ベイ金剛VSベイ山城

J9J9...(届かぬ想い)
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ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

「ああ、扶桑サンの妹様ということで来て頂いているんデスヨ。さ、扶桑サンこちらへ―—」 「扶桑姉さまあああああああああああああああああああああああああああああっ!」 「マッ!?」 猪突のそれ。 跳ね飛ばされたワタシの視界がぐるりと回転し、天井を見上げるまでに感じたことだ。

2014-12-26 01:47:13
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

「姉さま! お久しぶりです、お変わりありませんか!? 悪い男に言い寄られていませんか!? ええとそれから!」 「山城、まずは、少し落ち着きなさい」 「はっ……ごめんなさい姉さま……嬉しくて、つい」 「私も貴女に会えて本当に嬉しいわ。でも先にしなきゃいけないことがあるでしょう?」

2014-12-26 01:48:18
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

「はい……」 ワタシの中にフラッシュバックする記憶がある。 扶桑サンに対する彼女び態度はまるで―— 「手を貸そうか?」 「えっ? あっ……Thank you」 ヌッと視界に伸びてきた長門の腕を取ると、力任せにグイと引き寄せられた。 なんだよ男前かよお前。

2014-12-26 01:49:56
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

「ってあああああ! も、申し訳ありません! 扶桑姉さまにお会いできたのが嬉しくて、つい!」 慌てて駆け寄ってきて、何度も頭を下げる山城サン。 うーん、演習として一人派遣されてきたことも考えると、やはり普段は優秀な方なのだろう。 青ざめた顔からも、彼女の人間性の良さが滲み出ている。

2014-12-26 01:50:37
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

「お気になさらず。堅苦しい挨拶は止めにしまショー。扶桑サン、山城サンに鎮守府を案内してさしあげてください」 ワタシの提案に、姉妹二人の顔が明るくなる。 「姉さまが!?」 「金剛さん、いいの?」 「ええ、積もる話もあるでショー。お願いしマース」

2014-12-26 01:51:14
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

静かな笑みを携えた扶桑サンと話をつけ、ワタシは対照的に満面の笑みの山城サンに向き直る。 「本来ならワタシが案内するべきなのデスガ。まだ執務が残っておりまシテ。申し訳ありまセン」 「そんな! 配慮して頂いて、お礼を言いたいぐらいです!」 「ゆっくりと二人の時間を過ごしてくださいネ」

2014-12-26 01:52:01
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

「はい、ありがとうございます!行きましょう姉さま!」 「ええ。でも少し話をしてくるから、先に外で待っていてくれるかしら?」 「はい!分かりました!」 速足で出ていく山城サンを視線だけで見送る三人の戦艦。 大きな音と共に扉が閉まると、扶桑サンがゆっくりと回ってこちらを向いた。

2014-12-26 01:52:58
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

「ごめんなさい、金剛さん。どこも怪我してないかしら」 「ええ。何というか、エネルギッシュな妹サンデスネ」 「本当にごめんなさい……いい娘なんだけれど」 「それは何となく。さ、あまり妹サンを待たせてはいけまセン」 「……ありがとう」 深々と頭を下げて執務室を出て行った扶桑サン。

2014-12-26 01:53:54
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

扉がしっかりと閉まる音が止んでから、ワタシは大きく息を吐いた。 「大丈夫か? 顔色が悪いぞ」 「……まぁ、外傷はないと思うヨ」 長門に指摘され、自らの額に触れる。 じんわりと汗が滲んでいた。 山城サンはいい人なのだろうが、いい人なのだろうが。

2014-12-26 01:54:23
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

「比叡のよう、だな」 「……ウン」 ワタシ達金剛型戦艦四姉妹、比叡はワタシに続く次女だ。 戦闘面でも人格面でも優秀な妹なのだが。 「周りが見えなくなるところもそっくりだ。2番艦というのは皆ああなのだろうか」 「長門にも妹はいるでショー」 「いるさ。だが陸奥は、まぁ……普通だな」

2014-12-26 01:55:10
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

「普通、ネ。長門、貴女から見てワタシの姉妹ってどう見えマス?」 「仲睦まじいな」 「……そうデスカ」 再び大きく息を吐く。 その意味が分からないのか長門が唇を尖らせているが、その行動をとっている理由も分からないのだろう。 何も言ってはこなかった。

2014-12-26 02:03:31
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

「仲がいいんだろうとは思ってたけど、あそこまでとはね。びっくりしたよ」 からからと笑いながら、ワタシ達の間に伊勢が割って入った。 「「いたの?」」 「いたよ!?最初から!!」 もしかしたらワタシと長門の微妙な空気を察してくれたのかもしれない。 心の中でぐらいはお礼を言っておこう。

2014-12-26 02:04:35
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

さーてやりますヨ! 何だかんだで山城サンが出てきたヨ! 何で二日かけてそこまでしか進んでないんデスカ^^

2014-12-28 01:05:05
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

その後は特に問題は起こらなかった。 執務を終え、無事に明日の演習を迎えることが出来そうだ。 しかしワタシはというと、執務室が宵闇に溶け込んでもまだ、自室に戻ってはいなかった。 ただぼんやりと、提督の机を前に、提督の椅子の上に体育座り。

2014-12-28 01:06:00
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

灯りは点けない。 その理由は自分でもよく分からない。 心の中の暗い気持ちが、この闇に混ざって消えていくことをを期待しているのかもしれない。 机の上には提督のオイルライターと、くしゃくしゃになった煙草。 震える手で煙草を一本手に取り、ライターの火を近づける。 上手く点かない。

2014-12-28 01:06:35
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

口で咥えなければいけないのだっけ。 咥え、ちょっとだけ息を吸い、すぐに離すとそのまま灰皿の上に置いた。 ワタシは煙草を吸わないし、煙たいので好きではない。 だが、この匂いは提督のものだ。 ぎゅっと膝を抱く力が強くなる。

2014-12-28 01:06:48
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

(お姉さま) 「……っ」 襲われているのだ。 ゆらゆらと揺れる三つの影。 その見知ったシルエットは、紛れもなく。 (お姉さま) (お姉さま!) 「……フゥー、フゥー、フゥー」 顔を伏せ、視界が上がらない様に両手で抱く。 こんな幻、見たくない。

2014-12-28 01:07:31
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

……妹を思い出した。 心の奥底に小さく小さく圧縮して隠していた妹達への思いが、暗闇の中で一気に膨れ上がっている。 不安が、自己嫌悪が、ワタシが生み出した悪しき幻影が一つになり、怪物となってワタシの身体を這い回る。 だから、提督の面影を求めている。 まとわりつく何かから逃れる為に。

2014-12-28 01:09:04
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

ゴン、ゴン。 ノックの音が、ワタシをハッと現実に引き戻した。 返事の前に煙草の火をもみ消す。 幻は消えていた。 「こんばんわ……こ、金剛さん……? 山城ですけど……」 「……山城サン?」 ワタシは慌てて立ち上がり、電灯を灯した。

2014-12-28 01:09:28
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

部屋の様子が一斉に照らし出される。 眉の端を下げ、扉から首だけを出した山城サンが、きょろきょろと周囲を見渡す様子も。 目が合うと、彼女はばつが悪そうに小さく笑って見せた。 「どう、されたのデスカ? さ、どうぞ」 「ありがとうございます」 椅子を引っ張ってワタシの椅子の隣に並べた。

2014-12-28 01:10:22
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

「きっとここだろうって長門さんから聞きました……って、金剛さん、大丈夫ですか!? 顔色が……!」 ゆっくりと近づいてきていた山城サンが、顔をこわばらせ駆け寄ってきた。 「だ、大丈夫デス。お気になさらず」 指摘された顔を隠すように、両手で覆う。 じっとりとした汗がまとわりついた。

2014-12-28 01:11:14
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

慌ててハンカチで拭い、頬を両手でぺちぺちと叩く。 「Hi,ご心配かけて申し訳ありまセーン! こんな遅くにどうされたのデスカー?」 「金剛さんが気を遣ってくれたおかげで、今日は姉さまと二人で過ごすことが出来たので……そのお礼を言いに来たんです」

2014-12-28 01:11:51
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

「そんな、お礼を言って頂くようなことではありまセンヨ。本来ワタシがやるべきことを全て扶桑サンに投げてしまったのデスカラネ」 「そうだとしても、です。私が夢の様な時間を過ごせたことに変わりはありませんから。ありがとうございました」

2014-12-28 01:12:08
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

深々と頭を下げる山城さん。 やはり、こうしている間は人間性のしっかりとした女性にしか見えない。 顔を上げた彼女は穏やかに微笑んで見せた。 同性のワタシも思わず息を呑むほどだ。 「それでは、次は金剛さんがお話を聞かせて頂けませんか?」 「ワタシの?」

2014-12-28 01:12:42
ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

「はい。暗い部屋の中、一人で、顔は真っ青で……何か、あったのでしょう?」 「……山城サンに聞かせるような話では」 そう答えるのが精いっぱいで。 続くべき言葉は空気となり、口から零れ落ちた。 彼女の視線から逃れるように、視線を床へと移す。

2014-12-28 01:13:32
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