35
劉度 @arther456

「武蔵殿。奴を倒す算段がつきました」「何だと?」思いがけぬ言葉であった。「ただ、その……武蔵殿にもう一頑張りしてもらうことになりますが……」「……馬鹿にするなよ」武蔵は血を吐き捨てる。「私の我慢強さはお前だって知っているだろう?」「……そうでありましたな」 35

2015-01-15 22:55:52
劉度 @arther456

「あきつ丸。時間がない。俺も手伝うぞ」いつの間にか、あきつ丸の足元にゴウトが寄り添っていた。「了解であります」目を閉じたあきつ丸の呼吸が変わる。自らをトランス状態に変質させ、異界へのチャンネルを開く、霊媒師特有の呼吸法だ。つまり、あきつ丸はこれから、この場に悪魔を召喚する。 36

2015-01-15 22:59:07
劉度 @arther456

その時、武蔵は感じた。自分の奥底に眠る何かの意思を。艦霊ではない。その更に奥で彼女に合流した神の一片。あきつ丸がその僅かな糸を手繰り寄せて、偉大なる者を喚んでいる。飛びそうになる意識を繋ぎ、武蔵もその意志を辿る。さしもの武蔵も、自身の奥底の神性に震える他なかった。 37

2015-01-15 23:02:17
劉度 @arther456

「根之堅洲国を治めし三柱の神よ。高天原を神逐され、日ノ本に降り立ちし最古の英雄よ。我が呼びかけに応え給へ」あきつ丸の声に、彼方の神が顔を上げた。彼女は目を見開き、詩を歌う。「八雲立つ、出雲八重垣、妻籠に。八重垣作る、その八重垣を――!」 38

2015-01-15 23:05:34
劉度 @arther456

輝かない光の柱が、武蔵の目の前に伸びた。そうとしか呼び表せない色彩の中に、人型の何かがいる。やがて光の柱が消えると、中の人影はハッキリと姿を現した。赤い肌に青い髪、馬の革をなめした外灯を羽織った、思わず頭を垂らしてしまいそうな威厳を持つ神であった。 39

2015-01-15 23:08:50
劉度 @arther456

「俺様はスサノオ……俺様を呼んだのは、貴様か?」粗暴な声が、あきつ丸に呼びかける。「その通りであります」「随分と細い道を通してくれたな」「武蔵殿の艦内神社として分社された氷川神社、その祭神がスサノオノミコト、貴方でありましたな」 40

2015-01-15 23:12:10
劉度 @arther456

そんな細い繋がりからこの神を呼んだのか。あきつ丸の召喚士としての技量に、武蔵は内心舌を巻いた。「俺様を呼んだその度胸は認めてやる。だがな、貴様のようなヒヨッコに指図を受ける気は……いや待て」スサノオの目が、剣を掲げたスルトに止まった。「待て、待て待てぇ!」 41

2015-01-15 23:30:16
劉度 @arther456

スサノオの姿が消えた。かと思いきや、次の瞬間スルトの目の前に剣を持って出現した。丁度振り下ろされようとしていたレーヴァテインを、スサノオの剣が受け止める。「貴様……随分と生意気な剣を持ってるようだな?」「生意気?我が剣の何が生意気だというのだ」 42

2015-01-15 23:33:28
劉度 @arther456

「生意気なのだ!」スサノオがスルトを蹴り飛ばす。「下界のことは耳に入ってくるが……貴様の剣と俺様の剣が同列扱いなのが気に食わん!」「何?」スルトにそんな心当たりはない。だがスサノオはまくし立てる。「貴様のラグナロクより、俺様の天叢雲剣の方が格上なことを、思い知らせてやる!」 43

2015-01-15 23:36:19
劉度 @arther456

「ラグナロク?この剣はレーヴァ……」「行くぞぉぉぉっ!」聞く耳持たず、スサノオが剣を構え突進!スルトの首めがけてまっすぐに突き出す!疾い!「ぬうっ!?」スルトは上体を捻ってこれを回避、逆にスサノオの頭に剣を振り下ろす!神剣同士がぶつかって、けたたましい金属音が鳴り響く。 44

2015-01-15 23:39:07
劉度 @arther456

「ぜえいっ!」炎の剣を受け流し、スサノオはスルトの首を狙う。だがこれは、スルトが自身の剣で受け止める。そこでスサノオは剣から片手を離し、スルトの顔面を殴りつける!「熱ィ!」「グオオォォッ!?」スルトが吠え、腕を振り回して暴れまわる! 45

2015-01-15 23:41:51
劉度 @arther456

スルトの腕がスサノオの顔面を直撃!「がぁっ!」よろめいたスサノオの剣が、スルトから抜ける。「巨人が、力で負ける所以無し!」「そんなもの、見れば分かる!」何しろスサノオの倍近い体躯の巨人だ。本気を出せば力比べでは叶いそうにない。だが、これは剣の勝負だ。 46

2015-01-15 23:44:42