#リプが来たキャラごとに今思い付いた書く予定なんてひとつもない小説の一場面を書く

ターレットファイター@土曜日東リ19a @BoultonpaulP92

「収容急げ！」 　駆逐艦娘がだいぶ小さくなってしまった神通を抱えたまま、艦娘母艦の尾部ドックのスリップウェーから引き上げられると、艦娘運用を担当する第六分隊の隊員がその周囲に群がる。神通の体は腰から下がまるまるなくなっていた。＃海上自衛隊鎮守府

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艤装が展開する装甲防壁が飽和して命中した魚雷の爆発を吸収しきれず吹き飛ばされたのだ。服もただのぼろ切れとなっていた。隊員が駆逐艦娘から神通を受け取り、慎重にストレッチャーの上に横たえると、傷口からあふれた血が白い毛布を赤く染める。＃海上自衛隊鎮守府

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傷口の大半は血液中のマイクロマシンによって出血が止まっていたが、それでもまだいくつかの傷口から血がだらだらと流れていた。 　神通を手早く固定すると、第六分隊の隊員が数人でストレッチャーを押して、同じ甲板にある医務室へ運んでいく。＃海上自衛隊鎮守府

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軽巡神通大破、艦娘神通も大怪我という報せはすでにとどいていたから、医務室では手術の準備がされているはずだ。 ＃海上自衛隊鎮守府

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「今すぐ出撃させてください。応急処置だけでけっこうです」 　神通が所属する部隊の指揮官である西山がストレッチャーに付き添っているのに気付くと神通は、はっきりした口調でそう言った。＃海上自衛隊鎮守府

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艤装をつけている艦娘は、人間よりも一隻の艦艇に近い存在になっている。だから自分が怪我をしたことは「わかる」が、それに伴う痛みは知覚できない。＃海上自衛隊鎮守府

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。そしてショック死を防ぐために神通は艤装を付けたままでストレッチャーに載せられていたから、声が弱々しいことを除けば神通は普段と変わらない様子だった。＃海上自衛隊鎮守府

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「駄目だ。しばらくは絶対安静、いいな？」 　西山は即座にその申し出を却下する。許可できる訳がなかった。 「お願いします」 「駄目だと言っているだろう」 「でも……」 「デモも製品版もあるか。駄目なものは駄目だ。だいいち、上半身だけでは戦えないだろう」＃海上自衛隊鎮守府

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西山はきっぱりと言い切る。当たり前の理屈だった。 「私の武装はほぼ上半身にあります。まだ戦えます」 「駄目だと言っているだろう」 「お願いします！　あの軽巡を私に沈めさせてください！」 　あれはまださ迷ってる私の一部なんです！ ＃海上自衛隊鎮守府

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その言葉を残して、神通を載せたストレッチャーは手術室に入っていった。西山の目の前で、手術室の扉が閉められる。＃海上自衛隊鎮守府

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一般には知らされてないことだったが、艦娘の艤装には深海棲艦から回収された、あるいは海底に眠る残骸から抽出されたコアと言うべき部品が内蔵されている。艦娘のなかには、というか大半の艦娘はその部品が不完全だ。まだ一部が深海棲艦の内部にある。＃海上自衛隊鎮守府

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たぶん、今日神通と戦った深海棲艦の軽巡に、神通の部品を使ったものがいだろう。 　自らの手に取り戻したい。その気持ちはわかる。 「だがな……それじゃあまるっきり、奴らと同じになっちまうぞ」 ＃海上自衛隊鎮守府

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「どうしたのさ日向～。元気ないじゃん」 「まあな……」 　からかっているんだか心配しているんだか今一つはっきりしない口調の伊勢に、日向は曖昧な答えを返した。＃海上自衛隊鎮守府

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視線の先をたどった伊勢の問いにも、日向は答えない。艦首にスキージャンプ台を備え、甲板上に濃紺色のF-35B戦闘機を並べたDDH「さつま」が左右に護衛艦と曳船を従えて二人の前を通りすぎていく。 　さつまが視界から消えると、日向はぼそりと呟いた。＃海上自衛隊鎮守府

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「ひゅうがは沈むとき……何を思ったのだろうな」 「それは日向がいちばんわかっているんじゃないの？」 「ひらがなの方だ」 「ああ……そっちね」＃海上自衛隊鎮守府

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護衛艦「ひゅうが」は深海棲艦との戦争の初期の海戦で沈没している。出港していった「さつま」は、発艦補助のためのスキージャンプ台の装備、搭載機数増加のためにエレベーター一基を舷側へ移設などの改良をひゅうが型護衛艦に加えたさつま型護衛艦の一番艦だ。＃海上自衛隊鎮守府

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「アドミラル諸島の悲劇によるヘリコプターを使った捜索戦術の衰退、ヘリコプター運用に重点を置いたあの艦にとっては存在意義が否定されたも同然だろう。＃海上自衛隊鎮守府

ターレットファイター@土曜日東リ19a @BoultonpaulP92

ぶいとーる、といったかな、戦闘機搭載のための改造も間に合わず結局、時代遅れとなった姿で沈んでいった彼女のことがな、とても他人事に思えなくてな……。まあ、名前のせいもあるだろうな」＃海上自衛隊鎮守府

ターレットファイター@土曜日東リ19a @BoultonpaulP92

「さあねえ……他の人の気持ちはよくわからないや」 　珍しく饒舌な日向に、伊勢は肩をすくめて答えた。 「たぶん、本人にもわからないんじゃないかな」 「……かもな」＃海上自衛隊鎮守府

ターレットファイター@土曜日東リ19a @BoultonpaulP92

あなたには行動を共にした仲間がたくさんいて、わたしにもたくさんいるのだけれど、艦娘になったわたしが真っ先に出会えたのはあなたで。たぶん、こんなにもあなたのことを意識してしまうのは、たったそれだけの理由で。