M-Shingo

あ阿々。 @rainbow_solara

② 『寝ないの？』 「んー？」 曖昧な返事。 缶をあおりながらテレビのリモコンに手を伸ばす。 視線を本に戻そうとすると、 「あれ？」 私の体に顔を寄せてくる。 『何？』 「何かええ匂いする」 首筋に顔を埋められてくすぐったい。 #エイトで妄想

あ阿々。 @rainbow_solara

③ 「何や？」 『あー、ヘアオイル変えたからかな』 「ヘアオイル？何やそれ？」 『トリートメントみたいな？ずっと使ってたよ』 「ふーん」 髪の毛を触りながら、ふんふん匂いを嗅いでくる。 『ちょっと。くすぐったいよ』 あと、本当は少し恥ずかしい。 #エイトで妄想

あ阿々。 @rainbow_solara

④ 身を捩って逃げようとするけど、いつの間にかしっかり抱きしめられていて動けない。 「ちゃんとお手入れしててんなー」 『何よー』 「いや、ヤスの方が女子力高いとか思ってた」 『あー、それは認める』 安君には適わないよ。 日常的に本当にいい匂いするもん。 #エイトで妄想

あ阿々。 @rainbow_solara

⑤ 「なあ」 『ん？』 「俺が長い方がええ言うたから？」 『は？何が？』 「綺麗にしよ思てくれてるんかなって」 …別に言われたからじゃない。 ちょっと気にはしてるけど…好きって言ってくれたわけだし、少しは…。 黙ってしまった私をギュッと抱き締めてくる。 #エイトで妄想

あ阿々。 @rainbow_solara

⑥ 「たまにめっちゃ可愛ええなあ」 たまにって、何よ…。 逃れようとするけど、キスで抵抗を封じられる。 「めっちゃ顔赤いやん」 覗き込んでくる笑顔。 「こういうの、嬉しいもんやねんなあ」 『…別に気付いて欲しかったわけじゃないもん』 思わず顔を逸らす。 #エイトで妄想

あ阿々。 @rainbow_solara

⑦ 嘘じゃない。 どちらかと言えば自己満足に近い。 好きって言ってくれたから、大事にしようって、それだけ。 もー、恥ずかしい…。 「ベッド行こ。もっと匂い嗅ぎたい」 手を取って立ち上がる。 #エイトで妄想

あ阿々。 @rainbow_solara

⑧ 本が途中とか、ビール臭いとか、私の文句は全部無視。 好きって言ってくれた髪の毛は、結局グチャグチャに乱される羽目に。 朝、私の体に残るのは夜の信五の匂い。 私もね、この匂いが大好き…だよ。 #エイトで妄想

あ阿々。 @rainbow_solara

① ひらひらとワンピースの長い裾を揺らしてテーブルにマグカップを置く。 『あ、あったかいのにしちゃったけど、よかった？氷入れる？』 「いや、ええよ。ありがとう」 湯気が揺れるコーヒー。 俺はブラック。 彼女は牛乳を少し。砂糖は入れない。 #エイトで妄想

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② 「秋やなあ」 『ねー』 「衣替えせななあ」 『急に寒くなったからねえ』 スカートの裾から出る足に触れてみる。 少し冷たい。 「スカート姿も見納めやなあ」 『んー？』 「夏の部屋着でしか着いへんやん」 『だねえ』 コーヒーを一口。 #エイトで妄想

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③ 「もっと着てもいいんやで？」 『ん？』 「スカート」 『あー、ねえ』 「嫌いなん？」 『そういうわけじゃないけど』 でも、多分他に着てるの見たことない。 「買ったろか？」 『信五が？選ぶの？』 「あかんか？」 『えー』 #エイトで妄想

あ阿々。 @rainbow_solara

④ 一緒に買いに行くとかあるやんか。 …いや、ないか？ 『いいじゃん。また来年』 「むぅ…」 『パンツ見たいならいくらでも見せたげる』 「そういうこととちゃう」 声を上げて笑う彼女。 コーヒーを啜る。 もう熱いのが美味い季節。 #エイトで妄想

あ阿々。 @rainbow_solara

⑤ また来年…か。 次の夏も一緒ってことやんな。 何気ない一言。 だけど、大切な未来の約束。 まるで夏の風物詩やな。 また暑くなるの待つか。 あ、でも今度本当に服買ったろかな。 笑われるかもしらんけど、な。#エイトで妄想

あ阿々。 @rainbow_solara

『あ』 「何？」 『金木犀』 鼻をくすぐる、秋の香り。 「ほんまやな」 手にした煙草をポケットにしまう。 『布団一枚出そうか』 「くっついてたら平気やけどな」 『そう言ってお腹壊したでしょ』 空いた手を絡めて、夜道を歩く。 ゆっくりと、過ぎる季節を惜しむように。 #エイトで妄想

あ阿々。 @rainbow_solara

① 窓の外に、懐かしい姿を見た。 一瞬フラッシュバックする日々。 『どうかした？』 あの時とは違う声に我に返る。 「…いや、何もない」 『ふうん…』 何となく、誤魔化してしまったけど。 『前の彼女？』 あっさり図星を突かれて、言葉に窮してしまう。 #エイトで妄想

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② 『綺麗になってた？』 「…あぁ」 『じゃあよかったね』 言葉の真意がわからんくて。 きっと変な顔をしていたんだろう。 小さく笑って話し出した。 『前付き合ってた人が今幸せそうなら、それでいいじゃない』 『私だって、元彼に綺麗になったなって思って欲しいもん』

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③ 手元のカップに視線を落とす。 『信五といて、幸せなんですって、言ってやりたい』 …なんやそれ。 えらいポジティブ。 んで、恥ずかしいこと言ってんで。 『俺じゃそうしてやれなかったって、気に病むタイプ？』 「…」 思わんわけじゃない。 でも…。

あ阿々。 @rainbow_solara

④ 「確かに。自分の知らんとこで勝手に可哀想って思われてんの、嫌やな」 あの頃の自分に酔って、感傷的になってたんか。 『なーんてね。偽善ぶってみた』 誤魔化すように笑って、ケーキを大きな口で頬張った。 モグモグ動く口元を見つめる。

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⑤ 「なあ、さっき幸せって言ったな」 『んん？』 小首を傾げて視線を反らす。 「幸せなん？」 『んん～？しゃへへなひ～』 さっき美味い言うとったやんけ。 コーヒーを一口。 幸せ、やな。 日常すぎて、忘れかけるけど。

あ阿々。 @rainbow_solara

⑥ さっき姿見かけるまで、思い出しもせえへんかった。 あんなに好きやったのに。 目の前のこいつに会ってから、毎日忙しくて。 あの日々は確かに俺の中にある。 でも、それは映画のように遠い日々。 あっちもそうだといい。 俺のことなんて思い出す暇もないほど、幸せだといい。

あ阿々。 @rainbow_solara

⑦ TVやなんやで見てまうやろうから、そうもいかへんかも知らんけど。 銀杏並木の下。 隣を歩いていた男。 そいつが俺よりいいヤツだったらいい。 偽善かもしれん。 それでも、今、俺は幸せやから。 どうか、あいつも。 それくらい祈るの、許してくれ。

あ阿々。 @rainbow_solara

① 夜中にふと目を覚ますと、一緒に寝たはずの彼女がいない。 また夜更かししてるんか？ 水でも飲もうとリビングへ行くと…いた。 電気もつけんとパソコンを覗き込んでる。 またあんなんして…目悪くすんぞ…。 #エイトで妄想

あ阿々。 @rainbow_solara

② 声をかけようとして、息を飲んだ。 イヤホンをして、険しい表情で画面を見つめている。 その目からは、涙が零れ落ちていた。 映画でも見てるんかと思ったけど、画面に映っているのは他愛もないゲーム。 とめどなく流れ落ちる涙を拭うこともしない。 #エイトで妄想

あ阿々。 @rainbow_solara

③ 何かあったんか？って聞こうとして、やめた。 気付かれんようにベッドに戻る。 不安があるなら、しんどいなら、何でも話してほしい。 彼女が俺の支えになっているように、俺にも頼って欲しい。 でも、多分あれは違う。 #エイトで妄想

あ阿々。 @rainbow_solara

④ 彼女が1人で悩んで、考えなあかんようなことの気がした。 あいつもそれをわかってて、それであんな風に泣いているんやろう。 あいつの涙を見るのは嫌や。 でも、なんか綺麗やった。 本当はちょっと見惚れてしまった。 #エイトで妄想

あ阿々。 @rainbow_solara

⑤ 物音がして、慌てて寝たふりをする。 静かに潜り込んでくる彼女。 しばらくして、静かな寝息が聞こえてきてホッとする。 あの涙の原因が俺じゃないっていう保証はない。 それでも、今ここで眠ってくれるから、それを信じて。 #エイトで妄想