オバケのミカタ第四話『オバケのミカタと瀬戸大将』Cパート(3/3)

Cパートです。
1
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

友愛の母は連絡を受けるなり仕事先を飛び出し、こちらへ急行しているらしい。彼女が到着するまで友愛は交番で預かってもらうことにして、哀たちは一足先に退散することにした。ほっしーこと鴉天狗の星子が友愛の付き添いとして残ってくれることになった。 #OnM_4 183

2015-01-24 22:25:05
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

別れ際、カップの瀬戸大将は片膝をついて騎士の礼を送った。ポットの瀬戸大将はスカートめいたカップの縁をちょいとつまみ、優雅なお辞儀を返した。お互い、それで事足りたようだった。 #OnM_4 184

2015-01-24 22:25:28
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

神奈と、マコトと、カップの瀬戸大将を肩に乗せた哀は、連れだって家路についた。神奈とマコトがお互いちらちらと視線を交わしながら、それでも何も言えずにいるのを横目で眺めながら、哀は肩の付喪神に訊ねた。 #OnM_4 185

2015-01-24 22:25:47
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

「それで、結局『ソロモン』に戻るつもりなの?」ティーカップは妙に晴れ晴れとした顔で、大きな頭を横に振った。「いや。私も……新しい持ち主を探すつもりだ」「そう。だったらお化け関係の品を扱ってるアンティークショップを何軒か知ってるから、紹介するわ」 #OnM_4 186

2015-01-24 22:26:29
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

「有り難い。しかし……不揃いのカップに過ぎぬ私を欲しがる者が、果たしているだろうか」「気にする人は気にするだろうけど」哀は愉しげに言った。「気にしない人は気にしないものよ。そして、前者がどう思うかは重要じゃない。後者に愛してもらえれば、それでいいの」 #OnM_4 187

2015-01-24 22:27:15
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

瀬戸大将は頷き、それきり何も言わなかった。彩瓦駅の前を通り過ぎたあたりで、マコトは、そこまで押してきたサイドカーにまたがった。お互いの家は、ここから逆方向だった。 #OnM_4 188

2015-01-24 22:27:29
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

「それじゃあ、またね」哀が言った。「うん。また」神奈も頷いた。マコトは、放り出したときに汚れてしまった美術展の図録の袋をぎゅっと抱き締め、神奈の顔を見ながら口をもごもごさせた。その顔がおかしくて、神奈は思わず吹き出してしまった。 #OnM_4 189

2015-01-24 22:27:43
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

「曲さん」「は、はひ」「ゲーセンとカラオケ、どっちが好き?」「えっ?」目が点になった。神奈は爆笑した。「明日、学校で答え訊くから! ちゃんと考えといて――ついでにちゃんと寝て! 昼休みぐらいは目覚まして。そんで今度、一緒に遊びに行こう。レキ部のみんなと」 #OnM_4 190

2015-01-24 22:28:05
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

「えっ。あっ。でも――でも私。また――昨日のように、行けなくなってしまうかも――しれません。折角誘ってもらってもーーまたあんなことになったら――悪いですし。だからやっぱり、私」「曲さん」「はい」「ばーか」「えっ」 #OnM_4 191

2015-01-24 22:28:26
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

「ちょっと自意識過剰すぎ、固く考え過ぎ! デートの約束でも商談でもないんだから。都合がいいとき、軽い気持ちで混ざってくれたらそれでいいんだよ。別に365日24時間ずっと休みなしってわけじゃないんでしょ?」「え。ええ、それは、はい」 #OnM_4 192

2015-01-24 22:29:01
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

「じゃあそのうち予定が合う日も来るでしょうよ。そのときは、歓迎するからさ。そんな気負う必要なんてないんだよ。友達づきあいってそういうものじゃん。変な義務感持ったり思い詰めたりしたら、いけないよ」そして神奈は、小さく付け加えた。「自分も相手も、楽しくないとさ」 #OnM_4 193

2015-01-24 22:29:38
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

「そう――ですか」「うん」「分かりました。……でしたら、いつか。ぜひ」「うん。……とりあえずまた明日、学校でね」「はい。また明日、学校で」マコトはヘルメットをかぶると、サイドカーを発進させた。神奈も踵を返し、歩きだした。 #OnM_4 194

2015-01-24 22:29:49
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

誰にともなく、呟く。「やーっぱ、格好いいなあ、曲さんは……」思い起こされるのは、彼女が友愛を鮮やかに救出した、あのシーンだ。「とてもあたしじゃ、ああはなれないや」でも、いいのだ。神奈は神奈なのだから。 #OnM_4 195

2015-01-24 22:30:15
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

空き巣の通報を受けた巡査が慌てて飛び出してゆき、机の対面に座っている星子がうつらうつらと居眠りをはじめた。友愛はティーポットと取り留めのない話をしながら、母が来るのを待った。「あのさ。あんたの修理だけどさ。……お母さんに頼んでみようか」 #OnM_4 196

2015-01-24 22:31:00
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

ポットはちょっと意外そうに、目を見開いた。「友愛のお母さん、金継ぎができますの?」「知らない。知らないけど、少なくともあたしよりは器用だから。切れたズボンとか穴の開いた靴下とか、いっつもあたしが寝てる間に直してくれるし」「へえ」ポットがくつくつと喉を鳴らした。#OnM_4 197

2015-01-24 22:31:19
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

「? なんで笑ってんの?」「いえいえ。それで? 他にお母さん、何をしてくれますの?」「そうだなあ。昔は手提げとかエプロンとか、よく縫ってくれたよ」「他には?」「給食のランチマットも作ってくれたよ。毛糸の帽子も。マフラーも。手袋も。それからね、それから……」 #OnM_4 198

2015-01-24 22:31:41
アンダーグラウンドノベルズ @OBAKEnoMIKATA

第四話『オバケのミカタと瀬戸大将』終わり  ~ 第五話『オバケのミカタとカシマさん』に続く

2015-01-24 22:31:53