俺の声

亮ちゃんのお話
3
クラゲ @04kurage

【俺の声】⑤① 少し戸惑った彼女 『本当は一緒にやるはずだった人が居るんですけどね、その人できなくなっちゃって』 と言った そりゃまだ出会って3回目で 俺になんて何も言わんよな でも入り口に飾られたツリー 「綺麗やな」

2014-12-15 21:27:39
クラゲ @04kurage

【俺の声】⑤② 『錦戸さんに飾ってくださいって言ったのにお店のが飾ってないのおかしいじゃないですか』 「俺はまだやねん。ごめん」 『ゆっくりで大丈夫ですよ?飾りたいって思ったらで…』 「そうやね」 『私も…』 「ん?」 『いえっ…』 彼女が何を言いたかったんかはわからない

2014-12-15 21:27:45
クラゲ @04kurage

【俺の声】⑤③ 『できましたよ』 「ありがとう。あ、まだ仕事なん?」 『え?あ、はい。注文をたくさんくださってて』 「そうなん?ごめんなー。増やして」 『え?!全然です!』 彼女が見せてくれた型紙 大きさもちょうどやし 触らしてくれた皮や生地はめっちゃええやつやった

2014-12-15 21:27:52
クラゲ @04kurage

【俺の声】⑤④ 「いつでもいいし。その方がここに来れるやん?」 『え?あ、ありがとうございます』 ヤバい 言ってしまったって思ったけど ちょっと照れた彼女が可愛いくて 「これ、良かったら聴いて?」 ってアルバムを渡す 『ありがとうございます』 「じゃ、また来るわ」

2014-12-15 21:28:07
クラゲ @04kurage

【俺の声】⑤⑤ 俺はウキウキで 彼女がラッピングしてくれたタオルを何度も眺めた 少しずつでいいから 彼女にも前を向いて欲しい 俺が優子さんと出会って前を向こうって思えたように…

2014-12-15 21:34:50
クラゲ @04kurage

【俺の声】⑤⑥ 錦戸さんから渡されたアルバム なんとなく店で流してたら “好きなんですか?私大ファンなんです” って若い子達に言われる事も多くなって まさかここに来るなんて言えないし 『昔ファンで、また最近ちょっと聴きたくなって』 なんて言ってみる

2014-12-17 23:58:18
クラゲ @04kurage

【俺の声】⑤⑦ “今度東京ドームに行くんです” とか情報をくれた 錦戸さんも忙しいんだなって思ったけど 合間を見つけては連絡が来て 財布の事は聴かれずに なぜか “今日は最後のロケです” とか “生徒役の子たちみんな喜んでくれました” とか 近況報告ばかりだった

2014-12-17 23:59:10
クラゲ @04kurage

【俺の声】⑤⑧ どう返していいかわからなくて 良くある勧誘メールみたいに思えて 何となく素っ気なく返してしまう 芸能人の人とメールとか なんで私となのかもわからないし 暇つぶし? 興味本位? 何となくそんな気がして あまり乗り気にならない

2014-12-18 00:03:16
クラゲ @04kurage

【俺の声】⑤⑨ でも1日メールが来なかったら 今日は忙しかったのかな… 何て思って携帯を見つめてて ふとつけたテレビの生放送の音楽番組に出てて 何となくホッとする私 街で溢れてる錦戸さんを見るたびに ドキってして そんな自分にちょっとだけ罪悪感が宿る

2014-12-18 00:07:46
クラゲ @04kurage

【俺の声】⑥⓪ 別に悪いことをしてる訳ではないのに… 思い出す錦戸さんの笑顔 同じような境遇だから? 違う これ以上存在を大きくしても 財布を作って渡したらもう終わりだから そう自分に言い聞かせて仕事に集中した 黄色い刺繍糸を持つ “財布完成しました”

2014-12-18 00:18:27
クラゲ @04kurage

【俺の声】⑥① そう連絡するのに30分 ずっと画面を眺めていた…

2014-12-18 00:19:15
クラゲ @04kurage

【俺の声】⑥② “財布完成しました” って連絡が来た 年内は無理かもって言ってたのに 急に来た連絡に驚く コンサートの終わった週末に取りに行く事にした 「なぁ、マネージャー。お願いがあんねんけど」 “思いっきり私的感情じゃん” 何て言って笑われた

2014-12-20 18:17:21
クラゲ @04kurage

【俺の声】⑥③ 優子さんの昔に何があったのかわからへん けどきっと俺と同じで 大切な人を亡くして その悲しみからまだ立ち直れてないねん ラジオで聞いた女性のエピソードと あの日火葬場で流れてく煙を見上げて泣いていた女性は優子さんだと思ってる

2014-12-20 18:17:26
クラゲ @04kurage

【俺の声】⑥④ 時間が解決してくれるなんて嘘や それは俺が一番わかってるつもり やけど誰かが手を伸ばしてくれたら きっと優子さんやって進む事が出来るはずや 俺にその役目させて欲しいって思った 「亮、最近よう笑うやん」 「なんかええことあったん?」

2014-12-20 18:17:36
クラゲ @04kurage

【俺の声】⑥⑤ 「え?うん。ちょっとな。あのさみんなにお願いあんねんけど…」 コンサートの終わった次の日 お店が閉店してから行く 『いらっしゃいませ』 「ごめんないつもこんな時間に」 『大丈夫です』 店の奥から箱にいれた財布を持って来てくれた 「めっちゃええ」

2014-12-20 18:17:57
クラゲ @04kurage

【俺の声】⑥⑥ 手に取っただけで言った俺に 『まだ見ただけなのに』 って笑った 「優子さんありがとう」 『本当に芸能人の人が持つような物じゃ…』 「そんな事ないって。何より優子さんが作ってくれたのがめっちゃ嬉しいねん」 『え?あ、ありがとうございます…』

2014-12-20 18:18:01
クラゲ @04kurage

【俺の声】⑥⑦ 「俺、優子さんに出会ってよかった」 『本当にまさかここに錦戸さんが来てくださるなんて」 「優子さんのおかげで俺ちょっとだけ前に進もうって思ってん」 『え?』 「彼女の事忘れた訳じゃない。これからも忘れられんよ。大事な大切な人やったから」

2014-12-20 18:18:04
クラゲ @04kurage

【俺の声】⑥⑧ 黙って俺の話を聞いてくれてる 「その人の事をずっと想ってる想い出にしてもええかなって。やから優子さんにもそうなって欲しいねん」 『え?あの…なんで…?』 「4年前、火葬場でずっと煙突から流れてく煙を見上げてる女性がいてん」

2014-12-20 18:18:10
クラゲ @04kurage

【俺の声】⑥⑨ 驚いた顔をして目に涙を溜めた 「あれ優子さんやろ?」 『私の事は…』 「雪をください」 『…』 「ラジオにリクエストしたんも優子さん?」 『本当にもう…』 拒絶する様に背を向けられた 「時間は解決してくれんで優子さん?」

2014-12-20 18:18:13
クラゲ @04kurage

【俺の声】⑦⓪ 『私の事はほっといてください』 「これ、クリスマスの日にコンサートあんねん。俺の歌聞いて欲しい。少しでも前に進んで欲しいから」 カウンターにチケットを置いて俺は店を出た 泣かしてもうた… 言い過ぎたやろか… 何て気にしてももう遅いし

2014-12-20 18:18:16
クラゲ @04kurage

【俺の声】⑦① 「はぁ…」 「亮どうしたん?」 「来うへんかも」 「まだわからへんやろ。とにかく俺らがやる事は一つや」 「うん…」 “エイト、エイト、エイト” ふぅーと一息深呼吸する 彼女の座席は今は見えへん どうか居てくれ…

2014-12-20 18:18:18
クラゲ @04kurage

【俺の声】⑦② “クリスマスにお休みにするなんて” どうしていいかわからなくて 子持ちの友達のところに駆け込んだ “昨日もケーキだったのに” 何て言いながら 私のお土産を頬張る “それで?なに?” ここ数週間で起こったことを順に話していく

2014-12-21 09:28:48
クラゲ @04kurage

【俺の声】⑦④ “タクシーは呼んでおいてあげる” そう言って玄関で待たされる “また報告してよ。じゃあねー” 手を振る友達 “どちらまで?” と運転手さんに聞かれる 私はどこに行けばいいんだろう…

2014-12-21 09:28:51
クラゲ @04kurage

【俺の声】⑦③ “ふーん。で?” 『だから…どうしたらいいかなって』 “それをこの忙しい主婦を午前中から捕まえて聞きに来たの?” 『えっと…』 “年末の大掃除もしなきゃいけない中?暇じゃないの。手伝ってくれる” 『それは…』 “だったら、自分の行きたい所に行きなよ”

2014-12-21 09:28:51
クラゲ @04kurage

【俺の声】⑦⑤ 「亮、おったか?」 「わからへん。怖くて見れん…」 「次やな」 「亮ちゃんの幸運を願って」 「みんな…」 一人ひとりと拳を付き合わせる 「ほな行きますか」 再び幕が開く みんなに頼んで今日の公演だけ曲目を変更してもらった

2014-12-21 23:28:28