ベイ金剛VSベイ山城

J9J9...(届かぬ想い)
3
前へ 1 2 ・・ 7 次へ
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

そもそもビス子というのも長門がそう呼んでいるだけで本名なのかどうかは分からない。 その長門も彼女の目的については理解できなかったようだが。 「というか何で貴女は普通にドイツ語喋ってるんデスカネ?」

2014-12-25 02:22:16
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

「昔アメリカで時にドイツの重巡と一緒になってな。名前はプリンツ……そんなことはどうでもいいだろう。 演習だ演習!」 途中で言葉を切った長門は手をパンパンと叩いて集中しろと言う。 ビス子サンが長門の言葉に何か反応したようだったが…… 何も言わない辺り、話を進めていいのだろうか。

2014-12-25 02:24:34
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

「お前だお前。金剛、お前だ」 「えっ?」 不貞腐れた長門は机に頬を突き、つまらなそうにワタシを指さした。 釣られてワタシも自分を指さす。 ビス子サン、貴女が指をさす必要はない。 「内勤のお前は艦隊の頭数に加えられていない。つまり、お前は出撃禁止令がかかっていない」

2014-12-25 02:25:08
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

「……えっ?」 「後で確認しておけ、お前の戦闘衣装には触れられてないぞ」 「艤装この間壊しちゃったし」 「新しいのが届いたぞ」 「えっ……ワタシが……やるの?」 「他に選択肢はない」 思考が追い付かない。 いや、追いつきたくない。 理に叶っているが、理に叶ってはいるが。

2014-12-25 02:26:22
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

「ビス子サンは? どう見ても戦艦デショ」 「得体のしれない奴を出すわけにはいかんだろう……」 「だってワタシ内勤だヨ? この間の演習だってかなり無理言って書類一杯書いて出たんデスヨ?」 「本音は?」 「アレで最後って言ったのに出たらカッコつかないでショー……」 「えぇ……」

2014-12-25 02:27:30
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

最後の引き気味の声は扶桑サンである。 「鎮守府同士の演習だ。ウチの、提督のプライドがかかってるんだぞ。安いプライド何か投げ捨てろ、深海棲艦に食わせてしまえ」 「うぐぅ……」 提督の話を出されると辛い。 「金剛、良妻賢母と言う言葉を聞いたことはあるか?」 「リョーサイケンボ?」

2014-12-25 02:28:27
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

「日本における妻の理想の姿だ。常に夫を立て、その為には自らさえ犠牲にする。お前も提督とケッコンしたのならば覚えておかなくてはいけないのではないか?」 「何だか違うような…」 「分かっているさ、扶桑。だがそれ以上は言わなくていい」 会話は続いていたようだが、途中からは聞いていない。

2014-12-25 02:29:55
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

長門の言葉がグルグルと頭の中で繰り返される。 理想のJapanese Ladyに求められるものはリョーサイケンボ。 夫の為に自らを犠牲にするStyle。 リョーサイケンボ……リョーサイケンボ……リョーサイケンボ。

2014-12-25 02:30:45
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

「わ……分かりまシタ! 提督のため戦艦金剛、今一度海に戻りマス!」 「良く言った! それでこそ戦艦だ!」 「さ……流石ね、金剛さん」 ぱちぱちと気の無い拍手が送られる。 ワタシも外面に出さないだけで、感じている。 きっとこれからも、何かと理由付けて海に出される気がする。

2014-12-25 02:30:52
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

今日はここまでデス 小出しするとは何だったのか……

2014-12-25 02:31:19
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

翌日、扶桑サンの妹、山城サンが到着する当日である。 ワタシはここ数日のルーティン通り黒の軍服に袖を通し、提督代理として書類と戦っていた。 いつもなら執務室にはワタシが紙をめくる音とハンコを押す音だけが繰り返されるのだが、今日は違っていた。

2014-12-26 01:34:59
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

「フー、これで一段落、デスネ」 「お疲れ様、金剛さん」 「お疲れ様でシター。扶桑サンが手伝ってくれたので予定よりもずっと早く終わりまシタ。ありがとうございマース」 とんとん、と扶桑サンが書類の端を机に当て、揃える。

2014-12-26 01:35:20
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

今日は扶桑サンが秘書艦代理……というのは大袈裟かもしれないが、書類を手伝ってくれていた。 「気にしないで、時間があったから……」 「滅多にない休暇なんだから休めばいいじゃないデスカー。あっ、分かりまシタ、妹サンに早く会いたいのデスネ?」 「ええ……ばれてしまったわね」

2014-12-26 01:35:44
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

お客様が到着して一番最初に通されるのはこの執務室だろう。 それを見越していたという訳らしい。 ああ美しき姉妹愛。 よっぽど妹サンが可愛いのだろう。 ジリリリリリリリ。 電話のベルがけたましく鳴り響く。 「Hi,こちら執務室、金剛デース」

2014-12-26 01:36:15
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

『長門だ。今、先方様が到着した、執務室に案内する』 「了解」 受話器を戻す。 長門は暇そうにしていたのでとりあえず案内役を頼んである。 「妹サンが到着されたそうデスヨ」 「そ、そう……ねぇ金剛さん、私の格好、おかしくないかしら?」

2014-12-26 01:37:08
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

扶桑サンはその場でゆったりと回ってみせる。 いつもの戦闘装束に近い、白に薄い桃色の花模様が描かれた上衣に赤のスカート。 袖布と上衣に巻く帯はいつもの弾薬ベルトではなくスカートと同じ色の帯だ。 「ええ、いつも通り……いえ、いつもよりも素敵デスヨ。何もおかしなところはありまセン」

2014-12-26 01:38:08
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

「そう……良かった」 扶桑サンが安堵の表情を浮かべるのと、執務室の扉がノックされるのは同じだった。 「来ましたネ」 「ええ……先に、金剛さんの挨拶を済ませてもらってもいいかしら」 「分かりまシタ。積もる話が始まったら止まりまセンものネ」 扶桑サンは小さく頷き、壁際へと下がる。

2014-12-26 01:39:09
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

「どうぞ!」 「し、失礼します!」 扉が開かれる。 逆光が邪魔となり、入室してくるその人物の顔が見えない。 扉が閉じ、光が収まる。 彼女の髪は流れる黒。 整った顔は凛と引き締まっていて、黒の海軍服に身を包んでいる。 被った帽の中央で金糸の翼が……アレ? これ言ったことある。

2014-12-26 01:39:34
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

「って長門じゃないデスカッ!」 「えっ連れてくるって行っただろ?」 「え、ええ、そうデスネ、貴女は何も悪くありまセン……少し取り乱しまシタ」 長門の後ろに一人、女性の姿が見えている。 目を合わさずとも彼女の戸惑いを感じるので、このやりとりは流してもらいたい。

2014-12-26 01:40:44
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

ゴホン、と大きく咳払いをすると、察した長門が身を引いた。 「……はっ! 扶桑型戦艦姉妹、妹のほう、山城です! この度は演習を引き受けてくださりありがとうございます!」 我に返ったらしい彼女が慌てて敬礼する。 彼女が扶桑サンの妹であることは、たとえ言われていなくても分かっただろう。

2014-12-26 01:43:21
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

髪は長髪の扶桑サンと違って肩に届くか届かないかといった長さだが、艶やかな黒というところは同じ。 顔はとても似ていて、同じ髪型にされたらパッと見ただけで判断できるか自信が無い。

2014-12-26 01:44:17
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

同じ透き通るような白い肌だが、良く見ると山城サンの方がほんのりと赤みを帯びていて、健康的な肉付きをしている……ような気がする。 いや、扶桑サンが戦艦らしからぬ華奢な身体をしているだけで彼女は小顔だ。 念のため。

2014-12-26 01:44:26
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

「よく来てくださいまシタ、提督代理の金剛デース。こんな姿でお出迎えして申し訳ありまセン」 返礼。 彼女がやや硬直気味なのはワタシの顔が傷だらけだからだろうか。 一応謝っておく。 「いえ……話は聞いています。まだお忙しい時期なのに申し訳ありません」

2014-12-26 01:45:02
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

山城サンは目を伏せ、そして深々と頭を下げた。 なんと人格の出来た人か。 どうしても身近にいる比較対象がクレイジーバトルシップであるので感動の域に達する。 「こちらこそ不安にさせてしまい申し訳ありまセン。どうか顔を上げてくだサイ」

2014-12-26 01:45:38
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

「本来なら中止にするべきだと思ったのですが……私も楽しみにしていたので、無事に開催できることになり嬉しいです」 そう言って顔を上げた彼女の微笑みは可憐の一言。 流石扶桑サンの妹である。 「あっ……」 山城サンの視線がワタシからずれ、その表情が固まる。 その視線の先には当然。

2014-12-26 01:46:08
前へ 1 2 ・・ 7 次へ