【邪悪の樹――二籠】第二交流フェイズ――伽藍の矢

【邪悪の樹——三ツ牙】企画管理アカウント @treeofevil

@habgier_toe 『宜しい。ではお話致しましょう』 鳥はその翼でもって『貪欲』の指し示す。其処には、以前の扉とは全く違う、鉄で出来た大きな扉が一つだけ。 『あの扉の向こうに居りますは、【万斛の鎌】。此度もその心臓を喰らえば、貴方の失った感覚を取り戻すことが出来るでしょう』

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@habgier_toe 『そして貴方が此処へ戻る頃、儀式は完了され、屋敷の扉は開かれる。貴方は外へ出ることができるのです』

【貪欲】ハープギーア @habgier_toe

鳥が指し示した方角へと目を遣る。続く説明に沈思する。 前回の扉は五つ。今回の扉は一つ。 個々の戦いだった前回と違い、乱戦となるのか。それとも、敵方にはもう一人しか残っていないのか。はたまた、この屋敷を居場所とする存在は、自分だけとなってしまったのか。

【貪欲】ハープギーア @habgier_toe

感覚についても思いを馳せる。 戻って来た記憶の中の自分は、背を預けることが癖だった。そうして酷く安心していた。理由は、今となっては分からない。 知らないことは知りたいと思う。手に入らないものがあると知ってしまったから、尚更手に入るものは欲しいと感じる。

【貪欲】ハープギーア @habgier_toe

そして、同胞もそうであって欲しい。 【物質主義】と【不安定】の声が聞きたい。全ての戦いが終わった後、陽だまりの下で、五人で途切れることのない話がしたい。 日が暮れた頃に冷え切った手で捕まえて抱きしめて、痛い、つめたい、と緩やかな抗議を投げてくる【残酷】と【愚鈍】に笑いたい。

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夢想を終え、鳥の言葉を反復する。 「儀式……ね」 視線を鉄の扉から大広間に入って来る為の扉へと移す。 外に、出られるのか。 記憶が戻る前から興味を抱いていた外に。 記憶が戻った今となっては、何を切って捨てようと自分は求めてやまないのだと気付いてしまった、未知のもので溢れる外に！

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内心の高揚を抑えて、扉を見つめたまま、問いかける。 「儀式の完了条件は、戦いに勝利することかな？　それとも、心臓を喰らうこと？　それによって、仲間たちに伝える内容が……まぁ、向こうが今も私を仲間と思って、生きて此処に帰ってくるなら、だけれど……変わるからね」

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@habgier_toe 鳥は答える。 『ええ。貴方が戦いに勝利すること。それが、この儀式の完了条件。敵の心臓、及び貴方の感覚は、勝利の景品、と言ったところでしょう』

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「成程ね。私は貰えるものは貰う主義だから関係ないけれど……最悪、殺さずとも此方の勝ちを認めさせれば、外には出られるわけだ」 想定しているのは、今この場で一番考えられる可能性だ。 即ち、同胞の幾人かは死に、残る同胞は寝返り、同胞を喰らった敵とかつての仲間を、一人で相手取る。

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眉を寄せて、小さく唸る。 自分の禍罪は予め絡繰りが分かっていれば、これ以上ないほどに対策が立てやすいのだ。三日後に城に放火するから止めてみせろと憲兵に触れ回るようなものだろう。 同胞たちに戦意がなければどうにか丸め込む、戦意があればすぐさま降伏してしまうのも手か。

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様々な組み合わせを思い浮かべ、演算が一通り完了したところで、はたと気付く。 「そういえば……私たちの話ばかり聞いていたけれど、君のあるじ様は、こんなことをやって何か得をするのかい？」 鳥の眼越しにその主の真意を推しはかろうとするかのように、紫苑の瞳が鳥を捕らえた。

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@habgier_toe 鳥はニタリと笑った。 『さあ、どうでしょう？得かどうかは、全てが終わった後に分かること。あるじ様にも、それは分からないでしょう。……ですが、全てのことは『邪悪』が為に。全てが終わる頃には、貴方の目に見える形で、この儀式の意味が、分かることでしょう』

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にたりと底の知れない笑みを浮かべる鳥に、そう、と短く相槌を打つ。はぐらかされたのか本当に今の時点では分からないのか知らないが、主の言に嘘はないと断言する存在が偽りを述べることはないだろう。知りたければ、勝てばいいのだ。 「それでは、何としても勝たないとね」

【貪欲】ハープギーア @habgier_toe

外套の上から腹部を軽く押さえ、足元を見る。 「次の戦いまで、休む時間はあるかい？ 生憎無傷では帰れなくてね、許されるなら少しでも回復したいんだ」 鳥が是と答えれば外套を脱ぎ捨てて一度自室に戻り、否と答えれば一つ息をついて身支度を始めるだろう。

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@habgier_toe 『時間ならば、まだしばらくあるでしょう』 一つ頷き、鳥は言う。

【貪欲】ハープギーア @habgier_toe

鳥の頷きに、口の端を上げるだけの笑みを見せる。こうして意思の疎通も出来る上、仕草も先代の使いより自分たちに近い。戦いが控えていないのであれば、言葉遊びにでも興じたかったところだ。 それでも迷いなく外套を脱ぎ、立ち上がると同時に椅子へと捨てられたのだから、大した欲求ではない。

【貪欲】ハープギーア @habgier_toe

「では、有難く部屋で休ませて貰おうかな。次の戦いまでに戻らなかったら、起こしてくれると嬉しいね」 僅かに足を引き摺りながらも、体勢を大きく崩すことはなく大広間を出ていく。 途中で思い立ったように浴室へ向かい身体を清めはするが、手早く出て来た後は自室の毛布に潜り込んでいるだろう。

【貪欲】ハープギーア @habgier_toe

そして、暫し後、瞼がゆっくりと持ち上がる。起き上がり、鏡の前で身支度を整え、虚空から先程投げ捨てたものと形も色も寸分狂わぬ外套を取り出す。藍を羽織り、低く呟く。 「さて、行こうか」 足音は何処までも律動的に。一度だけ視線を向けられた指環が、応えるように煌めいた。