激高したスルトの振り回した腕に、スサノオは剣を振り下ろす!スルトの腕を手首を両断!「ガァァァッ!?」だが、切断面から血ではなく炎が吹き出す!「うおおっ!?」炎がスサノオの体を炙る。更に身を包んだ炎が、スサノオの体を締め上げる!「何……ッ!?」 47
2015-01-15 23:47:27「我は炎!枝の破滅をもたらす者!肉は器に過ぎぬ!」炎が巨大な手となり、圧力と熱でスサノオを握り潰そうとする!「ぐっ……ぬううっ!」スサノオはもがくが、炎の拳を振りほどけない。「血の一滴まで、残らず蒸発するが――」パァン!「グオッ!?」スルトの顔が、炎が歪む! 48
2015-01-15 23:50:16あきつ丸のコルトライトニングが、銃口から薄く硝煙を上げていた。6発全弾命中した氷の魔弾は、しかしスルトに決定打を与えられず、その火勢を一瞬弱めることしかできない。その僅かな一瞬を、大蛇殺しの英雄は見逃さなかった。「オラァッ!」スサノオの右手が炎の中から引き抜かれる。 49
2015-01-15 23:53:01引き抜かれた手には剣、それをスルトの炎に突き刺す。すると、あれだけ火勢を誇っていた猛火が、一瞬にして霧散した。「馬鹿な!?」驚愕するスルトの前で、戒めを解かれたスサノオが、床に降り立つ。「驚いたかよ?これが俺様の天叢雲剣だ」切っ先をスルトに向け、スサノオが笑う。 50
2015-01-15 23:55:44「こいつを持ってたヤマタノオロチってのがよ、頭に雲を浮かべてる、絵に描いたような水の精でな。お陰で火の災難には絶対に合わねえんだわ」ヤマタノオロチの尾に封じられていた天叢雲剣、またの名を草薙剣と呼ばれる神剣の発見者、それがスサノオだった。 51
2015-01-15 23:58:34その横に、あきつ丸が赤口葛葉を携えて並ぶ。「おう。今のは助かったぞ。だが下がってろ。焼け死ぬぞ?」「気遣い無用であります。後ろで見ているだけでは、名が廃るであります」「ヒヨッコの癖に口だけは一人前だな」スサノオが天叢雲剣を構える。「名前は?」 52
2015-01-16 00:01:25「自分はかつて帝都を守護し、帝都亡き後は日ノ本を守護するデビルサマナー。葛葉ライドウの名を継ぎし陸軍揚陸艦、あきつ丸であります」「よし、あきつ丸。ついてこいっ!」二人が同時に、滅びの炎に向かって駆け出した。 53
2015-01-16 00:04:12「オォォォノォレェェェ!」スルトがレーヴァテインを振るうと、業火の壁が二人の前に立ち塞がる。だがスサノオが天叢雲剣を一閃させると、業火はたちまち消失する!再びスルトが剣を振り上げるが、あきつ丸が発砲!氷の魔弾を打ち込まれ、スルトの動きが一瞬止まる。 54
2015-01-16 00:06:59「せぇいっ!」一瞬の隙に、天叢雲剣が滑り込んだ!スルトの胴を真一文字に薙ぎ払う!炎が噴き出し、巨人の胴を縫い止めようとする!「まだまだぁ!」そこにスサノオが斬り付け、傷を十文字に切り広げる!炎が吹き出す間もなく袈裟懸けに剣を振り下ろす!更に返す刀で左腕切断! 55
2015-01-16 00:10:19常人の八倍速で、スサノオはスルトを切り刻んでいく。まるで、酒など無くとも八ツ首の大蛇を相手にできたことを、ここで証明するかのように。そして炎を切り刻んだ先に、ひときわ輝く熱の塊があった。スルトの核が、周りの炎を捨てて上方に逃げようとする! 56
2015-01-16 00:13:04「あきつ丸!」スサノオに呼ばれる前に、あきつ丸は走っていた。彼女の跳躍をスサノオは腕で受け止め、その腕力でスルトの核へと投げ飛ばす!「使え!」更に後を追って、天叢雲剣を投げる!あきつ丸は空中で身を捻り、神剣を掴み取る。スルトの核が、丁度眼下にあった。 57
2015-01-16 00:15:53「たあああぁぁぁっ!」乾坤一擲、全ての力を込めて天叢雲剣を振り下ろす。神剣の刃は、滅びの炎を両断した。スルトの核は、その中に詰まっていた炎諸共、天叢雲剣に掻き消された。一瞬の閃光。その後、全ての炎が消滅する。落ち始めたあきつ丸には、黒焦げになった大和の全容が見えた。 58
2015-01-16 00:18:35前転着地したあきつ丸を待っていたのは、スサノオと、武蔵に炎から守られていたゴウトであった。「見事だったな、あきつ丸」真っ先にゴウトがあきつ丸を称える。「とんでもない。殆どはスサノオ様のお陰であります」そう言って、あきつ丸はスサノオに剣を返した。 59
2015-01-16 00:21:25「これで俺様の天叢雲剣が最強だって、分かったな?」「はい。とても自分が自由に使える代物ではないと、思い知らされました」「重畳重畳。長年の悩みが晴れたわけだ。さーて、姉者に自慢してくるか」そう言うと、スサノオの体が急速に薄くなり、幻のように消えてしまった。 60
2015-01-16 00:24:10「……うまく追い返したな」「心臓バクバクだったであります」途端にあきつ丸とゴウトが汗を流し始める。「な、そんなに不味かったのか?」悪魔召喚の事は専門外な武蔵には、二人がなぜ冷や汗をかいているか分からなかった。 61
2015-01-16 00:26:50「不味いも何も、細かい対価も決めずにとにかく呼び出しただけでありますから……対価に何を要求されても、文句は言えなかったのであります」武蔵は納得した。確かに一大事であった。『こちら播磨!』そこに、通信が入る。呉元帥の声だ。 62
2015-01-16 00:29:32『大和が止まったぞ!やったのか!?』「こちらあきつ丸であります。至急、医療班を大和艦橋まで読んで欲しいのであります」『ということは……』並走する播磨に向かって、あきつ丸は胸を張って答えた。「任務完了。大和は無事に除霊したであります!」 63
2015-01-16 00:32:17夕焼けの中で、大和は再び播磨に曳航されていた。もう動き出すことはない。遠隔操作する宇宙人も、炎の魔王もいなくなった。大和は静かに曳航される。その隣を進む蔵王も、トゥナを倒した後、他の悪魔たちが我先にと逃げ出したため、すっかり静かになっていた。 65
2015-01-16 00:35:09そんな蔵王の甲板から、一筋の煙がたなびいていた。提督がカセットコンロの上に網を載せ、肉を焼いている。「提督殿」「何?」その隣には、不安げな顔をしたあきつ丸が立っている。「本当にそれ、食べるのでありますか?」「何でも食う陸軍までそんなこと言うなんて……」 66
2015-01-16 00:37:55「念のため言っておきますが、トゥナはポリネシアの鰻の神であります」「で、味は?」「いや、食った人間などいないであります」「じゃあ食べてもいいじゃん」「何がじゃあなのですか!毒とかあったらどうするのですか!?」「鰻は元から毒持ってるよ?火を通せば大丈夫だけど」 67
2015-01-16 00:40:40提督が焼いているのは、先程襲いかかってきたトゥナの切り身である。不知火のナイフと熊野の神戸水鳥拳によりぶつ切りになったものだ。他の艦娘たちが止めるのも聞かず、焼いて食べると言って譲らない提督であった。「ああもう……ゴウト先生からも何とか言って欲しいであります!」 68
2015-01-16 00:43:27「ふむ」呼ばれて、黒猫が進み出る。「白焼きで食べるのか?」「先生ーッ!?」「いやまあ、そりゃあねえ。いくらウチの艦でも、蒲焼きのタレまでは常備してないよ」「そうか。それは残念だったな。……ところで、もう焦げかけてないか?」「え、あ、わっ!」 69
2015-01-16 00:46:11鰻肉から上がる煙が、白から黒に変わりかけていた。慌てて提督は網から肉を上げ、ふぅふぅと息を吹きかけ冷ます。ステーキのような鰻肉から、肉汁が滴り、網の上でじゅうっと音を立てた。「おっきい鰻肉……ふふっ、いただきまーっす!」大きな口を開けて、トゥナの肉にかぶりついた。 70
2015-01-16 00:48:55数度の咀嚼。滴る肉汁と共に、肉の味を堪能する提督。幸せそうなその顔が、急速に困惑の色に変わっていく。それを見てあきつ丸は、解毒魔法を持つ悪魔の管に手をかける。だが、肉を飲み込んだ提督の口から出てきたのは、意外な言葉だった。「ココナッツの味だ」 71
2015-01-16 00:51:42